第8話:紫の霧とブドウの使者

果実議会が再び結束を取り戻したその夜、王国の空に紫の霧が立ち込めた。

キウ・ロジックが魔導測定器を確認し、顔をしかめる。


 「……これは、ブドウ族の魔導波だ。しかも、かなり高濃度だ」


 バナナートは空を見上げ、静かに言った。


 「ついに来たか。果物世界の“影”――ブドウ族」


 翌朝、王国の門に一人の使者が現れた。

全身を濃紫のローブで包み、顔の半分を仮面で隠している。


 「我が名はグレープ・シャドウ。ブドウ王国の魔導使者だ」


 彼の声は低く、冷たい。だが、どこか哀しみを帯びていた。


 「我々は、果物世界の均衡を守るため、バナナ王国に“警告”を伝えに来た」


 議会は緊張に包まれる。


 「警告……?」


 「果物の融合は、世界の法則を乱す。甘さと酸っぱさは、混ざりすぎれば腐敗を招く」


 グレープ・シャドウは、果物世界の“魔導均衡”を守るために動いているという。

彼らは、果物族の力が一つに集まりすぎることを危険視していた。


 「我々は、争いを望まない。だが、融合を止めなければ、我々は動く」


 バナナートは静かに言った。


 「ならば、話し合おう。果物は、混ざればジュースになる。腐るかどうかは、心次第だ」


 こうして、ブドウ族との緊張の中、物語は新たな局面へと進む。

グレープ・シャドウは、果実議会に“観察者”として加わることになるが――彼の真の目的は、まだ誰にも知られていなかった。

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