異世界に転生して、目が覚めてすぐに『これはよくある異世界転生か!』ってなるわけねぇだろ!

ユキマル02

第1話 『これはよくある異世界転生か!ってなるわけねぇだろ』




「異世界に転生して、目が覚めてすぐに「これはよくある異世界転生か!」って

ならなくね?」


「ソイツ絶対人生2回目だな」


そんな、くだらない会話をしてるのは俺『山田』と、幼馴染の『美琴』だ。


「いや待て、山田よ。異世界転生の漫画から小説を集めているお前ならば

すぐに受け入れるかもしれないぞ?」


幼馴染の美琴は見た目は美人で、あとは残念な女だ。


こうやってセリフを聞いてるだけだと男にしか思えない。


それが俺の幼馴染だ。


俺たちは今、ベッドの上に寝転がりながら異世界転生の漫画を読んでいる。恋愛感情などない、ドキドキもしない。俺はコイツを女だと思っていないからだ。


「え~、そうかなぁ」


異世界転生先はほとんどファンタジーの世界やゲーム、小説内といった場所が多く、ほとんどが髪の色がカラフルだ。


「俺、自宅に知らないおっさん来るだけでも、ビビるんだけど」


「まず、どういう状況だよ、ソレ」


「あ、水道の点検。母さんなにも話してくれなくてさ「ただいま~」って帰ってきたら、キッチンにガタイのいいおじさんいて、ちょっとスマホに手をかけるとこだった」


「女子か!なんですぐに通報できるようにスマホ持ってんだよ」


「なにかあったら怖いだろ?」


「私なら腹に一発だな」


「お前が通報されるわ」


美琴は空手部主将である。


華奢な体型してるのに強いとかバグ?


お前のほうが異世界転生してきたってレベル。

コイツは地球外生命体だと思う。


あと、コイツの一発はマジで痛い。骨が折れるかと思った。


「私は異世界転生よりも、少年漫画が好きだな~」


「とか言いながら、なんで毎日俺の漫画読みに来てんだよ」


コイツは根っからの少年漫画好きである。


美琴の自宅の本棚には俺TUEEE!もハーレムもいない。夢と汗と友情とロマンが詰まった漫画ばかりが並んでいる。


「最近の少年漫画はつまらん!もっと、こう全員海に出ればいい」


「それ、海賊王じゃん」


美琴が一番好きな漫画は『海賊王』だ。


「なぁ、山田よ。」


「ん~、なに?」


呼ばれて俺は目線だけを美琴に向ける。


「なぜ異世界転生して強い力を手に入れたのに主人公は女に囲われたがる?

もし、私が同じように力を手に入れたら冒険に出るけどな!」


「それ仕事放棄してんじゃん。」


「転生は仕事なのか?」


「えっ、聖女とかそうなんじゃね?転生される理由って、あれだよ。きっと神様かなんかが「面白ことやって!」って神様の暇つぶしのゲームやってるようなもんだろ」


「え?異世界転生ってデスゲーム?」


「神様ゲームだよ」


「地獄のエンジェルゲーム?」


「地獄いらん」


「眠い」


「会話途中で切るのやめて」


とか言いつつ、俺も正直言って眠い。


なんせ、俺たちはつい数時間前まで期末テストをやっていたからだ。


「眠い。私はBL読んだら寝るぞ」


「眠りよりBL優先すんなよ。あとBL本紙袋で持ってくんのやめて?おみやげだと思って紙袋見た母さん固まってたから」


「お母さんには世話になってるからな、おすすめのBL厳選して渡しておくわ」


「絶対やめろ…ふわぁ、俺は眠いから寝るわ」


「この漫画に出てくる間男モブ、山田に見た目が似てる」


「寝る前にいらん情報だわ、ソレ」


おやすみ~そう言って俺は美琴の隣に寝転がった…















「……やった……!成功だ!!」



「神のご加護を…聖女様…!」



「この黒髪の者は?…もしや護衛か?」




…なんだ?なんか騒がしいな。



「…美琴?」



俺は周りの騒がしい音に目を覚ましてー



「おぉ!お目覚めになりましたか!」


…は?


目の前にアニメや漫画で見るような金髪エルフ美女がいた。


「勇者様、聖女様の護衛の者が先にお目覚めになりましたよ」


「おぉ、それはよかった」


そして、続くように中世の騎士のような衣装を着た金髪イケメンが俺の顔を覗き込んでくる。


「聖女様の方は?」


「何度声をかけても目覚めません。深く眠っておられるようです」


「そうですか…」


金髪美人に金髪イケメン、そのイケメンの後ろに立つ体格のいい青髪もイケメンだ


(イケメンばっかでゲシュタルト崩壊しそう)


「護衛の方ですよね?…私の言葉、わかりますか?」


再び金髪美女が俺の近くに膝をつき顔を覗き込んでくる。


そうか、これは…これが?たぶん異世界転生?ってやつなのか??


頭でわかっていても、俺は目に見える情報を処理できない



「…ぁ」


「!みなさん静かに!!護衛の方がお話になります」


俺の声に反応して金髪美女が周りに声をかける



そうだ、これは異世界転生ってやつなんだ



『異世界に転生して、目が覚めてすぐに「これはよくある異世界転生か!」って

ならなくね?』


『いや待て、山田よ。異世界転生の漫画から小説を集めているお前ならば

すぐに受け入れるかもしれないぞ?』



俺の脳裏に、つい数分前にした幼馴染との会話が蘇る…


この世界が俺の100冊以上ある異世界転生漫画のどの世界なのかはわからない。だけど、転生される前に幼馴染とくだらない会話をしていたおかげで意外と冷静に、状況は理解できている。


あとは、異世界転生された主人公が良く言うテンプレの台詞を言えばいいだけだ…!


俺は、顔を上げて金髪美女に目線を向けてこう言ったー







「あっ…あ、えっと…あ、あ、ぁ」



異世界に転生して、目が覚めてすぐに「これはよくある異世界転生か!」って…


なるわけねぇだろうがっ!!!



某映画のカ〇ナシになったわ!当たり前だわ!俺人生一回目だもん!!ただの高校生だもん!!



知らない場所、知らない金髪イケメンに金髪美女


えっ、普通に怖いですけど?

キッチンにいたおっさんと変わらねーよ!


後ろにはゲームでしか見たことないような小さい爺さん複数、え?なに白雪姫の小人たち?


あと周りの建物もなに??すごいピカピカして、目が痛い!!


目の前にいきなり、見たこともねぇ金髪美女と金髪イケメンがただのモブの俺を「護衛のかたですか?」って聞かれて「ここはどこですか?」って俺だって即答したかったよ!!


でも、英語の成績アヒルさんだもん!!


目の前に自分の知り合いでもねぇ、味方かもわかんない外国人いたら


そりゃあ怖いでしょ!?警戒するでしょ!?

日本語だってしゃべれねぇわ!!



以上!心の声でした!!!




「あの、護衛の方は一体どうしたのでしょうか?」


「あちらの世界は文明が進んでいると言われいますからね、我々の古き言葉が伝わっていないのかもしれません」


(いや、ちゃんと伝わってます。綺麗な日本語ですね)


「聖女の方は…あ!聖女の方がお目覚めになられたようです!」


「!?」


おい待て。聖女ってもしかして、あの地球外生命体じゃないよな!?


金髪美女さん!金髪イケメンさん!!ソイツ聖女とは真逆の存在です!!


「ん…ここは?…山田?」


俺の隣で聖女とは程遠い、大の字で寝転がっていた幼馴染はむくっと体を起こすと

目をこすり、すぐ近くにいた金髪イケメンの顔を凝視した。


「おぉ、噂に聞いていたが。なんと美しい聖女なのだろうか!」


「あん?」


(あん?やめろ、ヤンキーか)


「お前、なんか…



私が寝る前に読んでたBLに出てくる攻めキャラの執着系ドS絶〇イケメンの黒川君に似てんな」


「は?しゅう、いけめん、?ぜ…りん??は?」


(起きて早々にこいつは何言ってんだよ!!?イケメンがさっきの俺みたいに言葉を忘れている!!)


「あーでもごめん。私が好きな攻めは、執着系よりお世話系のワンコ攻めなんだわ。ほら、後ろにいる青髪みたいなやつ」


「は?お世話系ワンコ?…おれのこと言ってんのか???」


「お前は転生先のイケメンをBLの攻めに当てはめてんじゃねぇよっ!!」



俺の悲しい叫びが建物に響き渡った…



「あ、護衛の方、喋れたんですね」




これから俺はどうなるのでしょうか?











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