ぶちぎれ事変
そのぶちぎれ事変は、爽やかな日の道場で起きた。
ノアが来てからというもの、どこか空気は圧縮されており、緊張感を漂うのが常になっていた。
口には出さないものの、ノアに対しての不満が日に日に積載されていた日。
事件は起きた。
基本的にお前なんでいつも威張っているの? なんでいつも不機嫌なの? がデフォルトのノアだが、この日は更に不機嫌が二乗されており、道場生たちに対してのあたりがきつかった。
今に始まったことでもないし、うるせえなこいつで終わらすものだった。
しかしだ。
その中の一人。
アキラが爆発した。
元々アキラとノアは水と油状態であり、そして更に悪いことに関係性はガソリンと火炎放射器並みに危険性を伴うものだった。
アキラは元々不良気質であり、すぐに顔面にこれはこれは豊かすぎる感情が出てしまうのだ。
だからムカつくノアが来てからというものの、すぐさまに険悪になった。
ノアもノアでアキラに当たったり、怒鳴ったりしていた。
そして……。
アキラの怒りが爆発した。
やたらその日はなんだか切れているノアに対して、「うるせえんだよ‼」と言ったことが発端になり、大喧嘩へと展開。
二人とも武闘をやっているので、殴る蹴るは勿論のこと。
それは見事に腰の入った打撃が乱れうち、道場内は一気に混乱へと陥った。
そして、血気盛んの男たちは止めるどころか、たきつける始末になり道場内は流血沙汰へと簡単にチェンジしたのだ。
大喧嘩+格闘技+流血沙汰。
のどかな村の片隅で、刺激に飢えていた若者たちは面白いほどに興奮していた。
事態を更に悪化させるもので、そこに止めるべき大人がいないことも加味された。
確かに今までは格闘技に対するものに考えの相違で喧嘩はあった。
しかし、そこには冷静な第三者である師範代がいたし、ルールを伴った喧嘩で決着がついたのだ。
だが、今回に至ってはルール無用の喧嘩だ。
自由というものはある程度の制約の上に成り立っている。
そういったことがあるから、規律が働き理性があったので、まだ平和状態が保たれていた。
ノアとアキラによる喧嘩は、ヒートアップし「相手をはっ倒す」になってしまい、最早闘争本能の赴くままになっていった。
「てめえええ‼」
ノアのストレートパンチが入りアキラが吹っ飛んだ。
そう。
一応ノアは気に食わないが実力者ではあるのだ。
実力差によってアキラは敗北した。
「てめえら‼」
「うるせえんだよ‼ いちいちいちいちよおおおおおおおおお‼」
「なんだとおおおおお‼」
「二人ともおおおおお‼」
そこに遅れてやってきた青年のネーバが止めた。
彼は村役場に勤める勤勉な青年で、こうして道場生たちのまとめ役や規律的な役割をしていた。
なんかうるさいな、ん? これ結構大騒動じゃないか? と慌てていくと、殴り合いの大喧嘩を目撃。
ネーバの制止により、道場生たちは一瞬で静かになったが、大喧嘩当事者たちには聞こえなかった。
「二人とも‼」
「うるせえんだよ‼」
「なんだてめええ‼」
これやばくね?
冷静になった道場生たちに駆け巡る緊張。
「どうしたんだよ二人とも‼」
ネーバによって幾分か落ち着いたノアとアキラだったが、火種は燃え盛っている。
「こいつが‼」
「この野郎が‼」
会話が成り立たない。
ネーバの介入。
そして道場生たちによる必死の説得。
やっと二人の大喧嘩は沈静化したものの、二次的に道場生たちの不満を爆発させる結果になった。
「大体よ‼ ノアがいつも威張っているから悪いんだよ‼」
「なんだと⁉」
「うるせえんだよ‼ そもそも、おめえは力があるかもだけども、中身が大したことないんだよ‼」
「いつもいつもごちゃごちゃやかましい‼」
「こんなことならシンデレラのほうが選ばれたらよかったじゃねえか‼」
「……‼」
ノアの顔が引きつる。
「あーーーー‼ 無理だ無理‼ 俺はこの道場やめる‼ お前が一人でやってろ‼」
アキラが捨て台詞を吐き、そのまま出口に行く。
「てめえがやってろよ」
他の者たちも睨みつけると、道場を出ていった。
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