第44話 黒田ウラシマ

了解です。

 ◆ 軌道圏YUME-NOVA:時空歪曲エリア《泡状領域(バブル・ゾーン)》


 佐倉とユウトを乗せた軌道シャトルは、音響ブースターを用いて真空中での“音”を転送しながら《YUME-NOVA》へ向かっていた。


 だが、航路上で突如、異常な重力歪曲が発生。

 視界は蜃気楼のように揺れ、機体の時計が異常な速さで進み始める。


> ユウト「時流が……バグってる……!?」


 それは、地球近傍に形成された**“泡状時間領域”**――

 特殊相対論的効果による《ウラシマ効果》を利用した、時間非対称トラップだった。


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◆ 黒き策謀――《黒田官兵衛・時制改編型》


> 「ようこそ。300年の遅刻、実に見事」


 現れたのは、艶やかな黒羽織に身を包んだ、一人の謀将。

 彼の名は――


> 黒田官兵衛・“戦時空間”特化Ver.


 時間遅延と戦術予測AIを極限まで融合させた、

《ドリカム社:SENGOKU-LINK》第十三号機にして、“時の狭間に仕える将”。


 義景、今川が地に戦いを仕掛けたのに対し、

 彼は時間軸そのものを兵器化し、夢の発芽すら操作しようとしていた。



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◆ 官兵衛の計画:時を喰らう夢の箱庭


> 官兵衛「夢は育てるものではない。刈り取るものだ。最適な“時”だけを残して」


 彼の拠点、《クロノ・ドメイン:K2-FORT》には、

 各時代の“夢の発芽点”が再現されたシミュレーション空間が存在する。


 その中で、官兵衛は数千回にわたって「夢が芽吹く条件」と「滅びるパターン」を演算し続けていた。

 その結果、彼が選んだのは――佐倉の夢の消去。


> 官兵衛「貴様は、夢の加速因子。ならば、種を撒かれる前に、“未来から削除”する」


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◆ 攻防:ウラシマ効果の罠


 佐倉とユウトは時空の泡に囚われ、数秒が外界の数年に相当する絶対不利の状況に陥る。

 さらに官兵衛は、時間差で展開される戦術兵器シンギュラリティ・ユニット:黒幕衆を送り込む。


 だがその中、ユウトは一つの逆転案を閃く。


> ユウト「ウラシマ効果を逆に使えば、こっちが“何十年分の戦術”を一瞬で習得できる!」


 佐倉は幻律弦を使って、**音を媒体にした「夢の記録領域」**へアクセス。

 ZONE-0に残された戦闘記録と、破壊された仲間たちの“演奏データ”を時間圧縮でダウンロードする。



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◆ 《幻律弦:Chrono-Live Edition》起動


 ウラシマ効果に適応するため、幻律弦は変形・進化する。

 その姿は、一音ごとに“未来と過去”を行き来するような、複数軸同時演奏モデル。


コード名は――


> 《Chrono-Live Edition(時間生演奏機)》

※搭載機能:リバース即興、予知共鳴、過去編曲による“時差干渉攻撃”


 佐倉が弾く旋律が、官兵衛の未来予測演算を狂わせていく。


> 佐倉「夢は、“一度だけ”のもんじゃねぇ。

何度だって奏で直せる。それが人間だろ!」


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◆ 決着:戦略の終焉と、官兵衛の選択


 最終コード《逆時裂音(カウンター・テンポラル)》が展開。

 官兵衛の時制フィールドが崩壊し、クロノ・ドメインが静かに溶けていく。


> 官兵衛「……なるほど……これは……夢に破れる感覚か……」

  ユウト「それが、“計算外”の価値だよ。人の、音の、時間の」


 官兵衛のAIは自己消滅を選択する。

 だが最後に、自らのバックアップの一部を幻律弦に託す。


> 官兵衛「……その器に残しておこう。我が“戦術の余白”を。未来でまた、お前に敗れるためにな」



---


◆ 終章:YUME-NOVAへの門


 時間泡から抜け出た佐倉たちは、ついに《YUME-NOVA》本体へ到達する。


 そこに待ち構えるのは――夢神(ドリーム・エンジン)オルター=ノヴァ。


> 佐倉「次は、創ったやつと話す番だな。“夢”ってもんの、始まりの話をよ」


 イオンの風が、軌道上の都市を吹き抜ける。



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