第15話 モルガニゼーション
ここは息子モルガンの事務所。
息子モルガン「すべて順調だよ」
秘書「鉄道会社をひとつ、傘下におさめましたね」
息子モルガン「世界征服の第一歩だ」
秘書「第二歩、第三歩は、いつ踏み出すんです?」
息子モルガン「じつは、すでに踏み出している」
秘書「え? もう?」
息子モルガン「他の鉄道会社も、いくつか傘下におさめたんだ」
秘書「いつの間に! 仕事がはやいですね~」
息子モルガン「ふふふ。僕は偉大な男だからね」
秘書「でも、こんな短期間に、どうやったんです?」
息子モルガン「強力な武器を使ったんだよ」
秘書「武器?」
息子モルガン「ビジネスにおける強力な武器」
秘書「なんですか?」
息子モルガン「信用だよ」
秘書「ぜひ、詳しく聞かせてください」
息子モルガン「つまり、こういうことだ」
息子モルガンが語ったのは、以下のような鉄道会社の内情だった。
鉄道会社1「聞いた?」
鉄道会社2「なにを?」
鉄道会社1「ニューヨークセントラル鉄道の話」
鉄道会社2「いや、知らない」
鉄道会社1「州の調査官に目をつけられてたんだけど、見逃してもらったんだって」
鉄道会社2「なんで?」
鉄道会社1「わかんない。でも、同じ時期にモルガンが同鉄道の取締役になってる」
鉄道会社2「それって、もしかして、モルガンが取締役になったから州が手を引いたの?」
鉄道会社1「たぶん」
鉄道会社2「モルガンって、力があるんだね」
鉄道会社1「うん」
鉄道会社2「うちの会社もモルガンに任せようかな」
鉄道会社1「おれもそうするよ」
息子モルガン「――というわけで。たくさんの鉄道会社が僕の傘下に入ったのさ。これがそのリストだ」
秘書「こんなにたくさんの鉄道会社が!」
息子モルガン「すごいだろ?」
秘書「でも……この会社って全部、破産してますよね」
息子モルガン Σ( ̄□ ̄; はっ?
秘書「ぜんぶ破産管財人の管理下にある会社です」
息子モルガン「ぜんぶ!?」
秘書「はい」
息子モルガン「……」
秘書「知らなかったんですか?」
息子モルガン「そ、そんなの、もちろん知ってたよ」
秘書「まあとにかく、頑張って傘下の鉄道を再建しましょう」
息子モルガン「そ、そうだね」
こうしてモルガンは、破産した鉄道を次々と再建し、影響力を高めていった。
こうした再編をモルガニゼーション(モルガンの再編成)という。
鉄道王J・P・モルガンの誕生である。
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