断罪から始まる、最優の騎士へ

ちゃま

第1話

――気がついた時、俺は処刑台に立っていた。


ざわめく民衆、裁きを下す貴族たちの冷たい眼差し。

そして、鋭く突きつけられる断罪の言葉。


「レオン・ヴァルトシュタイン。貴様は王国に仇なす禁忌の魔を招き入れ、無辜の民を犠牲にした……その罪、万死に値する!」


「……は、はは……なんでだ……なんで……!」


俺は――負けたのだ。

それまで誰にも負けたことがなかったこの俺が、見下していた平民出の男に敗北し、プライドも尊厳も打ち砕かれた。


そして、愚かにも――“悪魔”と契約してしまった。


力を得たつもりだった。

だが、力に呑まれ、俺は“人”をやめた。


全てを壊し、全てを失い、最後に残ったのは……処刑台の冷たい鎖だけだった。


(あぁ……あれか……)


断罪の言葉を聞くその瞬間、ようやく俺は思い出した。


――これは、俺がかつてプレイした“乙女ゲーム”の世界。

そして俺は、その中で断罪される“悪役貴族”だった。


(……なら)


(やり直せるのなら……今度こそ……!)



「――レオン様。お目覚めですか?」


目を覚ました俺に声をかけたのは、見慣れた侍女・リリィだった。

差し込む朝日と、静かな部屋。そしてまだ柔らかな身体の感覚。


(戻ってきた……)


ここは三年前のヴァルトシュタイン伯爵家。

断罪の未来が訪れる、ちょうど三年前――俺がまだ十二歳だった頃だ。


「なあ……俺、今いくつだ?」


「はい? ……十二歳でございますが……何か」


(やはり……間違いない)


そう確信した時、俺の中で何かが決まった。


(あの未来を繰り返すわけにはいかない)


(俺は、変わる)


(――今度こそ、“本物”の強さを手に入れる)

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