​皆さん、こんにちは。この町で長年ボランティアリーダーをさせていただいております、佐藤と申します。いつもニコニコ、元気な挨拶がトレードマークなんて、嬉しいことを言ってくださる方もいらっしゃいます。この素敵な町が、もっともっと住みやすく、安心できる場所になるように、少しでもお役に立てればと日々活動しております。

　​最近、都会の人間関係は希薄だ、なんて寂しい言葉をよく耳にします。お隣に誰が住んでいるかも知らないなんて、悲しいじゃありませんか。でも、ご安心ください。ちょっとしたコツさえ掴めば、ご近所付き合いは決して難しいものではありません。むしろ、日々の暮らしを豊かにしてくれる、素晴らしい宝物になるんですよ。

　​この度、私が長年の経験で培った「完璧なご近所付き合いのための7つのルール」を、皆さんに特別にお教えしたいと思います。さあ、一緒に素敵なコミュニティ作りの第一歩を踏み出しましょう！

​ルール１：気持ちの良い挨拶は、地域の潤滑油

　​基本中の基本ですが、これが一番大切です。ただ「こんにちは」と声をかけるだけではありません。相手の目を見て、にっこりと微笑む。そして、「良いお天気ですね」「お子さん、大きくなられましたね」なんて一言添えるだけで、心の距離はぐっと縮まります。最初は恥ずかしいかもしれません。でも、勇気を出して続けてみてください。挨拶は、あなたという存在を地域に知らせる、最初で最高の自己紹介なのですから。

​ルール２：回覧板は、心をつなぐバトンリレー

　​地域の情報を共有する大切な回覧板。これをいかにスムーズに回せるかが、コミュニティの成熟度を表します。受け取ったらすぐに中身を確認し、ハンコを押して次のお宅へ。簡単なことですが、意外と滞ってしまうもの。あら、うちで止まっていたわ、なんてことがないように、玄関の分かりやすい場所に一時置き場を作るのがおすすめです。そして、「誰から受け取って、誰に渡したか」を意識すること。流れが滞った時に、どこで止まっているかすぐに分かりますからね。みんなが少しずつ気を配ることで、情報の流れはスムーズになるのです。

​ルール３：ゴミ出しは、その人の心を映す鏡

　​さて、ここからが少し応用編です。地域のルールの中でも、特にトラブルになりやすいのがゴミ出しの問題。曜日を守らない、分別ができていない…。残念ながら、そういう方もいらっしゃいます。でも、いきなり咎めてはいけません。きっと、うっかり忘れてしまっただけ、ルールを知らなかっただけなのですから。

　​そんな時は、手書きの丁寧なメモをそっとポストに入れて差し上げましょう。「いつもお世話になっております。もしかしたらご存じないかと思いまして…燃えるゴミは月曜日と木曜日ですよ。これからも一緒に、きれいな町にしていきましょうね」というように、あくまで親切に、相手を気遣う気持ちを込めて。印刷された無機質な紙よりも、手書きの温かみこそが、相手の心に響くのです。

​ルール４：地域の輪は、全員参加で完成するもの

　​町内会のお祭りや、一斉清掃。これらは地域住民の大切な交流の場です。もちろん、ご家庭の事情で参加が難しい時もあるでしょう。それは仕方のないことです。

　​ですが、もし何度もお誘いしても参加していただけない方がいらっしゃったら…。それは、私たちが心配すべきサインかもしれません。何か悩みを抱えていらっしゃるのかも。そんな時は、後日お会いした際に、「この間のイベント、どうして来られなかったのですか？　何かお困りごとでも？」と、詳しい事情を優しく伺ってみましょう。プライベートなことだから、と遠慮してはいけません。一歩踏み込んでお話を聞くことこそが、本当の「ご近所さんの思いやり」というものです。私たちは、あなたのことを心配しているんですよ、というメッセージを、きちんと伝えてあげることが大切なのです。

​ルール５：「みんな」の快適は、「みんな」で守るもの

　​さて、ここからは少し悲しいお話です。どんなに私たちが努力しても、残念ながら「コミュニティの和を乱す存在」というのは現れてしまうことがあります。自分勝手な振る舞いで皆に迷惑をかける人、地域のルールに協力しようとしない人……。

　​このような存在を放置しておくと、せっかく築き上げてきた私たちの快適な暮らしに、少しずつヒビが入ってしまいます。そうなる前に、私たちは「私たちの町は、私たちで守る」という強い意志を示さなければなりません。

　​例えば、Aさんという方が、いつも家の前の道路に私物を置いたりして、皆が迷惑しているとしましょう。注意しても聞く耳を持たない。そんな時は、町内の一斉清掃の際に、Aさんの家の前だけ、掃き清める手をとめてみるのです。他の家々はピカピカなのに、そこだけ落ち葉が残っている。あからさまに仲間外れにするのではありません。これは、その方に「ご自身の行いを、もう一度見つめ直してほしい」という、私たちからの静かな、しかし明確なメッセージなのです。

​ルール６：「心配」という名の、大切な情報共有

　​和を乱す方というのは、得てして孤立しがちです。そして、その方の良くない噂が、どこからともなく聞こえてくることもあります。例えば、「Bさん、最近ご主人と上手くいっていないらしいわよ」「お子さんの素行も、少し心配なのよね」といったお話です。

　​このような話を聞いた時、私たちはそれを単なる噂話として聞き流してはいけません。それは、Bさん一家が抱える問題のサインであり、地域全体で気にかけてあげるべき重要な「情報」なのです。

　​ですから、他のご近所さんとお話しする機会があれば、「Bさんのこと、とても心配しているんです」という前置きをして、その情報を共有しましょう。決して悪口ではありません。あくまで「心配」の気持ちから、情報を皆で共有し、何かできることはないか考える。そうすることで、私たちはBさんを孤立から救うと同時に、地域に潜むリスクを管理することができるのです。噂を広めるのではなく、「心配の輪」を広げる。そう考えるのですよ。

​ルール７：最後の仕上げは、みんなの「清らかな願い」

　​これまでにご紹介したルールを実践しても、どうしても改善が見られない方がいたとしたら……。それは、その方にとって、この町が「合わなかった」ということなのでしょう。悲しいことですが、無理強いはできません。その方が、もっとご自身に合った新しい場所で、幸せに暮らせるようにと願ってあげること。それが、私たちの最後の優しさです。

　​もちろん、ただ願うだけではありません。私たちの「清らかな願い」がその方に届くよう、地域全体で少しだけ後押しをしてあげるのです。

　​挨拶をしても、少しだけ視線をそらしてみる。回覧板を、そのお宅だけ少し飛ばしてみる。すれ違う時に、ひそひそと「心配」の声を交わしてみる。一人一人の行動は、本当に些細なものです。誰かを傷つけるような、大それたことではありません。しかし、その小さな小さな「願い」が集まった時、それは大きな力となり、その方の背中をそっと、新しい世界へと押して差し上げることができるのです。

　​自主的にこの町を去っていく。それこそが、その方にとっても、そして何より、この町に住み続ける私たち「みんな」にとっても、最も平和で、理想的な解決策だとは思いませんか？

　​さあ、あなたの町はいかがですか？　あなたの周りに、「ルールを守れない、少し困った方」はいらっしゃいませんか？

　​難しく考えることはありません。まずは笑顔の挨拶から。そして、少しだけ周りに関心を持ってみる。一人一人の小さな「親切」と「心配り」が合わされば、私たちのまちは、もっともっと安全で、素敵な場所になるのですから。

　​皆で力を合わせれば、大丈夫。さあ、一緒に始めましょう。