第27回参院選の雑感

武藤勇城

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第27回参院選の雑感

 2025年7月20日。第27回参議院議員通常選挙 (参院選)の投開票が行われました。大まかな結果を言うと、自民党と公明党が大きく議席数を減らし、与党は過半数割れ。国民民主党と参政党が大きく議席数を増やしました。今回は、この選挙結果を受けた個人的な雑感をお話ししたいと思います。


 ひとまず、前回2022年の参院選直後の議席数から、どれだけ変動したのか確認しましょう。以下『政党名』『前回結果』『今回結果』『議席数の差』の順に表記します。尚、参議院選挙は3年に一度行いますが、任期は6年あります。全体の半数が改選、半数が非改選勢力となります。前回選挙の改選勢力はそのまま残留し、今回は前回非改選勢力だった議員が入れ替わります。


自民 119 101 -18

公明  27  21  -6


立憲民主 39 38  -1

日本維新 21 19  -2

共産   11  7  -4

国民民主 10 22 +12

れいわ   5  6  +1

N国    2  1  -1

参政    1 15 +14

社民    1  2  +1

保守    0  2  +2

みらい   0  1  +1

無所属  12 13  +1


 前回選挙後、与党は合計146議席/248議席ありましたが、今回122議席に激減しました。一方、野党は合計102議席から126議席になりました。与党である自民・公明両党が大きく議席数を減らす中、最大野党であった立憲民主党、及び日本維新は全く受け皿になれず、逆に議席数が微減。更には共産党も大幅に減少しました。代わって大躍進したのが国民民主と参政党で、特に参政党は前回選挙直後の1議席 (選挙前勢力としては2議席)から一気に15議席へ、一大野党勢力に変貌を遂げました。

 その他、日本保守党、チームみらいの両党が新しく議席を獲得。特に日本保守党は今回も3パーセント近い得票率があり、前回の衆院選で当選した議員と併せて合計5人の国会議員を擁し、衆参両院で政党要件を全て満たしました。前回選挙後、当選した各議員が国会で質疑に立ち、その様子・動画が多く切り抜かれて拡散、国会での働きぶりが評価された形です。

 この点に関しては参政党も同様なのですが、参政党はより手広く多数の立候補者を擁立、そのまま獲得議席数の差になったものと考えられます。参政党は比例・全国の候補者合計55人でしょうか。一方、保守党は合計9人。候補者数約6倍の差が、そのまま選挙結果にも繋がっているように見受けられます。ここを「良い」と考えるか、「悪い」と考えるかは、人それぞれでしょう。

 参政党は、基本理念さえ一致していれば、細かい部分は各々違う考えを持っています。例えばですが、今回の争点となった経済問題でも、日本の在り方・国家観に関しても、議員間で多少のずれがあるように見えます。保守色が強く、多くの国民は保守政党だと感じていると思いますが、党代表は「保守とは言っていない」と述べています。良く言うなら「器が大きい」、悪く言えば「野合」といったところです。一方の保守党は(党名からも分かる通り)保守色を強く打ち出しており、常々、考え方が完全に一致した「この人ならば」という人材でなければいけない、誰でも良いという訳ではないと述べ、考え方がガッチリ一致する人材集めに腐心しているようです。この方法では、どうあっても少数精鋭にしかならないでしょう。

 両党の方針の違いが、この後、どのように転んでいくのかは注目したいポイントです。特に参政党は、このまま党勢をどんどん拡大していく可能性がある一方、今の自民党のようになって、やがて離散してしまう可能性・リスクも秘めています。


 今回の選挙の大きな争点として、インフレ (物価高)対応がありました。自民党が大敗した原因も、ここにあると見ています。前回の衆院選の時点でも、特に食料品の激しいインフレにより、国民生活が窮乏に向かっている最中でした。今年に入って、自民党は物価高、特にお米のインフレを抑制するため、備蓄米の放出を決定しましたが、対応が遅く、国民の不満は爆発寸前といった状態でした。備蓄米を放出した後も、何ヶ月もJAが抱え込んだまま市場に出さず、不満は高まる一方でした。その後、今年の5月下旬に農相が交代、6月になって新農相がJAを介さず、直接店舗に備蓄米を配布した事で、多少の不満解消に繋がったでしょうか。これがなければ、与党は今回の結果よりも更に酷い大敗北を喫していた可能性があります。


 前回の衆院選、今回の参院選、与党自民党は2連敗しました。根本的な原因は、石破総理によるリベラルな政策にあるでしょう。比較的保守寄りの「元・民主」国民民主と、保守だと考えられている参政党、及び保守党に票が集まり、逆に立憲民主、共産などに全く票が流れていないのが、その証拠です。自民党の保守勢力も、このまま自民党がリベラル化するのであれば、他党への鞍替えという選択肢さえ出て来そうです。自民党が保守勢力をもう一度糾合出来るのか、それとも保守・革新で分裂するのか、この辺りにも注目したいですね。

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