第13話 鉄道と石油

息子モルガンは、バンダビルト一族の財産をそっくりいただくことにした。





秘書「財産をそっくりいただくって、どうするんですか?」


息子モルガン「こういうときの鉄則を君に教えてあげよう」


秘書「お願いします」


息子モルガン「ずばり、弱みに付け込むんだよ」


秘書「おぉ……」


息子モルガン「さっそくバンダビルト家の内情を調査してくれ」


秘書「わかりました」





バンダビルト家はニューヨークセントラル鉄道を創業した名家であり、アメリカ有数の富豪である。





バンダビルト初代「うちってさ、金持ちだよね」


バンダビルト2世「そうですね」


バンダビルト初代「やっぱ鉄道経営は儲かるね~」


バンダビルト2世「コツは何ですか?」


バンダビルト初代「お得意さんを優遇することだよ」


バンダビルト2世「お得意さんって?」


バンダビルト初代「石油産業」


バンダビルト2世「ふむふむ」


バンダビルト初代「今の時代、元気がいいのは鉄道と石油だからね」


バンダビルト2世「なるほど」


バンダビルト初代「石油産業とは仲良くしておいたほうがいい」


バンダビルト2世「でも優遇って、具体的には?」


バンダビルト初代「運賃を安くしてあげるの」


バンダビルト2世「え、でもそんなことしたら、石油産業以外の人たちからクレームが入りませんか?」


バンダビルト初代「内緒にしておけば大丈夫だよ」


バンダビルト2世「悪いですね~」


バンダビルト初代「悪いですよ~」


バンダビルト2世「ばれないように気をつけましょう」


バンダビルト初代「うぅっ。苦しい!」


バンダビルト2世「父さん、突然どうしました?」


バンダビルト初代「寿命だ。死ぬぅ」


バンダビルト2世「えーっ!?」


バンダビルト初代「息子よ、会社の株は全部おまえにやる。あとは任せた」


バンダビルト2世「は、はい」





1877年。


鉄道事業の創業者バンダビルト初代(コーニーリアス・バンダビルト)は死去した。





1879年。


調査官「こんにちは」


バンダビルト2世「はい、こんにちは」


調査官「ニューヨーク州議会の調査官です」


バンダビルト2世「あ、どうも、はじめまして」


調査官「あなた、ニューヨークセントラル鉄道の大株主ですよね?」


バンダビルト2世「そうですけど」


調査官「てことは、かなりの資産家ですね」


バンダビルト2世「まあね」


調査官「でも、ズルしてるでしょ?」


バンダビルト2世「えっ……」


調査官「石油産業の人ばっかり不正に優遇してるよね?」


バンダビルト2世「いや、その、それは、つまり……」


調査官「ダメだよ。あんたみたいな富豪が不正をするなら、もっと巧妙にやらないと」


バンダビルト2世「すいません」


調査官「罰金、払ってもらうよ」


バンダビルト2世「罰金って、高いんですか?」


調査官「めちゃくちゃ高いよ。資産家からは搾れるだけ搾り取るのが、州のやり方だからね」


バンダビルト2世「そ、そんな~」





ここは息子モルガンの事務所。


秘書「……以上のような内情です」


息子モルガン「なるほど。では、作戦開始といこう」


息子モルガンは動き始めた。

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