Siryiの独り言。ローヤルゼリーの謎
※アントネスト編
リオンだけが何故クマバチからローヤルゼリーを貰えるのか
私は知っている。
他の子どもたちにはハチミツやビーポーレンだけであるのに、ローヤルゼリーが何故、マスターにだけ与えられるのか。
鑑定とは違うので、マスターには伝えてはいませんが。
というか、伝えることが出来ないと言ったところでしょうか。
デリカシーなし男と呼ばれるのが嫌だというのもありますが、マスターが知ったところでショックを受けるだけですしね。
「ねぇねぇリオっち~、ローヤルゼリーって美味しいの?」
「すっぱい」
「え? 酸っぱいの?」
「うん」
見た目はとろりとした乳白色の液体で、酸味が強いのが特徴です。
蜂蜜とはまったく異なりますので、ある意味大人の味でしょうね。
「なめる?」
「酸っぱいんだよね?」
「うん」
「……止めとく」
「そう?」
チェリッシュさんが、差し出された瓶に入ったローヤルゼリーを見て、拒否されました。
やはり酸味が強いとなると、躊躇するものなのでしょう。
正しい判断です。あなたにはまだ早いと思われますので。
「アマンダ姉さんは大丈夫?」
「ん~? 別にそこまで苦手な味じゃないわね。だって美容と健康に効果があるんでしょう?」
「うん」
「パンケーキに混ぜれば気にならないしね。リオンが私のために、使ってくれるって言うんだもの。悪いものじゃないのは確かね」
「うん」
アマンダさんがマスターからの好意として受け取っていますが、この方は単純な好意であなたにローヤルゼリーを与えている訳ではないのですよ。
マスターは良く言えば好奇心の塊のような子供っぽさがありますが、考えていることはあまり可愛くありません。
ただやらかしていることが常に好転するという、大変珍しい強運の持ち主なので、他の方であれば災いを招くようなことが、マスターの手にかかれば良い方向へ進むというだけです。
しかし根本的に善良性の高い方なので、本当の意味で悪事を働かないので安心できるのですが。
なので、こっそり混ぜようと考えていたローヤルゼリーも、結局は何をしているのか訊ねられ、素直に本人にバラしております。
隠し事自体が出来ない性格なのでしょうね。聞かれなければ答えませんが、見つかったら正直に白状しますから。
「この化粧水も、私のための特別製なんでしょう?」
「うん」
ローヤルゼリーを混入した美容液や保湿クリームをプレゼントされて、アマンダさんは嬉しそうに微笑みました。
私の鑑定によれば、彼女は人間の中でも飛び抜けて美しい部類とあります。
女性の年齢というものは、ある一定を超えると聞いてはいけないそうなので、あえて言及致しませんけれど。
同年代の方と比べると、全てにおいて高い水準なのは確かです。正に年齢不詳と言っても過言ではないですね。
輝くストロベリーブロンドも、波打つような艶やかさを放っており、まるで女神のようです。この世界に女神というものは存在しませんが。マスターの知識によれば、アマンダさんは女神と称されても何らおかしくはないでしょう。
「いいなぁ~。アタシもそういうのほしぃ~!」
「アンタにはまだ早いわよ。まだ若いんだから」
「そっかなぁ~?」
「アマンダおねーさんも、わかいよー」
「やぁ~だ、ほんと、最近のリオンって口が上手くなってるわね!」
「ほんとーのことだからね」
マスターにおだてられて(本人は正直者なので、おだてているつもりはないのでしょうが)アマンダさんはそれはもうお美しく微笑まれました。
年齢に比べて、若く見られるというのは嬉しいものなのでしょうか?
私にはよく判りませんが、少なくともアマンダさんもマスターも、実年齢以上にお若く見えるらしいです。
特にマスターの場合は、元の世界ではそれなりに成人男性として暮らしていたようですが、こちらでは外見がまるっきり子供にしか見られません。
好奇心の塊のような存在であるので、言動や行動が子供っぽいのは仕方がありませんけれど。考えていることは子供らしくはないのですが。
その子供っぽさによって、クマバチからローヤルゼリーを与えられていることを知らないので。何故自分だけが貰えるのか判っておりません。
他の子供に比べて成長が止まっていると勘違いされ、成長を促進させるべく、クマバチらが好意で憐れな子供にローヤルゼリーを渡していると知ればどうなる事やら。
ローヤルゼリーを与えられ続けた女王蜂は、体の大きさが2~3倍、寿命が30~40倍にもなります。
マスターの身長は―――この世界では子供サイズです。日本とやらでは低身長とまではいかないまでも、まぁ、高くはありませんね。
なので、ローヤルゼリーを食べることにより、大人へと成長させようとクマバチがマスターにだけ与えているのです。
食べたところで身長は伸びないのですけれど。
せいぜい寿命が延びて、若さを保つ程度でしょうか。
ですがそれを伝えれば、私自身がどうなるか判らないので、これは永遠に秘匿すべきことでしょう。
願わくばマスターがこのことに気付きませんようにと、他に興味を惹くことがあればいいなと、私は祈るばかりです。
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