第24話 D視点 襲来

第20話の直後に戻ります。

                丸兎

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ディー視点


 トレントの件は、放置することで話がついた。精神が壊れかけていたギエルは、見えないものとして扱うと決めたらしい。


「……ぐに、ユミねぎぐいる?」

 訳:ところで、ユミは何ができる?


 

 ……っ!


 これは、面白い。


 放たれた矢。かわさなければ、間違いなく頭を射抜いていた。このゴブリン、予備動作がまったくない。殺気も感じない。



――――想像以上だ。まぁ、我は躱せたのだが。


「ユミ!?ねぎゃぐいる!?」

 訳:ユミ!?何をしている!?


 ユミは無言で、首を縦にふる。なんだ?合格とでもいいたいのか?


 わからぬが、我も合格の意味を込めて首をふる。



「バケモノたちのやりとりは分からねーよ……」


 ギエルは相変わらず、謎言語でうめいている。その時だ。


 地面が、



――――根喰い虫が、来ている。


 どこだ?どこから来る?


 魔力を薄く飛ばし、周囲の地形を確認する。高速で削れていっているのが、根喰い虫の場所だ。



 ……見えたっ!


「びがッ!ぎゃばくぬぞふぎんぐるおッ!」

 訳:東ッ!巣穴の外に誘導しろっ!


 根喰い虫は、一直線にこの地下広場へと向かっている。



 ……まずい。我の魔力を感じられたか。ならば……我を追ってくるはず!


「ギエル、ユミぎゃおッ!」

 訳:ギエル、ユミだけ来いッ!


「待てっ!もう一匹……」


 ギエルが何事かを叫び、我が振り向いた。その瞬間、我が飛び出そうとしていた場所が、無数の触手によって崩壊する。


 根喰い虫の位置を確認。まだ離れた場所にいる。この位置への攻撃は不可能。つまり⋯⋯



――――もう一匹いるッ!


 ギエルの叫びが無ければ、喰われていた。少しは認めてやろう。


 だが、まったく窮地は脱せていない。


 ユミの背後の壁にヒビ。


 隙間から、触手がぬるりと這い出てきた。


「……ぎぬお」

 訳:……死ね

 

 無感情な一撃。触手に鋭く突き刺さり、貫通した。


「うぉっ!ナイスだユミッ!……呪毒刻印じゅどくこくいん発動ッ!」


 矢が紫色に輝く。禍々しい紫の線で描かれた刻印は、触手に写り、刻み込まれる。



 呪毒刻印を刻まれた触手が痙攣する。地面を崩す動作が止まり、一瞬の静寂。





――――黒い体液が飛び散った。根喰い虫は、自らの触手を断ち切ったのだ。



 ……毒が本体にまわるのを防ぐためか。やはり、賢い。


 両側から包み込まれように、強大な殺気。どうやら、毒のおかげでとして認めてくれたらしい。これは、厄介だ。


 戦況は悪化している。両側には深層域のバケモノ二匹。双方、油断はしていない。


 幸いなことがあるとするのならば、我らに目を取られている隙に、他のゴブリンが逃げていることだろうか。


 頭の中で戦略を組み立てる。何をすれば倒せるか。どうすれば攻撃が効くか。何があれば……


「うわッ!なんだよ!?」



 ギエルが再び叫んだ。どこかを指差す。……上?


 上から垂れていたトレントの根が、突如として動き出していた。


 土砂を割って伸びたその根は、勢いよく飛び出し、根喰い虫の胴体に巻きつく。


 同時に、根は急速に引き戻され、暴れる根喰い虫を地上へと連れ出そうとする。


 トレントの魔力に釣られた根喰い虫は、自ら地上へと上っていった。


 その時、見知った魔力がぶつけられる。



『わしが処理するッ!!魔王様のご意思じゃッ!!!』


 ――脳に、響く。

 

 明らかな念話。トレントだ。


 だが、あまりに無遠慮で強引なそれは、脳髄を直接殴られたような不快感を残した。



――――だが、ありがたい。


 これで、敵は一匹。集中してあたれる。


 仲間が連れ去られた怒りだろうか?


 触手が次々と襲いかかる。一本でも受ければ、即死。


 だが、退かない。退けない。

 

 我とユミ、ギエルの連携で、ようやく拮抗。




 ……時間をかけるほど、我らが不利になるか。


 地響き。奥から、さらに触手の気配。

 このままでは押し切られる。


 ならば――


 ……仕方ないな。崩落したときはそのときだ。


 魔力を一点に集中させる。

 刃に、黒炎が宿る。


――――黒炎一閃ッ!





 その瞬間、空気が変わった。が、牙を剥く。その巨体が、動き出す。

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