『真夜中の異世界侵略ぷよくん頼り』

やましん(テンパー)

『真夜中の異世界侵略ぷよくん頼り』


 職場で、また、啖呵を切ってしまいました。


 やれやれ、自分で居場所を失くすようなものだ。


 でも、職場のやり方は気に入らない。


 つよきに弱く、よわきに強い。


 社長の方針らしい。


 『難しく言われたらやれ。それ以外はやるな。』




 帰りがけに、駅前で深夜まで飲んでしまいました。


 自宅では、母が体調悪くして、病院に担ぎ込まれていたらしい。


 これも、いつものことではありまするが、ぼくは、ひどく怨まれたに違いなかったのであります。


 翌日は、針の筵のような感じで仕事をして、難しいお客さまを押し付けられ、誰も助けには入りませんでした。


 やっとこさで帰宅はしたのですが、なんだかひどく様子がおかしいのです。


 ものすごく、雰囲気が尋常ではない。背筋が固まるようだ(そら、肩こりだろ。)。ぼくの部屋だけ、やや、気温が下がっているのです。


 こうした設定は、洋の東西を問わず、オカルト番組では良く使われる手法なわけなのです。


 とはいえ、寝室で寝ることは、妨害されたりしてはならないワケなのです。


 『やれやれ。』


 窓の外は、なにやら、少し賑やかです。


 『お祭りでもやってるのかな? そんなお祭りあったっけかな? ま、いいか。夜は神秘にして安らぎなり。妨げられることなかれ。』


 両親はすでにいったん、帰宅していたらしいのですが、なにやら、さっそく遊びに出掛けたらしいです。


 『旅に出ます。さがさないで。』


 と、置き手紙がありましたが、これも、いつものことで、たいがいは、すぐ帰ってきます。



 『ありえないだろ。まいったなあ!』


 ご機嫌ななめであることは明らかでありました。



 『まあ、おやすみなさい。あ、ぷよぷよくん、たのんます。』


 ぷよぷよくんは、ナマケモノ型の枕です。


 非常に寝心地が良く、ぼくのお気に入りでありました。


 『はあ。つかれたなあ。寝られるかなあ。』


 ぼくは、睡眠導入剤を二個、お口に放り込んだのです。


 効くか効かないかは、当たるも八卦みたいな感じです。


 窓に映る世界は、やや、紫色で、はるかに、憂いに沈んでおりました。



 がっちゃん!


 『わ!』


 なんと、上の姉が窓から帰ってきたのです。


 『あんたなあ。窓から帰宅するな。ふたりともいないよ。旅に出たらしい。』


 『あそ。』


 姉は、お愛想もなく台所方面に消えました。


 『まったく、おかしな家族だよ。』



 すると、間髪を入れずに、こんどは、下の弟が、やはり窓から現れましたのです。


 『きみ。なんで、窓から入るの?』


 『にいさん、知らないのか? 玄関にはメン・イン・ダークが張り付いているよ。』


 『なんだい、それは?』


 『死神だと思う。』


 『ばかな。』


 『あれは、死神たろうとさぶろうだ。』


 『じろうは?』


 『さあ、うわさでは、新政府に、逮捕されたらしいよ。なんでも、平等主義の人間をすくおうとしたとか。』


 『世も末だね。』


 『あ、親たちが帰ってきたのですよ。』


 『きみ、知ってたの?』


 『さっきまで、病院にいたから。なんか、すごく、兄さんを恨んでたよ。』


 『はあ。さもあらん。ならば、死神さんは、ふたりの差し金か。』


 『うん。その可能性大。まもなく、つまり、踏み込んでくるね。』

 

 『援護しろよ。』


 『やだ。天は自ら助くる者を助く。』


 弟は、2階方面に消えた。


 まさに、それを合図にしたかのように、死神ふたりが、部屋内に突入してきました。



 『覚悟せよ。』


 『かくごめされよ。』



 死神兄弟は、猛然と、襲いかかってきました。


 たろうは、くびきりかまを、さぶろうは、どう切りなたを構えています。


 ぼくには、武器がありません。


 『やましんさん。ぼくを!』


 ぷよぷよくんが叫びました。


 『よし!』


 ぼくは、ぷよぷよくんを振り回しました。


 『おぎゅわ〰️〰️!』


 死神兄弟は、激しく怯みました。


 ぷよぷよくんは、厄除けの魔力を秘めていたのです。


 『なげて!』


 ぷよぷよくんは、叫びました。


 『はいやあ〰️〰️、ぷよぷよくん!』


 ぼくは、ぷよぷよくんを、死神兄弟に投げつけました。


 『あがやあ。参ったあ!』


 ふた死神は、撤退したのです。



       💤🎠💤



 『あんりまあ。』


 ぼくの、お布団の回りは、もう、戦の跡みたいに、ぎたぎたになっていて、ぷよぷよくんは、遥かかなたに飛んでおりました。



 なぜだか、大きな草刈りかまが、足元に捨ててありました。




        👿ワスレタア,カエシテ,グスン






























 

 

 


 


 


 

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『真夜中の異世界侵略ぷよくん頼り』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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