大熊猫の手を借りたい

さわみずのあん

第1把

 僕の右手を、

 初めて握った女性だった。

 彼女は走り回っていたのか、

 赤くなった顔に、

 肩で息をしている。

 強く握った両手から、

 彼女の心臓の鼓動が伝わるようで、

 あ、た、とっても、大き、手をし、るわ。

 頼、ます、どうか、たしを、助け、、。

 息も言葉も、切れ切れに、

 僕に助けを求めている。

 握られていない手をじっと見つめる。

 この手で、彼女を救う、

 その決意をゆっくりと握りしめる。

 僕でよければ。

 本、に、あり、が、とう。

 彼女に手を引かれ、

 二人で駆け出した。

 商店街の特賞、

 現金500円つかみどり。

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大熊猫の手を借りたい さわみずのあん @sawamizunoann

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