9月14日
あれから毎日あの子のことを思い出しては可愛かったなと思い、またあの世界に行けないかなーと空想することを繰り返していた。
初めて飛ばされてから2回目までが結構間が空いたのもあって、逆に油断していた。
起きたらまた知らない世界にいた。今度は一目瞭然だった。
それ以前に、目覚めた瞬間俺は命の危機を感じた。災害とも言えるほどの暴風雨が吹き荒れていたのだ。
思うように身動きがとれないなか、なんとか近くに見えた洞穴まで逃れた。
するとそこには1人、いや1匹……、いや2匹なのか?とにかく先客がいた。
犬にしては頭が1つ多いが、ケルベロスにしては1つ少ない。首から先が2つある犬のような生き物だった。頭の数以外で違うところといえば、全身が青いことと、機械じみた体の表面をしていること、そして立派な羽が左右に生えていることだった。
「「どうしたんだい」」
ステレオ音響のように、左右から立体的に声が聞こえた。こいつら同時に喋るのか……。
「実は、この世界に迷い込んでしまって」
「「そうか、奇遇だな」」
「奇遇、ですか?」
「「ええ、実は俺らもこの世界に取り残されて困っていたところなんだ」」
「複数扱いなんですね……」
「「ん?」」
「あ、いやなんでもないです!それより、取り残されたって…?」
「「おいおい、あの災害に気づかなかったのか……?もともとはここは6つの地方がある1つの世界だったんだ。ただこの間の、天変地異とも言うべき、かつてない17分間の災厄によって揺さぶられた結果、地続きだった地方が完全に分断されてしまった。それ以来、ここには見ての通りの暴風雨が吹き荒れ続けているってわけだ」」
「大変なんですね……」
「「俺らは青の世界の住人なんだが、たまたまこっちの緑の世界に来てる時に崩壊が来てしまったものだから、今こうして取り残されてしまった。おまけにこの雨のせいで、俺らのリーダーも見失って途方に暮れていたんだ。ところで君はどこの世界の住人なんだ?」」
「えーと……、多分、その6つ……?の世界とは全く違う世界から迷い込んでしまったんですよね」
「「なんだって?じゃあそもそもこの世界の軸外からやってきたっていうのか?」」
「おそらく……」
「「そういうことか、どうりでこの惨状を知らないわけだ。しかしそれなら、俺らで助けてやることができるかもしれない」」
「本当ですか?」
「「これを使うといい。俺らも詳しくは知らないんだが、この世界と別の軸の世界線についての噂を聞いたことがある。それを介しているのがその紙らしい。本来その世界同士は直接交わるべきではないから、俺らがそれを使ってそっちに行くことはできないのだが、君を向こうに帰す分には構わないだろう」」
そう言ってその犬(面倒なので便宜上そう呼ぶことにした)はまた1枚の紙切れを手渡した。俺はそれを受け取ると、言われる前に目を瞑った。
「「大変な時にこっちに来てしまって君も災難だったな。もしできるなら、そっちの世界からこっちの世界の行方を見守っていてくれ。ではな」」
目が覚めるとまたいつもの部屋に戻ってきた。今日のが今まで飛ばされた先の中で一番酷かったな。優しい犬に会えたおかげでなんとかなったけど、あやうく死にかけたし。やっぱりにこの世界にいるままなことに越したことはないと思い直した。
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