神様なのに新人です!俺と女神と、時々おっさん。世界創造はじめました

とりもも

Episode1→天界にて、目覚める

目を覚ましたら、白い空間にいた。


雲のようにふかふかした床。どこまでも広がる青い空。鳥の声ひとつしない、完璧すぎる静寂。そして——目の前には、神々しいというより、妙に生活感のある女性が立っていた。


「ようこそ、天界へ」


そう言って微笑む彼女の声は澄んでいたけれど、手に持っていたのは謎のメモ帳と、使い込まれたペン。神っぽい装飾のある服の袖からは、何枚かのメモ用紙がはみ出している。


……え、天界?


「驚かないでくださいね。あなたは選ばれたのです。世界を創る者として」


意味がわからない。というか、まず自分の名前すら思い出せない。


「あなたは今日から”創造神見習い”です。指導担当は私です。よろしくお願いしますね」


名乗りもせずにそう言って、彼女は深々と頭を下げた。無駄に丁寧な口調と、ちょっと抜けた空気。そのギャップが、不安をあおる。


「……えっと、俺の名前は?」


「名前、ですか? あ、えーと……ええと……うーん……では、今日からあなたは“ソウ”という名前にしましょう」


「えっ、即決!?」


「この世界の“創る”という概念にちなんで、です。わかりやすくて、いい名前でしょう?」


……軽くない?


「それでは、さっそく“創造”の準備に入りましょうか。まずは、創る世界の土台を決めるところからです!」


何から何まで急展開だ。なのに、妙に楽しそうな彼女の様子を見ていると、ツッコむ気力さえ削られていく。


俺はどうしてここに来たんだろう。

名前すら他人に決められて、気づけば「神見習い」なんて肩書を押しつけられて。


でも……まぁ、悪くはない。


雲の上に立って、まだ見ぬ世界を創るだなんて。

ゲームだったらワクワクする展開だ。きっと、これもそんな感じなのだろう。たぶん。


そして、そんな俺の背後で。


「やあやあ、新入りか? ようこそ天界へ!」


陽気な声とともに現れたのは、翼をバサッと広げた中年の男。筋肉質な体に、やけにラフな服装。神々しさのカケラもない。


「俺は“おじさん”って呼ばれてる! よろしくな!」


……世界創造、前途多難な予感しかしない。

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