俺氏、女神様のおかげで復活し、「平和になった世界」に戻ってみたのだが…… ~世界を救った英雄、復活したと思ったら皆からの感情が重くなっていました~
クラウディ
エンディングだと思ったらプロローグらしい
「何をやってくれてるんですかあなたはァ!!!!????」
「え、開口一番説教されてるんだけどドユコト?????」
なんか気づいた時には見知った人……人? 人じゃねぇや女神様だわ……まぁ見知った女神様に正座させられた状況でお説教を食らっていました。
マジでドユコトなんでしょうか?
「何をすっとぼけてるんですか!!?? あなた自分がやったこと覚えてないんですか!!??」
「……………………???」
「あ、これ絶対分かって無い顔ですね!?」
「あぁもう本当に頭痛と腹痛がペインペイン……」と言いながら、痛みをこらえるように頭とお腹を押さえて話す目の前の女神様の姿は、神秘性とかそういったものは全然感じられず、どっちかというと部下のやらかしに頭を悩ませる中間管理職みたいな感じだった。
ってかペインペインとか今どき言わないんじゃねぇか……?
まぁそんなことを考えながらも自分の状況を整理しようとする。
あ、申し遅れました。
俺氏の名前は「名無しの権兵衛」……まぁゴンベエと呼んでもらえればいいっすね。
ちょっと放浪の旅をしていたところ、目の前でうずくまる女神様に助けを求められ、彼女が管理する異世界で侵略者をぶっ飛ばしていた一般通過宿なし金なし
ハハッ自分で
「なんで笑ったり怒ったりしてるんですか……怒りたいのはこっちの方なんですよ……!!」
「大丈夫? 睡眠足りてる??」
「あなたのせいで絶賛徹夜中ですよ!!!」
えぇ……俺のせいかよ……心当たりは……………………うん、あるね……。
『
しかも目の前の女神様は、俺が盛大に暴れたい世界の管理者だ……やっべ、最期のこととか諸々思い出したら罪悪感が…………責任取って切腹しなきゃ(使命感)
「ちょちょちょ!!?? なにをしようとしてるんですか!!??」
「おいは恥ずかしか!! 生きておられんごッ!!」
「やーめーてーくーだーさーいー!!!!! なんで変な所で思いっきりが良いんですかねぇ!!!!????」
「HA☆NA☆SE!!」「させるかー!!!!」と、能力で作りだした短剣で自分の腹を掻っ捌こうとしている俺と、それを無理矢理にでも止めようとする女神様の2人でしばらくゴロンゴロンしていると、やがて根負けした俺は大の字になって寝ころびながら大きく息を吐いた。
「はぁ……冗談だって女神様……こんなの軽いジョークでしょ?」
「その割にはさっきの短剣に込められている魔力と概念的な『アレ』が尋常じゃなかったんですが……」
「俺らの所じゃ日常茶飯事だZE☆」
「こ、この人はぁ……!!」
キラッ☆ という擬音でもつきそうなほどに爽やかな笑みを浮かべた俺に、拳を握り締めて今すぐぶっ飛ばせるものならぶっ飛ばしたいという感じに頬を引きつらせる女神様。
「まぁまぁ、軽いスキンシップじゃん」とは口に出さなかった。流石に女神様ナックル食らったら痛いからね。
……と、ふざけるのはここまでにしとこう。
そろそろ真面目な話のターンだ。
「よっと、んで、あのクソ野郎をぶっ殺してポックリ逝った俺にまた何の用だ女神様? あんたに頼まれたことはやってきたぞ?」
「えぇ……いきなり真面目な空気にならないでくださいよ……」
「流石にそろそろ真面目にしないと話が進みそうにねぇしな」
そう言いながら上体を起こし、胡坐をかいて話を聞こうとする俺。
まぁ流石に俺もなにがなんだかわかってねぇからな……って、おいコラ女神様。「明日は太陽が爆発するんでしょうか……?」とかしれっと言ってんじゃねぇよ!
そんな俺の抗議するような視線にハッとしたのか、女神さまは一つ咳払いをして俺に向かい合うようにして姿勢を正した。
「では改めて……あなたのおかげで侵略者達は消滅し、多くの命が救われました。この世界の全てを代表して、感謝いたします」
「ま、俺としてはたまたま通りがかった世界で、手伝ってくれと言われて協力しただけだ。そのおかげで『一生分』の思い出ができたからな。こちらこそ感謝するよ。あんたと出会えてなければ、俺は『皆』のことを知らないままだったからな」
実際、女神さまが声をかけてくれなかったら、俺はこの世界のことなんて気にも留めずに通り過ぎてたかもしれねぇからな。
そうなってたら、俺は『皆』のことを知らないまま、また『別の世界』に向かっていただろうし。
そんなことも軽く呟きながら女神様の方を向くと、彼女は苦虫を噛み潰したような表情のままに口を開いた。
「……改めてスケールの大きさを感じますね。存在としての枠組みを外れた『外の神』を、『末端』の力で消滅させられる『上位存在』――」
「――『
「そんな方であると知らない状態で、助けを求めた過去の私を褒めてあげられるなら褒めたいですね……」
「え、なにその痛い名称。女神ちゃんが考えたの?」
「あなたのご友人が教えてくれたんですよ!! って知らないんですか!!??」
「え? あ、『アイツ』来てたのかよ!?」
「なんでそれも知らないんですか!?」
「いや『アイツ』来たとしてもたぶんこの空間まででしょ!? 俺 is 末端。それで知覚しろ、無理、オーケー!?」
「じょ、情報伝達ぅ……!!」
なんかすっげぇキメ顔で言った女神ちゃんのことよりも、俺はそれ以上に『アイツ』がこの世界に近づいていたことに驚く。ってかここまで来てるんならお前も来いよ!! ぜったい俺一人にしてた方が面白くなりそうだとか思ってるんだろ!!
「あんにゃろう! 今度会ったら新しい本買ってやんねぇからな!!」と虚空に叫ぶ俺を見ながら、女神様は頭痛をこらえるように頭を抱える。
しばらくして、思う存分叫んで落ち着いた俺と頭痛が収まってきた女神様は、先程と同じようにして姿勢を正した。
「お見苦しいところをお見せしました……」
「気にすんなよ女神様。俺も『アイツ』に久しぶりに会う理由ができたからな」
「それは喜ばしいことなのですが……」
「ん? なんかあるのか?」
俺が『アイツ』に会う理由が出来たといったところで、女神様の表情が暗くなる。なんかまずかったか……?
「あの子達のことはどうするんですか……?」
「……正直、あそこで『今の俺』は死んだからな。女神様のおかげだろ? 俺が今こうして喋れてるのは」
「……ええ」
そう、『今の俺』……というか、この世界に降り立った一般転生者は、侵略者――『外の神』との戦いで死んでいる。それも肉体どころか魂まで燃え尽きるレベルで。
多分、こうして喋れてるのは女神様が俺の残留思念とか、俺の『核』である本体から分けられた『火種』辺りを回収して再構築したからだろう。
まぁこれに関しては慣れている……というか、俺の『本体』がそれをやり続けた先で『
要は、気合と根性で燃え続け、存在の枠組みぶっ壊して覚醒しちゃったのが俺の『本体』であり、そんな本体から切り離され、女神様に貸し出されたのが俺というわけだ。
「あなたのおかげで私達の世界は救われました。それ以外に関しても。……そんなあなたのような方が『あの結末』に納得されているというのに、こうして引き留めるのは気が引けてしまいます……」
「よしてくれよ。俺はただ観光気分でこの世界に立ち寄って、あのクソ野郎どもが気に食わなかっただけの通行人だよ」
実際そうだ。
俺は女神様の世界で生まれたわけでも迷い込んだわけでもない。
ただ観光気分で来てたら、いつの間にか入れ込んじまってただけの部外者だ。
まぁそれを言ったら『外の神』とか言うクソ野郎どもも部外者なんだけどな。ほんとアイツらロクなことしねぇ。
……そんなやつが、世界の女神様に感謝されるレベルのことが出来たんだ。個人的にも悪くはない感情だ。
でも、そんな俺が『皆』の下に帰るのは……いや違うな。
「顔合わせにくいだけなんだよ……なんだかんだ言ってあんだけカッコよく散ることができたのなら満足しちゃってるし……」
「え、えぇ……そ、そんな理由で、ですか……?」
「そんな理由とか言うなよ女神様。わかる? 学校とかで『明日引っ越すんだ』って言ったのを皆が涙ながらに見送ってくれたのに、実は来年の話だった……とかいうのを次の日、皆の前で話すの」
「あー……なんとなくわかるような……」
「だろぉ?」
「だから戻ってほしいって言われてもなぁ……」と空を仰ぎながら(この空間に空はないが)呟く俺の内心では、先程も言った通り『皆』の下に戻りたい気持ちと顔を合わせにくいという気持ちが半々になって渦巻いている。
本当だったら即答で「戻りたい!」って言ってるのが普通なんだろうなぁ……やっぱ人間性が結構燃えてたな、『今の俺』も。
だけど……まぁ……
「やっぱ『皆』には笑顔でいてもらいたいな」
「! で、では!!」
「おう、戻ることにするよ。頼むぜ女神様? 今度は上空に放り出すなんてことはしないでくれよ?」
「なっ!? そ、そんなことしないですよ!!」
「もう!! 心外ですね!!」と言わんばかりに頬を膨らませながら転移術式を用意する女神様だが、俺が女神様の世界に初めて降り立った時は放り出されたんだぞ?
だからしょー……じき信用できないんだ。悲しいね。
そんな芝居を挟みながらも、女神様は目にもとまらぬ早さで転移術式を構築し終わった。
こういうところはちゃんと女神してるんだよな。『アイツ』レベルではないけど特化させれば『アイツ』の障壁ぶち抜けそうだし。
「さて、転移する前に言っておきたいことがあります」
「おう、なんだ女神様?」
いざ術式の中に足を踏み入れようとしたとき、女神様が声をかけてくる。その顔には、先程とは違った慈愛のこもった表情を浮かべていた。
「本当に、あなたのおかげです。この世界が救われただけでなく、あの子達の未来を切り開いたことも」
「――だから、もっと誇ってもいいんですよ?」
「……誇ったりはしねぇよ。気まぐれで立ち寄ったやつが誇るとか何様って感じだしな」
「もうっ、そこは素直に受け取っておきましょうよ!」
「生憎、これが『俺』だしな」
「……ふふっ、それでは平和な世界を、楽しんできてください!!」
そう言って、女神様は転移術式を起動し――
「あ、座標間違えてた!?」
「おいちょっと待てやっぱり――!?」
――やっぱりやらかしていた転移術式に俺は飲み込まれるのであった。
「――――お、まえ」
見惚れてしまいそうな美しさの少女が、俺を見下ろすようにして立っている。
周囲を見回せばどこか見覚えのある屋敷の一室で、そんな部屋の主と思われる少女は震える口を何とか開こうとしながら、一歩、また一歩と、俺に向かって歩みを進めていく。
「――――な、んで」
その瞳に表面上は「困惑」の感情が、奥底には「歓喜」するかのような感情が見え隠れしており、簡単に纏めれば「長い別れからの再会」をしたときのような色が見えていた。
……まぁそれもそうか。
俺はさっきまで実質死んでたようなもんだからな。
だけど俺は今ここにいる。
ならかけるべき言葉はこれだ。
「よっ! 久しぶりだな――ヘブラァッ!!??」
「ッ――!!」
「アッ! シマルシマル!! クビシマッテルカラァ!!!」
カッコよくキメようと思ったが、それより先に突っ込んで来た少女に少女に盛大にタックルを決められ、言葉は最後まで出ることはなかった。
そのまま倒れ込んだ俺の首元に抱き着いてきた彼女は、涙を流しながら抱きしめる力を強めていく。
――だぁっ! だから女神様ぁ!! もうちょっと飛ばすところあったでしょォ!!
首を絞められながらこの場にはいない女神様へ恨み言を吐きながら、俺はすすり泣きながら抱き着いてくる少女――「アウロラ」の背中をさするのであった。
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