track.7 帰途
//SE 静かな雨音が止む
「雨、上がっちゃったね。」
「じゃあ、坊や。そろそろ帰りなさい。」
「学校も終わって、あとはおうちに帰るだけなんでしょう?」
「え?違うって?」
「もう、お姉さんに嘘なんかついちゃダメなんだからね。」(笑いかける)
「どうしてそんなに寂しそうな顔をするの?」(心配そうに)
「大丈夫大丈夫。私はずっと君のことを見てる。」(にこやかに)
「私はずっとここにいるよ。」
「んもう、泣きそうな顔しないの。」(困ったように)
「やっぱり…寂しい?」
「ふふっ、しょうがないなぁ。」
//SE すぐ側で衣擦れの音(目の前でしゃがむ)
「坊やが寂しくないように、おまじない、かけてあげる。」(顔の前で)
「ほら、目を閉じて。(SE//微かな衣擦れとまぶたに触れるような僅かな音)心の中で、一番大切なことを思い浮かべてごらん?(耳のすぐ側で)」
//SE パン、パンと、軽く2回手を叩く音
//SE どこからともなく、遠方から神楽鈴のような音
「春は自ずから往来し、人送迎す。愛憎何事ぞ陰晴を別つ。」(微かな吐息混じりで、古の言葉を紡ぐように)
「君のこれからが、ずっと幸せでありますように。」(耳に息がかかるくらいすぐ側、囁くように)
//SE ふっ、と、額に息を吹きかけるような音
「はい、目を開けてもいいよ。」(にこやかに)
「このおまじないはね、この神社に、ずーっと昔から伝わる大切なものなのよ。人々の幸せを願う、私たちの祈りの言葉……。」
「これで坊やの人生も、きっといいものになる。」
//SE 立ち上がる衣擦れ音
「きっと、いえ、絶対……ね?」(坊やを慈しむように、柔らかく包み込むような声)
「ほらほら、泣かないの。」(困ったように)
「もう、しょうがない坊やね。」
//SE 坊やの柔らかい髪の毛をワシャっと撫でる音
「大丈夫だよ。君はきっと、大丈夫。」
「ん?どうしたの?やっぱりまだ心配?」
「また会えるかどうか?」(ゆっくりと、尋ね返すように)
「そうだねぇ……ふふっ。」(いたずらっぽく)
「それは…君の行い次第だね。」(いたずらっぽく)
「……坊やがこの地で見たことや知ったことを大切にして、いつかその心が、またこの場所を求める時……きっとその時に、坊やの中の答えが見つかる。そしたら、またおいで。」
//SE 数歩程度歩く音(後ろを向く)
「この神社が無くなっても、この町の誰もが私のことを忘れても。」(背を向けて)
「世界が私のことを、まるで最初からなかったもののように扱っても。」
「たったひとり、坊やが私のことを覚えてくれてさえすれば、坊やにとって、私はここにい続ける。」(静かに、芯のある声で)
「言ったでしょう?」(振り返って)
「昔から、別れは新たな出会いへの合図なのよ。」
「ほら、おかえり。」
「ここはもう、君がいるべき場所じゃない。」
「君には、暖かい家族や、お友達が待ってるんだから。」
「だからほら。」
「振り返らずに、真っ直ぐ帰るのよ。」
(しばらくの間)
//SE 坊やの小さな足音
「ねえ、坊や」(躊躇いがちに)
//SE 坊やの足音が止まる
「さようなら……いえ、またいずれ。」(スッキリとした声で)
//SE 少し踏みとどまった後、坊やが走る足音
//SE 吹き抜ける風
//SE 鶯の鳴き声
//SE 遠くの方からうっすらと聞こえる神楽鈴の音
「花を落とすの雨は、是花を催すの雨。」(後方やや奥で、小さくつぶやく。)
「一様の檐声、前後の情。」(空気に吸い込まれるような、静かに響く声。)
「君との別れで、またひとつ。小さな花が咲く。」(微かに聞こえる)
「ありがとう…坊や。」(ほんの少し涙まじりで、優しくつぶやく。)
//SE 想いを込めたように、一陣の風が吹き抜ける音
雨綴詩《あめをつづるのうた》 貝塚伊吹 @siz1ma
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