第8話  家族旅行

「ねぇ!和夫かずおさんっ!家族みんなで新婚旅行でも行きませんか?」

「それもそうだね。二人で旅行も考えてはいたけど、せっかくこんなに素敵な巡り合わせがあったんだから皆んなで旅行もいいかもね」


 家族6人ダイニングで食卓を囲み他愛もない会話が広がる夜。

 家族皆んなで家族旅行という義母の亜希子さんの提案に父さんは『それはいいね!』とグットサイン。


 その頃の頭は昨日の衝撃的な出来事にまだ困惑していた。


「……」


 無言で紫苑しおんにハグをされたっ!!


 ハグというよりもギュッー!!の方が正しいのか。それは置いといて。

 まずなんで紫苑はあの時、僕にハグをしたのか。


 肌恋しい、男性の温もりが必要なお年頃だというのか!? でもいつも完璧でクールで学校ではあまり話しかけてもこない紫苑がまさかそんな……。


 それとも最近の妹というのは『お兄ちゃん!ハグしたいっ!』って感じなのか???

 でもそれなら三女の伊織いおりの方がそういうことをする可能性は高い。


 紫苑は妹だけど、歳が同じだし、しっかりしているし。あんまり妹として見れないんだよなぁ。別に女性として、恋愛感情があるわけでもないが。


「わたしは良いと思いますよ?和夫さんとお母さんがみんなで旅行がしたいっていうなら……」

「紫苑ちゃん、僕のことは無理せずお父さんって呼んでくれてもいいんだよ。でも抵抗があるなら無理にとも言わないけどね」

「ありがとうございます。お父さん」

「とても素直で可愛くてお父さん嬉しいなぁ。三姉妹と尚人も仲が良くて本当に良かった」


 仲が良くて……。


「……」


 あぁ!!もう、何なんだよ!女子って未知すぎてわかんねぇ〜〜!!!!!



 そんなこんなで結局、新婚旅行兼家族旅行は父母どちらも会社勤めということもあって国内旅行に決定となった。


 国内とはなったものの……。


「やったぁぁぁあああぁあ!!!!!!!!ついたよ!沖縄!!!!」

「ちょっと、天音。大きな声出さないでよ、まだ空港だよ!」


 沖縄に来てしまった……。


 沖縄に着いて天音はテンション爆上げでそれを抑制しようとする紫苑。

 でも沖縄、素晴らしい。普段、海の近くに来ることもあまりないし!沖縄といえば、白い砂浜、南国、リゾート、温暖な気候、そして沖縄料理!!!!


 尚人:「なんかさ!ジンベイザメやマンタを近くで見れる体験とかもしてるみたいだよー!!」

 天音:「なんだか尚人くん楽しそうだね、テンション高!」

 紫苑:「そうね」


 紫苑と天音のテンションより僕のテンションの方が上がっているだと!?今日はあくまで父さんと亜希子さんの新婚旅行!二人が一番楽しんで帰ることが目的の旅行なんだ。気をつけないと。


 それにまだあの紫苑にされたハグのことも少し気になる。


 天音:「へー!サーターアンダーギーおいしそーぅ!!!!!!」

 紫苑:「海ぶどうも食べてみたいわ!」

 尚人:「いや、人のこと言えないくらい同じじゃん!!!!」


 それと紫苑はもう何も僕に感じていない???? いや、まずハグをされた日もその次の日も、別に何ともない様子だったけどさ!


「尚人くんはこの旅行いくら持ってきたの?」

「えーっと、6万ぐらいかな?」

「え!!!!意外とお金持ちじゃん!!」

「そういう天音はいくら持って来たんだよ」

「わたしはねぇ。ぐふっ、10万円だよー」


 じゅ、じゅ、じゅ、じゅ、十万!??????


「な、なんでそんなに持って来たんだよ??そんなに使わなくないか???」

「いやいや、シークワーサーとか箱買いしたいしいるでしょ!!このくらい!」

「何でそんなに……」

「んー? あぁ、わたしがどうしてこんなにもお金持ちかって?それはね!」

「S N Sで小遣い稼ぎしてるんだろ? クラスのみんなが雨坂天音うさかあまねだった時からよく写真で有名なんだと騒いでたから知ってるよ」

「私ってもしかして有名人??? へへへへ……」

「でもS N Sには気をつけるんだぞ〜、最近何かとおじさん構文使った二十歳ハタチなりすましエロオヤジが沢山いるんだから」

「なんか、尚人くんが急にお兄さん感を出してきてる」

「心配してるの!!!それに一応?、兄だし……」

「……」

「どうした、顔赤いけど熱か?」

「し、しらなぁぁーいッ!!!!!!」


 何だよ、人が心配してるというのに。だって10万円ってバイトもしてない子にはすごい大金だろ……。お年玉かき集めてやっと僕の全財産だわ!


 それにさっきのあの顔……。なんか僕、恥ずかしいことでも言ったかな。


「そうよぉー、天音はおっちょこちょいで騙されやすいんだから気をつけるのよー」


 亜希子さんも笑顔でそう言う。


 優しいけどやっぱりちゃんと三姉妹のお母さんなんだって実感する。


 僕は今回、6万という旅行に親がいながらも、ものすごい大金を持ってきた訳は、秀馬しゅうまとその他の、僕がハーレムであることに羨んでいる男たちへのお土産を買うためである。


 ここでなるべく課金して奴らのご機嫌を取っておかないと、後々面倒くさい。


紫苑しおんはいくら持ってきたーぁーの!!!」

「わたしはあまり買わないし。でもまぁ、6万かな」


 ん!???????


「いや、十分だわ!!!!」


 こうして僕ら、いや。父さんと亜希子さん(母さん)の新婚旅行が沖縄で開幕した。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る