ねぇ、どうしよう…-渋滞中、限界なのに言えなくて-

五平

第1話 『ねぇ、どうしよう…まだ言えない』

キャラクター

莉子(Riko):20代女性。几帳面で完璧主義。

悠人(Yuto):20代男性。莉子の彼氏。穏やかで優しい。


場所

高速道路を走行中の車内


SE:穏やかな車のエンジン音が重低音で響き渡る。

微かにカーラジオのBGMが流れている。

曲調はポップで軽快だが、遠くで鳴っているような、

どこか心に届きにくい感覚。

シートが微かに揺れる車の振動音。


莉子「ねぇ、悠人くん、運転うまいね。

全然疲れないわ。助手席でこんなにリラックスできるなんて、

悠人くんの運転の腕前のおかげだよ。

本当に安心しきってるもん。」


悠人「そうか?莉子が隣にいるからさ。

俺も安心して運転できるよ。

莉子がいてくれるだけで、長距離運転も全然苦にならないんだ。

むしろ、俺の方が莉子に感謝してるくらいだよ。」


SE:莉子がカバンの中を探る、微かな衣擦れの音。

カチャリ、と小さな鈴のキーホルダーが鳴る澄んだ音。

莉子の指が、その鈴の表面をそっとなぞる優しい衣擦れの音。


莉子「もう、悠人くんたら、口が上手なんだから。

そういう甘い言葉、どこで覚えたの?ねぇ。

カフェラテも、私が甘めが好きなの知ってて、

私に合わせて甘くしてくれたの、知ってるんだからね?

そういう細やかな気遣いが、ほんとずるいんだから、もう。」


悠人「ばれたか。まいったな。

でも、莉子が喜んでくれたら、それでいいんだ。

それが一番だよ。莉子が笑顔でいてくれるのが、

俺の最高の喜びだからね。これからも、ずっと。」


SE:ペットボトルの蓋をひねる、カチャリという小さな音。

水がコポコポと勢いよく、半分ほど飲まれる音。

莉子が深く、大きく息を吐き出す音。


莉子「あー、美味しい!喉乾いてたわー。

運転中って、意外と喉が渇くものなのね。

だからついつい、一気にたくさん飲んじゃった。」


悠人「莉子を見て、優しい眼差しで笑う。

そんなに一気に飲んだら、またすぐトイレ行きたくなるよ?

カフェで済ませたばかりだけど、念のために言っておこうと思ってね。

大丈夫か?」


莉子「笑顔を保ちつつ、微かな「んっ…」という、

ごく小さな声とともに、焦りの色がわずかに滲む。

大丈夫大丈夫!さっきカフェで完璧にトイレ行ったし!

もうバッチリだから、心配いらないよ!はは…。

心の声:んっ…でも、なんで今、こんなタイミングで…?

ほんの微かな尿意の芽生えが、確かな感覚として主張し始めた。

まさか、こんなに早く来るとは思わなかった。

出発前に冷たい飲み物をがぶ飲みしたのが、

完全に裏目に出た…最悪。嫌な予感がする…。」


SE:莉子がシートの上で微かにモゾモゾと座り直す衣擦れの音。

シートがミシミシ、と微かに軋む音。

莉子の視線が、無意識のうちに下腹部へと向かう、

焦燥感を含んだ視線移動の無音。

指先が、シートの生地を掴むように微かに震え始める衣擦れの音。

莉子が足を組む音、または股間をそっと手で押さえる衣擦れの音。

莉子の喉が、乾いた音を立てて「ごくり」と鳴る。

心臓の鼓動が、莉子自身の耳にだけ小さく、

しかし確実に「ドクン、ドクン」と聞こえ始めるASMR効果。


ト書き:莉子は平静を装おうと無理に笑顔を保とうとするが、

その目は不安げに泳ぎ、全身から落ち着きのなさがにじみ出る。

腹部の奥で、微かな違和感がじわりじわりと、

しかし確実に存在感を増していく。

これは気のせいでは終わらない予感。


莉子「心の声:気のせい、気のせい。まだ大丈夫。

この程度の感覚なら、どうってことないはず。

私、いつも完璧でいたいのに、こんな生理現象で焦ってるなんて、

悠人くんにバレたら恥ずかしい…考えすぎよ、きっと。

でも、この膀胱の奥からくる、じわっとした感覚…

これは、今までとは違う…。」


SE:カーラジオのBGMの音量が、莉子の内心の焦燥に合わせるように、

ごく微かに下がる。

莉子が無理に窓の外の景色に目を向ける衣擦れの音と、

窓の外をぼんやりと見つめる視線移動の無音。


莉子「明るい声を保とうとしながらも、わずかに硬く、

作り物めいた声で。

ねぇ、悠人くん、あの雲の形、見て!

なんか動物みたいじゃない?ほら、あの白い塊。

あれ、何の動物に見える?私には、なんだか可愛らしい形に見えるんだけど…

ちょっと、変わってるかな?」


悠人「莉子の方をちらりと見て、少し首を傾げる、穏やかな声で。

ああ、あれか。うーん、言われてみれば…犬、かな?

柴犬みたいな形をしてるな。

莉子って、変なとこで我慢強いよな。

遠慮せずに言えばいいのに(笑)」


莉子「心の声:……今、それ言う…?

わかってない、全然わかってない……!」


SE:莉子の息が、ごく微かに詰まる音。

莉子が無意識に太ももをぎゅっと閉じ、膝を揃える衣擦れの音。

シートの微かな軋み音が、莉子の小さな動きに合わせて鳴る。

莉子の心臓の鼓動が、先ほどよりも少し速く、

そして確実に「ドクン、ドクン、ドクン」と大きく聞こえるASMR効果。

莉子の喉から、再び焦り混じりの「ごくり」という音がする。

莉子の指が、一瞬だけシートベルトのバックルに伸びかけて、

小さく「カチャ…」という金具の微かな音がする。


莉子「心の声:だめ、今は…まだ言わない。平気なふり、続けなきゃ…。

犬…か。悠人くんは、いつもなんでも楽しそうに見てくれる。

そんな悠人くんの前で、こんな情けない姿、絶対に、絶対に、見せられない。

完璧な自分でいたいんだから…。

このじわじわくる感じ、気のせいなんかじゃない。

膀胱の奥で、確かに何かが主張し始めてる…

まるで、膀胱が呼吸してるみたいに、意識を奪われる。

ああ、どうしよう…。」


SE:車内全体が、先ほどよりも一段と静けさを増す

(BGMの音量がさらに微かに下がり、ほぼ聞こえない状態に)。

遠くで、ごく微かに、車のクラクションが短く、

しかし連続して聞こえる(莉子にはそれが、

まるで警報のように嫌なプレッシャーとして響く)。


莉子「微かな「んっ…」という、苦悶に満ちた声とともに、

焦りの色がはっきりと混じり始める。声がわずかに上ずる。

あ、なんか…冷たい飲み物飲みすぎちゃったかも…

お腹のあたりが、少しだけ…ううん、もうはっきり重い気がするの…。

ああ、どうしよう…。なんだか、変な汗が出てきたみたい。」


悠人「莉子の顔色をちらりと見て、少しだけ心配そうな声で、

ハンドルを握り直す微かな革の擦れる音。

もうすぐだよ。次の休憩所まで、あと十分くらいかな。

そんなに喉乾いたの?さっき飲んだばかりだろ?

もししんどかったら、無理せず言ってくれていいんだからね。

遠慮しないでくれ。」


SE:莉子の指先が、無意識にシートの生地をぎゅっと掴む衣擦れの音。

指の関節が白くなる。

チリン、チリン、と鈴のキーホルダーが莉子の手の震えに合わせて、

焦燥感を煽るように微かに、しかし頻繁に鳴る。

莉子の呼吸が、わずかに浅く、そして不規則になる音。

心臓の鼓動が「ドクン、ドクン、ドクン、ドクン」とさらに速まるASMR効果。


莉子「心の声:あと十分…。この重さ、本当に耐えられるの…?

いや、気のせいなんかじゃない。これは、本格的にヤバいかも…。

どうしよう、本当に…膀胱が、少しずつ、しかし確実に、重くなる…

このじわじわくる感じ、もう気のせいなんかじゃない。

まるで、お腹の中で何かが蠢いているみたいに、不快な圧迫感が増していく。

早く、早くこの渋滞、動いて…!

もう、限界に近づいてる。このままじゃ、完璧な私じゃなくなる…。


SE:車の無線アナウンスが不意に割り込む、ノイズ混じり。


無線アナウンス「前方で事故処理のため、現在、

〇〇パーキングエリアへの出口は一時閉鎖されています。

通過見込みは……未定です」


SE:短く「プツッ」と無線の切れる音。

莉子の指先が震え、膝が擦れ合う小さな衣擦れの音。

呼吸が止まり、静寂だけが支配する。


莉子「心の声:……嘘でしょ。そんなのって……。」


莉子「…………え?」


(フェードアウト)

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