柚希と二人、求めても求めても……
右手で「一本取られました」とばかりに頭を押さえて微笑んでいるかと思えば――見る見るうちに形相が変わり、目を血走らせるほどに剥きだした。
「え……? どうしたの?」
「私……損した。大損したぁ……」
(な、何があったの?)
コチラが困惑していると、その強い……喰ってやるぞと言わんばかりの肉食系な眼光のまま、ずいっと一気に間を詰められ、思わずこちらが引いてしまう……
「ねぇ……ねぇ……私はどうだったの? 私は? うん? ねぇ?」
――ちょっとカツアゲに遭っている気分……根は気の弱い俺は小さくなってしまう。
でも偽りはなく、
「そりゃあ、最高だったよ」
「本当?」
「本当さ」
何を殺気立っているんだろう――?
「私……晴人に掴まっているのが精一杯だった。そしたら晴人が、あんなに上手に私を……。だから私も、上手になりたいよ。晴人にパッと触れただけで『ピッ!』となってしまうぐらいに」
抽象的すぎる……けど、ものすごくよく分かる気がする。
「だから私に教えてよ……どうしたら晴人がもっと良くなるのかを……後でね」
「あ、後なんだ……」
「うん……だって私、大損したもん。埋め合わせしなきゃ……」
さっきからそう言ってるけど――
「何を損したの?」
「あんな幸せで、その……飛んでしまうほど気持ちの良かった体験なのに……それを、『そうなっちゃいけない、そうなっちゃいけない』って必死で堪えてしまった。それでも最後は……頭の中が真っ白になるぐらい、ぶっ飛ばしてくれたけどね」
(ああ……それがあの白目剥いた……)
「損したよっ、損したぁっ。取り返す、私。今すぐに取り返すっ!」
「取り返すってどう……はむぅ……」
「んんっ♡……んふぅ……んんっ♡」
柚希のフルパワーで俺は捕まえられて全く動けない状態にされ、全力で唇を押し付けてくる。まるで昨日の夜のあの時を、今すぐ、一秒でも早く再現できるようにとせんばかりに……。
「はむぅ……ジュルジュルッ……んふっ……んちゅちゅっ♡♡」
まるで口腔ごと食べてしまうと言わんばかりのキスを首を振って捻じ込むとばかりに送り込んで来る。しかも両腕は俺の首に強く巻き付いて一切の動きを許さない。
そして片手で扉を開け、エアコンの効いているリビングに雪崩れ込む。
「わ、わあ、危ない……アイタッ!」
俺は敷居をまたぐと同時に大内刈りで押し倒されてしまった。
学校での柔道の授業が幸いして、頭は打たずに済んだけど――
「あの……柚希、落ち着いて」
馬乗りになっている柚希を沈めようとするけれど、すでに捕食者が獲物を捕らえ、止めを刺す目つきになっていた。
「落ち着ける訳ないじゃない。私をこんなにしてぇ……」
「こんなに……?」
柚希はそのまま俺の果樹園を下に下り、品評会で大絶賛を受けたいちじく付きジャイアント・キャベンディッシュを、包んであった包装紙を何の躊躇いもなく剥ぎ取った。
「ああっ」思わず俺の方が女々しい声を出してしまう。
「私の体にこんなこと教え付けて……おかげですぐにおかしくなっちゃうじゃないのよ……全部晴人のせいよ。ホント、年下のくせに生意気……責任取りなさいね」
そう言って自分も果物の盛り合わせを覆っていた俺のダウンコートをあっさりと取り、あのきっちりした柚希が、ちゃんと畳んで置く時間すら惜しいとばかりに投げ捨ててしまった。
コートの中から、柚希の白い、静脈の透けた恐ろしいほどの蠱惑的な身体が、一糸纏わず露わになった。
昨日散々、目と脳の記憶に焼け付くほど凝視したのに……まだまだ全然飽きない、そんなんじゃ足りないとばかりに、欲望が突き上がった。
(と、ところで、それって――俺の、せいなのか?)
よく分からない。よく分からないけど彼女なりの論理ではそうらしい。
「あの……まだ無理したら……痛いんじゃないの?」
――と気遣ってみるが……全く聞いていない。
目的にまっしぐら、無我夢中の様子だ。
そんなことを考えている隙も与えずに、すでにキャベンディッシュを『所有者は自分』とばかりに掴み、自らのりんごにあてがう……何の準備もいらないほど、滴るほどの潤いで溢れかえっていた。
▽▼
結局俺たちはそのままリビングで結ばれた。
タガが外れた柚希は、自由なままに自分を解放し、表現していく。
自分がどうすれば最高な気持ちになれるのか、それを阻む壁は存在していない。
もはや彼女を止めるものは何もなかった。
けど、お腹もすく。喉も乾く……生物だから仕方ない。
だからキッチンで後ろから……
その後は朝食のスクランブルエッグトーストを頬張りながら同じ椅子に向かい合って座り……
それからはリビングのソファーで……
こんな時は不思議と、非力な俺も力が出るもので、柚希を抱っこ状態で繋がり、担いだまま寝室まで運んで行くことができた。
それにますます雄を感じた様子で興奮し、一段と妖しく潤って深く深く求めてきた。
その後はお互い意識がなくなるまで夢中で惹かれ合い、一つの影となったまま二人とも眠りに落ちてしまった。
またそこから起きて、まだ求め合う……飽きることなんてない。
一人ずつが一人ずつでいる時間の方が少ないくらいに。
買ってきた避妊具1箱は、毎回使用していたわけではないのに、結局24時間もたなかった。
服をちゃんと着た記憶がない。
しかもその晩もしっかりと……
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