ZeR0

東井タカヒロ

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 人はよく言う、0を1にするのは難しいと。

 なら――1を0にするのはどれほど簡単なのだろうか?


 芸術の授業中にふと、出てきたこの疑問。

 すぐに答えが出そうで、出ない。


 0から1を生み出す天才は少し見渡せば多くいるが、1を0にした人はいないんじゃないのか?

 それって、元々手に入れていたものを捨てるという行為だろ?

 それを出来る人間は果たして、どれほどいるのだろうか。

 そして、その人達はどんな道を歩んだのだろうか?


 「芸術は足し算ばかりではなく、引き算も大切なんですよー」

 先生の授業内容が小耳に挟む。


 引き算……1から1を引けば0になる。

 木材に粘土を付けてる。これは0を1にしている。

 木材を削る。これは1を0にしている?

 いや、多分違うだろう。


 最初に友達を作るのは難しいし、友人が一度出来れば、その友人を忘れることも、思い出がなくなることもない。


 0から1にするのが難しければ、1を0にするもの、また、難しいのだろう。

 有ったものを、完全に無くすことはそれほどまでに難しいのか。


「そこ!授業に集中する!」

「へーい」


 そう、難しいんだ。あるものを無くすなんて。

 僕の欠点を無くすなんて――たった1を0にするだけなのに、どうしてこんなに難しいのか。

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