第9話 フランスに投資

1870年。


フランスのパリを訪れた息子モルガンが町を歩いていると……




息子モルガン「パリはいいところだなぁ~」


ナポレオン3世「ちょっと、ねぇ君」


息子モルガン「あなたは?」


ナポレオン3世「おれはナポレオンだよ。フランスの皇帝」


息子モルガン「ナポレオンは1821年にセントヘレナで亡くなりました」


ナポレオン3世「おれは、その親戚なんだ。3世だよ」


息子モルガン「で、御用は?」


ナポレオン3世「君、金融会社の人だよね? お金、貸して」


息子モルガン「お金? まずは事情を話してもらえますか?」


ナポレオン3世「今、フランスはプロイセン王国と戦争中なんだけど、軍資金が足りないんだよね。だから貸して」


息子モルガン「それなら、なにもうちみたいな小さな会社じゃなく、巨大財閥から借りればいいじゃないですか?」


ナポレオン3世「例えば?」


息子モルガン「ロスチャイルド財閥とか」


ナポレオン3世「ダメ。断わられた」


息子モルガン「では、それと肩を並べる、ベアリング財閥」


ナポレオン3世「ベアリング財閥はプロイセンの味方だもん」


息子モルガン「そうですか」


ナポレオン3世「ね、お願いだから貸してよ。戦争に勝ったら利子をつけて返すから」


息子モルガン「もし負けたら?」


ナポレオン3世「気持ちで返す」


息子モルガン「それは困ります」


ナポレオン3世「じゃあ、絶対勝つから!」


息子モルガン「ふうむ……。これは我が社にとってもチャンスかも知れませんね。わかりました。融資します」


ナポレオン3世「ありがとう!」





J・S・モルガン商会はフランスへの融資を決め、フランス発行の公債を大量に買い込んだ。(公債を買うと、その国に投資したことになる)





息子モルガン「父さん、ただいま~」


J・S「おお、息子よ。パリはどうだった?」


息子モルガン「ナポレオン3世にお金を貸してきました」


J・S「ナポレオン3世に?」


息子モルガン「はい」


J・S「フランスが戦争に負けたら、スッカラカンだぞ」


息子モルガン「逆に、勝てば大儲けです」





しかし。





J・S「息子よ。ニュースを見てみろ」


息子モルガン「なんですか?」


J・S「フランスが負けそうだ」


息子モルガン「えぇっ」


J・S「ナポレオン3世がセダンの戦いで捕虜になった…」(1870年)


息子モルガン「そんな!!」


J・S「このままだとスッカラカンになってしまうぞ」





だが、そうはならなかった。


逆にこれはチャンスとなった。


モルガン一族はこの戦争を契機に、ロスチャイルド、ベアリングと並ぶ巨大財閥の仲間入りを果たすことになる。

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