第6話 消えたチャーリー
「ただいま」
佑はタッパーを大事そうに抱え、キッチンに向かった。キッチンでは母親が晩ご飯の支度を終え、レアチーズケーキを作っていた。
「レアチーズケーキ? これ、載せてよ」佑は自慢げに大粒のブルーベリーを母親に手渡した。
「どうしたの、りっぱなブルーベリー」
「竹田のおばさんが採ってもいいって、タッパーを貸してくれたの。みんないっぱい採って持って帰るといいって」
「あら、すごい。明日、お礼いっとかないとね」
「タイミング良かったね。レアチーズケーキが豪華になった」佑はロイに向かって言った。
ロイが大きな声で吠えた。それも一度ではなく、何度も。ロイは大きな声でひつこく吠える犬ではない。
「佑、ゾイド、どうしたの」
ロイの吠えるのが気になって、母親が佑に尋ねると、佑が慌ててキッチンから飛び出して行った。
「空き地に忘れてきた。取ってくるよ」
佑が竹田さんに送ってもらったのは、五番目だった。最初は空き地のすぐ側のマンションにすんでいる祐子。二番目は真琴、次は和夫、そして幸。幸の家は、少し離れたところにある大きなマンションだ。そのマンションからまっすぐ畑の方向に戻ると佑の家がある。子どもの足で歩いても佑の家から畑までは五分もかからない。でも、車だと道を大きく回ることになるのと、順番に送り届けるから二〇分ほどかかってしまった。
佑は走って空き地に向かい、ほおりっぱなしだったゾイドを見つけた。祐子、和夫、真琴のおもちゃも近くにころがっていた。
「あれ、幸のチャーリーがいないな。幸は取りに戻って来たのか」
佑はそう思って、他のおもちゃを抱え、順番に届けることにした。
「あっ、忘れてた。」祐子は佑が届けるまでおもちゃのことを忘れていたみたいだった。
「明日も遊ぶから、置いておいたんだよ。サンキューな」と真琴は忘れていたことを認めたくないみたいな口ぶりだった。
「おー、ありがとう。すっかり忘れてた」和夫はパジャマに着替えていた。お風呂にはいったんだろう。
「幸は取りに来てたみたいなんだ。チャーリーはいなかったから」
「そうか。幸、みんなの届けてくれたらよかったのに」和夫はちょっとむくれた感じで言った。
「じゃぁ、明日な」
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