第15話 不器用な人たちの不器用な想い
「しっかし毎度使う量が半端じゃねーな」
ダイゴは腕に抱えた箱の重みを感じながら、隣を見る。
「仕方ないじゃん。みんなよく食べるから」
そう言って歩くブリュンヒルデは、両腕で調味料の瓶をぎゅうぎゅうに抱えていた。
塩、胡椒、油に砂糖――どれも厨房には欠かせない、地味だが重量のある連中だ。
「いやいや、他人事みたいに言ってるけど、その“みんな”の中にお前も入ってるからな?」
「だってー唐揚げマジうまくてさー。もうさ、作るの唐揚げだけでよくね?」
「それはそれできっと暴動が起きる」
くだらないやりとりに笑いが混じる。
のんびりした空気が、調味料の瓶と一緒に廊下を転がっていた。
――ダンッ!
突然、石の床を蹴るような音が響いた。
咄嗟に顔を上げたダイゴの視界に、ブロンドの髪が飛び込んでくる。
廊下の奥から、一陣の風のようにイングリッドが駆けてきた。
「道を開けて!」
声を聞いた瞬間、ダイゴの背筋が冷えた。
普段はあれほど冷静で隙のない彼女が、今は顔色を変え、目の奥が焦りに染まっている。彼女は一瞬も迷わず、ダイゴとブリュンヒルデの間をすり抜け、まるで何も見えていないような勢いで走り抜けた。
「えっ、何、何事? 厨房爆発した?」
ブリュンヒルデの声が背後で跳ねる。
ダイゴは返事もせず、荷物を脇に置いた。冗談を返す余裕はなかった。
イングリッドのあの顔は、今まで一度も見たことがない。
すぐに後を追って駆け出す。 ブリュンヒルデも瓶を抱えたまま、音を立ててついてきた。
扉が開いた先は、訓練場だった。
ひんやりとした空気。石の床。
漂う鉄と血のにおいに、ダイゴは一瞬足を止めた。
「ヘルギ君っ!」
イングリッドの声が裂ける。
彼女はすでに青年のもとへ駆け寄っていた。
仰向けに倒れたヘルギ。顔は青白く、まぶたは閉じたまま。 その下に、赤黒く滲んだ血の染みが広がっていた。
「うわ、マジかよ……」
気づけば、足が勝手に彼の方へ向かっていた。
以前、ブリュンヒルデが言っていた。「ここじゃ死んでも蘇る」と。
確かに、倒れるヘルギに致命傷らしい外傷は見当たらない。
――じゃあ、なぜ。 なぜ、イングリッドはあんな顔で駆け寄った?
なぜ、あれほど切迫した声を出した? 肉体は無事でも、それだけじゃ済まない何かがあるとでもいうように。
そして、視界の端。
石畳の中央に、ひとり突っ立っていたのは――ラースだった。
大きな背中。握られたままの拳。血が垂れている。
誰のものか、一瞬では分からなかった。 ただ、彼は一歩も動かず、拳を解こうともしなかった。
「……やりすぎよ、ラース!」
その声は鋭く、氷のようだった。
感情を抑え込んでいる分だけ、余計に刺さる冷たさ。
「そんなもんツバつけときゃ治るだろ」
舌打ちともに、ぶっきらぼうな声が返ってくる。
それは言い訳というより、ただの逃げ口上だった。
殴った理由も、後悔も、全部伏せたままの、言葉にならないごまかし。
ダイゴは黙ってそれを見ていた。
何かがおかしい。 ヘルギが倒れた理由も、ラースのその態度も――すべてが“ただの訓練”とは思えなかった。
「ありゃー。ハデにやっちゃったねー」
ブリュンヒルデが倒れこむヘルギの顔を覗き込む。
イングリッドは、そっとヘルギの胸に手を当てた。
しばらく目を閉じたまま、呼吸と鼓動を確かめるように静かに触れている。 その動作には焦りも動揺もなかった。ただ、確かめて、受け止めて、診る者の手だった。
「ヘルギはどうしたんだ?」
ブリュンヒルデがひょいと顔を覗かせる。
「ずっと起きないらしいの」
「……でも傷は治るんだろ?」
ダイゴの言葉にイングリッドはもう一度、ヘルギの顔を見た。
まぶたの閉じた顔。血の気を失った頬。
「傷は治っても心までは治らない」
イングリッドの声が低く落ちた。
「ショックが大きすぎて、まだ帰ってこられないのよ、自分に」
回復の早いこの世界で、肉体の傷は時間の問題だ。
だが意識が戻らない――という事実は、単なる外傷では説明がつかない。
「……じゃあこれって、“気絶”っていうより」
ダイゴが口にすると、イングリッドは小さく頷いた。
「ええ。戦って負けたというより、“折れた”のね、きっと」
「けっ! 情けねぇな!」
ラースの低い声が飛んだ。
「たかだか訓練で心がくたばるなんて、戦士失格だ」
ダイゴはその声を横耳に聞きながら、ちらりとラースを見る。
あいかわらず拳を握ったまま動かない。視線も、ヘルギには向けていない。 どこか別の場所を見ているような――あるいは、何も見たくないような。
「あなた、気づいてたんでしょう。無理してたって」
イングリッドが目を伏せずに言った。
「それでも止めなかった。違う?」
ラースの太い眉がわずかに動いた。
だが、返ってきたのはぶっきらぼうな一言だった。
「俺は戦士としての厳しさを教えた。それだけだ」
それだけだ――
その言葉に、小さな引っかかりが残った。ならなぜ、ラースはヘルギを見ようとしない? まるで、自分のしたことすら見たくないみたいに。
本当に“教えた”だけなら、あんな態度を取り続ける必要があるのか――
まるで、自分の中の何かを、押し殺すように。あるいは、忘れたくても忘れられない“何か”を、思い出してしまったみたいに。
その拳は、ヘルギを打ったものだけど――
打ちたかった相手は、本当にヘルギだったんだろうか。
そこまで考えて、目を伏せた。
聞ける空気じゃない。少なくとも、今はまだ。
「ブリュン、こっち持って」
イングリッドの声は冷静だった。けれど、そこに含まれた切迫感は隠せない。
彼女はヘルギの頭をそっと支えながら、手際よく指示を出す。
「俺も手伝うよ」
ダイゴは即座に動いた。イングリッドと並んでヘルギの両脇に手を添える。
ぎこちない足取りで廊下を歩きながら、ダイゴは肩越しに訓練場の扉を一度だけ振り返った。
ラースは、そこに立ち尽くしていた。
誰の声にも応じず、誰にも背を向けず。
拳はほどかれていたが、指先がわずかに震えているようにも見えた。
そして――どこか、孤独だった。
◇◇◇
「ありがとう。二人とも準備があるでしょ? 後は私だけでいいわ」
イングリッドはそう言って、小さく微笑んだ。
その表情に、ダイゴはそれ以上何も言わず、ブリュンヒルデとともに医務室を後にした。
扉が閉まり、室内に静けさが戻る。
イングリッドは椅子に腰を下ろし、ベッドに横たわるヘルギを見つめていた。
彼はまだ目を閉じたまま、静かに息をしている。
夕暮れの光がカーテン越しに淡く差し込み、床に落ちるその光はどこか冷たく、寂しげだった。
やがて、かすかな呻き声とともに、ヘルギのまぶたが震えた。
「……うぅ」
視線がゆっくりとさまよい、焦点が合う。
彼はゆっくりと天井を見上げ、それから横を向いて――イングリッドの顔を見つけた。 しかし、すぐに視線を逸らす。
どこか悔しげで、気まずそうに見えた。
「……ごめんなさい……その、迷惑かけてしまって」
消え入りそうな声が沈黙を破った。
イングリッドは答えず、ただじっと彼を見つめていた。
「あなたが謝ることなんて、何もないのよ。悪いのはやり過ぎたラース」
やがて返ってきたのは、淡く、それでいて凛とした声だった。
優しさと、それ以上を踏み込ませない静けさが、言葉の奥に滲んでいた。
「違うんです。悪いのは俺なんです……どうかラースさんを、責めないでください」
ヘルギはベッドに横たわったまま、目を伏せ、顔をそむけた。
しばらく言葉が出ず、イングリッドのまつげがわずかに動いた。
「俺のほうから頼んだんです。あの人に“強くなりたい”って言って……お願いしたのは、俺です。わがままに本気でぶつかってくれて……怒鳴られても、倒れても、それでも――」
イングリッドは黙って見つめた。
彼の真剣な瞳に、何か静かに揺れるものをわずかに感じる。
「あなたがそこまで強さにこだわる理由って、何?」
その問いかけは、責めるでも揶揄うでもなく、ただ真っ直ぐに、切実に本当のことを知りたいという声だった。
ヘルギは少しためらい、視線を落とした。 そして、絞り出すように言葉を紡ぐ。
「……昔、戦争で……大事な人を守れませんでした」
ヘルギの声がわずかにかすれていた。
「弱かったんです。無力で。――気づいたときには、遅くて……」
部屋に沈黙が満ち、夕暮れの光が床に伸びて、二人の影を静かに染めていた。
「だから、もう誰も失いたくないんです。二度と、後悔したくない。そのためにはもっと強くならないと。そう思ったんです」
彼はまっすぐに天井を見つめ、震えるような声を漏らした。
室内に静寂が訪れ、イングリッドはゆっくりと眉をひそめ、目を細める。 その瞳の奥に、一瞬だけ深い痛みと迷いが映った。
「そのことはラースも知ってるの?」
「ラースさんには言ってません。言ったのはただ強くなりたい……それだけです」
「そう……」
視線がわずかに揺れた。
ヘルギはその気配に気づいたのか、顔を伏せ、言葉を紡ぐのに躊躇しているようだった。
「……あの、その……」
声が震え、息が詰まる。
彼は大きく息を吸い直し、目を閉じてからゆっくりと開けた。
「俺……イングリッドさんのことが、好きなんです。だから……もっと強くなって守りたいんです!」
その一言は必死の決意のように、部屋の空気を切り裂いた。
イングリッドは静かに息を飲み、目を伏せたままゆっくりと顔を上げる。
そして、視線を動かさず淡く、それでいて凛とした声で告げた。
「……知ってたわ」
その声はまるで天気の話をするかのように淡々としていたが、確かに優しさが滲んでいた。
「え……?」
ヘルギが目を見開いた。
「だって、あなたってわかりやすいんだもん」
イングリッドが小さく肩をすくめ、口の端をわずかに上げた。
どこかからかうような調子で続ける。
「視線とか、声のトーンとか……もう全部、モロバレよ?」
ヘルギは耳まで真っ赤になり、布団を握りしめた手がわずかに震えた。
「でもね。私に、その想いを受け取れる資格は……ないの」
「し、資格なんてそんな――」
ヘルギはベットから跳ねるように身を起こす。
イングリッドはそれを制するように、首をゆっくりと振った。
ブロンドの髪がゆっくりと揺れる。
彼の言葉はまっすぐで誠実で――だからこそ、心の奥に触れてしまう。
かつて自分もそう思ったことがあるから。誰かを守りたくて、強くなりたくて。 その「想いの純粋さ」がどれほど残酷な結末を呼ぶかを、彼女は痛いほど知っていた。
あの戦争の夜。
凍てつく風の中で、呼びかけても返事のなかった名前。 腕の中で血を流し、静かに冷えていった命。 どれだけ祈っても、もう一度笑ってくれることはなかった。
だからこそ、もう繰り返したくない。 誰かの想いを、もう背負いたくない。
それがどれほど尊くて、優しくて、救われるものだとしても。
けれど――
(……どうして、あなたはそんな目をするの)
その瞳はあまりに真っ直ぐで。
まるで昔の自分に向けられているようで、胸が痛んだ。
「ほら、せっかく治ったんだから――」
少しだけ調子を戻した声だった。 いつものイングリッド。何もなかったかのように優しく穏やかに。 けれど、その瞳の奥にはふっと影が落ちていた。
「あなたは……もっとまっすぐな誰かと、笑っていて。私じゃなくて、ね」
立ち上がった彼女の背中はどこか遠く、何もなかったように見えてもその動き一つ一つに名残惜しさがまとわりついていた。
窓の外はすっかり暮れている。
カーテン越しの夕闇に、彼女の影が細く長く静かに伸びていく。
扉の前で、彼女は一度足を止めた。
振り返らずに、そっとドアノブに手をかける。きぃ、と小さな音を立てて扉が開き、そして静かに閉じられた。
廊下に出たイングリッドは壁に背を預け、数秒の沈黙を経てまぶたを閉じる。
その顔には微かに震える息があった。
そして、誰にともなく小さくつぶやいた。
「……ありがとう」
その声は優しく、そして哀しく。
それがヘルギに向けられたものか、過去に向けたものか――
それを知る者は彼女だけだった。
◇◇◇
宴もひと段落ついた頃、ダイゴは蜜酒の瓶を手渡されてホールに放り出された。 「ちょっとは休憩しなさい」と言ったイングリッドの声は、いつもより二割増しくらいで優しかった気がする。 何が理由かはわからないが、ありがたくいただいておくとしよう。
目当ての席へ向かおうとして、ふと足が止まった。
隅の方で、ヘルギがひとり俯いているのが目に入ったからだ。
普段なら向かいにはラースがいる。でかい身体でドンと構えて、無言で杯を傾けてる――それがいつもの“セット”だった。
でも今日は違う。空いた椅子がひとつ、ぽつんと取り残されている。
ヘルギはその椅子を、ずっと見つめていた。
軽装に着替えた肩が、やけに細く見えた。 乱れた黒髪、指先でテーブルの縁をなぞりながら、何かを待っているようで――何かを、もう諦めているようでもある。 場の喧騒から切り取られた一枚の絵みたいに、そこだけ時間が止まっていた。
ダイゴは静かに歩み寄った。
その足取りには、無意識のうちに“気を遣っている”色がにじみ出ていた。
「もう、大丈夫なのか?」
つとめて明るく声をかけると、ヘルギの肩がピクリと跳ねた。
「……あ、ダイゴさん。今日は……すみませんでした……」
そこまで言って、黙る。 思ったより深刻そうだ。
心が折れる音は聞こえない。でも彼の沈黙は、やけに騒がしかった。
「……すみません、今日は失礼します」
「え、おいっ――」
ヘルギはいきなり立ち上がると、背を向けた。 まるで“ここから先は立ち入り禁止”とでも掲げるような、拒絶の空気をまとって。
その背中を、ダイゴはしばらく黙って見送った。
いつもの“セット”の片割れがぽっかり消えただけで、ホールの灯りがなんとなく遠く感じられた。
◇◇◇
ダイゴはひとり蜜酒を飲んでいた。
少し離れたところにひとりジョッキを傾けるラースの姿。いつもより無口で、いつも通り不機嫌。……のように見える。
そこにやって来たのが、戦士ハンスだった。目つきが悪い上に態度も悪い。そんな筋金入りの皮肉屋としてヴァルキュリアたちが噂していた。
「よォ、伝説の勇者さま」
ハンスはわざとらしく声を張りながら、ラースの隣に腰を下ろした。
その声の調子は、針じゃなくて、錆びた釘。
妙に毒のあるような調子だった。
「今日の稽古、見応えあったぜ。あの若造、目が完全に死んでたなぁ」
そう言って喉の奥で笑う。
「あれはもう、“教育”ってより半分“処刑”じゃねぇか」
ラースの眉がわずかに動いた。だが何も言わない。
「……ま、懐かしくなったよ。昔を思い出した」
ハンスはジョッキを回しながら、独り言のように続ける。
「ミズガルズの東縁――あんたが斧一本で、うちの小隊を半壊させた時のこと」
「……」
「あの時の部下、ひとりだけ生き残ったんだぜ。顔、ぐちゃぐちゃだったけどな。 まあ俺も似たようなもんか。こっちは顔より根性が潰れたが」
ラースの拳がジョッキを握ったまま、わずかに震えた。
「で、今度はなんだ? 力任せにガキを痛ぶってんのか?」
ハンスの声は、悪意を薄める気ゼロだった。
「英雄ってのは強いだけでいいんだろ? “育てる”なんて柄じゃないわな。 それも昔から、変わってねぇ」
ラースは杯を置いた。表情は動かない。
「だいたい、厳しくしてたお前の息子だって――」
ドンッ!!
椅子が吹き飛んだ。
いや、ハンスの細い体が、吹き飛んだ。
横殴りに壁へ叩きつけられ、蜜酒を盛大にぶちまけてる。
ラースの拳は、振り切ったまま止まっていた。
「その口を……二度と開くな」
その声は、地を這うように低かった。
ただの怒りではなく、どこか痛みに近いものを押し殺すような声。
ハンスは壁にもたれたまま、ラースを睨みつけた。憎しみで満ちた目。口の端に血が滲んでいる。
気づけば騒がしかったホールは一切の音が止まっていた。
落ちる沈黙。
睨み合う二人の間に突如影が飛び込む。
「ぅおおおっとっとっとォい!!」
酔っ払いの叫び声とともに、間にヴァルドが突っ込んできた。
ジョッキ片手にフラフラ歩いてる。
支給係陣からは稀代のセクハラオヤジとして総スカンらしいが、戦士連中には妙に人気がある。お調子者の髭面だ。 彼の手に持っていたジョッキが派手に宙を舞い、蜜酒がキレ顔のラースに飛び散る。
「ちったぁ頭冷えたか? 殺し合いするなら外でやれや。なぁ?」
「酔っ払いはすっこでろ」
ラースの声は低く、獣の咆哮みたいだった。
「おう、すっこんでやるよ。でもよ、その前にひとつだけ聞かせろや」
ヴァルドの声は軽かったが、その目だけは、酒で濁っていなかった。 まっすぐに、ラースを見据えている。
「お前は憂さ晴らしでガキをいじめてんのか? それとも真面目に鍛えようとしてんのか? どっちだ!?」
ラースの目に、一瞬だけ別の何かがよぎった。
だが、それは言葉になる前に消える。
ヴァルドはゆっくりと腰を下ろし、濡れた肩口もぬぐわず、ただ黙って杯を煽った。
空気がひとつ、凍ったまま揺れている。
誰も、言葉を継ごうとしなかった。
周囲の戦士たちも、視線を泳がせながら、口を閉ざしている。
ヴァルドは酒臭いため息を盛大に吐いて肩を落とす。
「ちったぁヘルギのことも考えてやれよ」
ぽつりとそれだけ呟き、席へ戻っていった。 さっきまでの酔っ払いに戻ったかのように。
その隙間を縫うように、ハンスが立ち上がる。
口の端から血が滲んだまま、にやりと笑った。
「はっ、図星ってやつか」
吐き捨てるように言い、ラースに背を向けた。
残されたラースは、一言も発さず、ただジョッキを傾けた。
蜜酒の残りはもうほとんどないはずなのに、それでも、何かを流し込もうとするみたいに。
ダイゴはその背中を見ていた。
誰も近寄らず、誰も声をかけない。 けれどその静けさの中で、なぜか、あの広い背中がやけに小さく見えた。
ラースって男は、どうも口下手らしい。
もしかしたら誤解の可能性だってある。
あの時のラースを思い出す。
現実から目をそらすようなあの視線。
何かを押し殺すようなあの態度。
孤独な英雄は一体何を考えているのだろう。
蜜酒をもう一口飲みながら、ダイゴはそっと目を伏せた。
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