生きにくいこの世について

夜月 萃

第一章 ぼくという人間

 ぼくという人間は、無口で人見知りで人に言えない秘密を抱えてる一人ぼっちの人間だ。みんな誰にも言えない秘密があるはずだ、言っても理解されないことだってあるし今までの関係が壊れるのが怖いから言えぬまま抱えてる。ぼくという人間もそのことを恐れて言えぬまま抱えずっと苦しがってる人間だ。この物語は作者が経験したことをもとに書き下ろしたものである。

 ぼくの秘密は小学生のときに気づき、なぜかその時から家族だろうと言えぬものだって直感で思ったんだ。昔から頭が悪いのにそういうときだけ直感で理解されないことだって思った昔の僕はすごい。でも、今となって考えるんだ。あの時、言えば今の環境がいい方向に向かっていったんじゃないかって思ってしまうことがある。いまこんな事考えてもう遅すぎると知っていても後悔してる気持ちがあるから考えてしまう。ぼくの秘密は、世界中の何%の人が共通としてもつ秘密だ。テレビなどで同じ秘密をもつ人は家族に打ち明けて受け入れされる家族ばっかりで、秘密を家族に言っても受け入れされない人だっているのに綺麗な部分ばっかうつしてるテレビにはうんざりしている。

 もうぼくが抱えてる秘密が分かった人がおるのかな。ぼくの秘密は、ぼくがトランスジェンダー男性であることだ、知らない人に説明すると生まれ持った性が女性だけど心の性が男という性同一性障害だ。ぼくは、この秘密を父さんと義兄に話したんだ。もちろん、恐怖や不安、苦しさなどがあったがここで言わなきゃ一生後悔するだろうと思った。当時ぼくは中3で卒業式間際だった、話すのが怖いから父さんへの手紙を書いたんだ書いてる途中でも感情が溢れて苦しかった。「認められない」「お前は俺の子じゃない」とかそんなことばっか浮かび上がっていって泣き出しそうだった。

 卒業式が終わり翌日の朝、リビングに呼ばされた。そのとき悟ったあの手紙のことだろうと、覚悟をして椅子にすわり感情を出さないように抑えるのが精一杯で話の内容はうろぼえだが

 父さん「わかった。」

そう、しか言わなかった。否定か肯定かわからなかった、でもその言葉だけでも泣き出しそうだった。もともと泣き虫なぼくは今までの感情が溢れ出し涙目になっていた、そのとき父さんが頭を撫でようとしてきた。頭撫でては感情を抑えられないとおもったぼくは反射的に手で止めた、顔を見ないようにしたから手が父さんの顔に直撃してしまった。そのあとのことはよく覚えてないが、昔と変わらず女性扱いしてるから言った意味がないと感じてしまう。無意識だろうが、ぼくにとってはづらいことだった。

 義兄の場合、ラインで言ったんだ。義兄は他県に住んでたからそう簡単にあえることはなかったしラインだと相手の顔を見なくていいとおもったからだ。ラインでこう送った

 ぼく「ぼく、トランスジェンダーなんだよ」

そう送ると、義兄はこう答えてくれた

 義兄「それでも愛す」

と義兄はいつもふざけてるからその答えもふざけてるとわかった。でもぼくにとっては、否定の言葉じゃないだけで心が軽くなったんだ。義兄も父さんと同じように女性扱いしてくるが、無意識に女性扱いしてること気づくと言葉を止めてくれる。父さんより良かった、父さんは気づかないんだから義兄は唯一ぼくをもっとも理解している家族だと思う。それが嬉しかった、欲を言えば無意識に女性扱いがなくなったらもっと居心地がよくなるなとおもった。それもまた、一つの夢だろう。

 

 

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