第12話 女王の褒美と新たな火種
「……宝箱?」
俺は訝しげにカーミラを見る。
「ええ。あの目玉が、何百年もかけて溜め込んだ魔力の結晶ですわ。わたくしには不要ですが、今のあなたにはちょうど良いでしょう」
俺はゆっくりと宝箱に近づき、【神眼】を向ける。
【鑑定:魔眼の宝核】
【詳細:『奈落の魔眼』の核が、破壊された際に魔力を凝縮させて生まれた秘宝。膨大な経験値と、強力なスキルを内包している】
【隠された情報:この宝核は、シルヴァリア王家の血筋に強く反応する特性を持つ。王家の人間が触れることで、秘められた真の力が解放される】
「シルヴァリア王家……またか」
俺は宝箱に手を伸ばし、蓋を開ける。
中から溢れ出したのは、目も眩むほどの眩い光だった。
光が俺の体に吸い込まれていく。
【膨大な経験値を獲得しました】
【レベルが60に上がりました】
【スキル『石化の邪眼 LV.1』を獲得しました】
【スキル『未来視 LV.1』を獲得しました】
「なっ……!?」
レベルが一気に10も上がった。それだけじゃない。
『石化の邪眼』は、あの魔眼が使っていたスキルか。そして、『未来視』……? これは【神眼】の力とはまた違うのか?
「ふふ、どうです? 気に入りましたかしら?」
カーミラが満足そうに微笑む。
「……ああ。とんでもない代物だな」
俺は自分の手のひらを見つめる。力が、漲りすぎている。
「さて、戻りましょうか。お嬢様も、待ちくたびれていますわよ」
俺たちは通路を引き返し、リナが待つ場所へと戻った。
「レオン様!」
俺の姿を認めるなり、リナが駆け寄ってくる。その顔色は、さっきよりもずっと良くなっていた。
「ご無事だったのですね……! よかった……!」
「ああ。心配かけたな」
「いえ……! それより、お体は……?」
「問題ない。それより、お前こそ大丈夫なのか?」
「はい。カーミラ様のおかげで、体がとても軽いです」
リナはそう言うと、カーミラに向かって深々と頭を下げた。
「ありがとうございました、カーミラ様」
「礼には及びませんわ。わたくしは、騎士様との契約を果たしたまでですもの」
カーミラは優雅に微笑むと、俺に向き直った。
「さて、騎士様。わたくし、少し地上に興味が湧いてきましたわ」
「……は?」
「何百年もこの地下で過ごすのは、少々退屈でしたの。あなたという面白いおもちゃ……いえ、騎士を手に入れたことですし、少しばかり地上を散策してみようかしら」
「おい、まさかお前、このまま地上に出る気か?」
「ええ、そのつもりですけれど?」
冗談じゃない。こんな化け物が王都をうろついたら、大騒ぎになるどころの話じゃない。
「ダメだ。絶対に許さん」
「あら、怖い。ですが、わたくしの騎士であるあなたが、わたくしを止められるとでも?」
カーミラが、挑発するように俺を見る。
その通りだ。今の俺でも、彼女には手も足も出ない。
「……チッ」
俺が舌打ちした、その時だった。
「――何者だ!」
通路の入り口、俺たちが入ってきたマンホールの方から、複数の松明の光と、鋭い声が響いた。
「この先は王家の禁域である! 速やかに武器を捨て、投降せよ!」
声の主は、聞き覚えがあった。
現れたのは、白銀の鎧に身を包んだ、凛とした女騎士。
第三騎士隊隊長、セレスティア・アークライト。
そして、彼女の後ろには、聖女エリアーナと、俺を嘲笑ったカインの姿もあった。
「……レオン!?」
俺の顔を認めたカインが、驚愕の声を上げる。
「なぜ、追放されたお前がこんな場所にいる!?」
「それはこっちのセリフだ。あんたたちこそ、何の用だ」
俺はリナを背後に庇いながら、冷たく言い放つ。
セレスティアの氷のような視線が、俺を射抜いた。
「……地下迷宮で、異常な魔力反応を感知した。調査に来てみれば……お前だったか、レオン。災いを呼ぶ男め」
「……」
「そして、その後ろにいるのは……まさか、帝国の間者か!?」
セレスティアの視線が、リナと、その隣に立つカーミラへと向けられる。
「あらあら、これは……」
カーミラが、楽しそうに目を細めた。
「何やら、面倒なことになってきましたわね」
聖女エリアーナが、一歩前に出る。その顔には、いつもの慈愛に満ちた笑みはなく、冷たい侮蔑の色が浮かんでいた。
「レオン……あなた、追放された身でありながら、今度は帝国と手を組み、王国を内側から滅ぼすおつもりですのね。どこまで堕ちれば気が済むのですか」
「……はっ、相変わらずだな、聖女様」
俺は鼻で笑った。
「あんたのその腐った性根、俺の眼にはお見通しなんだよ」
「なんですって……?」
エリアーナの眉が、ピクリと動く。
状況は、最悪だ。
元いた騎士団の連中と、夜の女王。そして、亡国の王女。
役者は、揃いすぎている。
俺は『星砕き』を握りしめ、静かに呟いた。
「……ああ、面倒だ。全員、まとめて相手してやるよ」
地下迷宮の冷たい空気の中で、新たな戦いの火蓋が、今、切られようとしていた。
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