第7話 ナポレオン3世

ピーボディ商会が投資をした大西洋海底電信ケーブルは断線した。




ピーボディ「よーし、こうなったら」


J・S「なにか秘策があるんですか?」


ピーボディ「おれ、引退する」


J・S「え?」


ピーボディ「もともと、君が一人前に育ったら引退するつもりだったし」


J・S「でも、なにもこのタイミングで……」


ピーボディ「J・S・モルガンくん。あとは君にすべて任せた」


J・S「そんな」


ピーボディ「じゃあね、バイバ~イ」





1864年。


ジョージ・ピーボディは引退した。


これによりピーボディ商会は『J・S・モルガン商会』と名を改めた。


こうして会社の再建はJ・S・モルガンの手にゆだねられた。





場所は変わって、ここはフランス。


ナポレオン3世「ねぇ、市民さん、おれの名前、知ってる?」


パリ市民「いえ」


ナポレオン3世「この国の皇帝なんですけど」


パリ市民「誰でしたっけ?」


ナポレオン3世「じゃあヒントあげる。最初の4文字はナポレオ……」


パリ市民「あ、わかった。ナポレオン」


ナポレオン3世「正解!」


パリ市民「へ~! あなたがあの有名なナポレオンですか!」


ナポレオン3世「あ、いや、正確にいうと、おれはナポレオン3世なんだけどね」


パリ市民「3世?」


ナポレオン3世「うん。あの有名なナポレオンの親戚」


パリ市民「なんだ、有名なほうのナポレオンじゃないんですね」


ナポレオン3世「そんなにガッカリしないでよ。おれだってスゴイ人なんだから」


パリ市民「そうなんですか?」


ナポレオン3世「うん。だってそもそも、フランス皇帝だよ」


パリ市民「まあ、それはたしかにスゴイですね」


ナポレオン3世「フランスはヨーロッパNo.1の強国だしさ」


パリ市民「いや、それはどうかな」


ナポレオン3世「え?」


パリ市民「最近、ドイツ系も頑張ってますよ」


ナポレオン3世「ドイツ系って?」


パリ市民「知りません? 20以上の国が集まって北ドイツ連邦っていう国を作ったんですよ」


ナポレオン3世「北ドイツ連邦!?」


パリ市民「はい」


ナポレオン3世「それって、強国なの?」


パリ市民「強国です。これからもっともっと強国になるでしょうね」


ナポレオン3世「じゃあ、フランスの立場は?」


パリ市民「すぐに追い抜かれるんじゃないですか?」


ナポレオン3世「まずいなぁ。そいつら、今のうちに潰しておかないと」


パリ市民「でも、20以上の国が集まってますから、潰すにしても大変ですよ」


ナポレオン3世「その中心的な国はどこなの?」


パリ市民「プロイセン王国です」


ナポレオン3世「じゃ、プロイセン王国をぶっつぶすよ」


パリ市民「その国には、ビスマルクっていう怖い政治家がいるから、気を付けてくださいね」


ナポレオン3世「かなり怖いの?」


パリ市民「はい、それはもう」


ナポレオン3世「どのくらい怖いの?」


パリ市民「1862年9月のエピソードなんですけど……」


ナポレオン3世「うん」


パリ市民「ビスマルクが議会で演説したときに『多数決なんてまどろっこしい!これからは暴力だ!』って爆弾発言したんですよ」


ナポレオン3世「え。議会でそれ言っちゃったの?」


パリ市民「はい。『鉄(武力)と血(兵士)で問題を解決するぞ!』って言ってました」


ナポレオン3世「怖ぇ……」


パリ市民「それ以来、彼は『鉄血宰相』って呼ばれてます」


ナポレオン3世「強そうだね」


パリ市民「でも、ぶっつぶすんですよね?」


ナポレオン3世「う、うん。がんばる」





1870年7月。


フランスとプロイセン王国の間で戦争が勃発した。(普仏戦争)


この戦争が、J・S・モルガン商会を救う。

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