第35話:真名探し隊と、紙神様の痕跡

「――真名探し隊を発足する!」


王都からの号令が広場に響き、各地の冒険者や学者たちが名乗りを上げる。

人とモンスターの絆を深めるため、遺跡を調べ、真名を記録する新たな組織だ。


「……いいことだとは思うが……。」

サリウスが腕を組み、眉をひそめる。


「……でも顔が曇ってるな、サリウス。」

俺が声をかけると、彼は小さくため息をついた。


「遺跡はただの石ではありません。過去の魂と記憶が宿る場所……荒らされることを懸念します。」


「……そうだな。」

ディルが頷く。


「でも管理地の調査許可って、簡単におりないんでしょ?」

ニールが肩をすくめる。


「ええ。王都が直接管理する遺跡は厳重です。むしろ一般の冒険者が勝手に入るほうが難しいでしょう。」

サリウスは少しだけ表情を緩めた。


「なら、俺たちは安心だな。」

俺はアルネアを撫で、笑った。


「キュー♪(さすがカノン!)」



---


そんな中、王都から一人の青年が訪ねてきた。


白い外套を羽織り、柔らかい笑みを浮かべた貴族風の青年。

名前はリステル。幼い頃からモンスターに興味を持ち、今は真名探し隊の資金提供をしているという。


「ぜひ、あなた方に依頼したい遺跡があります。」

彼は地図を広げた。


「……この地点は?」

サリウスが眉を寄せる。


「そこには――紙の神様が降臨したと伝わる痕跡が残っているのです。」


「紙の神様?」

ディルが首をかしげる。


「昔、人々に知恵を授けたという神です。その場には星片が山のように積まれていたと記録されています。」


「……星片の山……!」

アルネアが羽耳を震わせる。


「キュー!(行こう、カノン!)」


「もちろんだ。行くぞ、みんな!」


「ヴォォォ!」

「ピィィ!」

「グゥゥ!」



---


数日後、目的地の遺跡に到着した俺たちの目の前に広がったのは――


白い粉雪のように降り積もる、無数の星片。


「……すごい……これ全部……星片……?」

ニールが呟く。


「こんなにたくさん……神様が降臨した証拠かもしれませんね。」

サリウスが慎重に一つを拾い、光にかざす。


星片は淡い青い光を放ち、風にそよぐたびに瞬きを繰り返す。


「……見て、こっち……!」

ディルが指差した方向には、星片が流れるように光を繋ぎ、まるで道標のようになっていた。


「……導いてくれてる……?」

俺は息をのむ。


「キュー!(カノン、行こう!)」


アルネアが俺の肩で小さく跳ねる。


「よし、みんな……神様を探すぞ!」


「ヴォォ!」

「ピィィ!」

「グゥゥ!」


サリウスが杖を握りしめ、リステルが静かに頷く。


「……この光の先に、きっと……。」


星片の光が、深い森の奥へと続いている。

俺たちは胸を高鳴らせながら、その光の道を踏みしめて進んでいった。


真名探しと神様探しの旅は、さらに深い謎へ――。

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