いつも見てくれた君へ
東井タカヒロ
タツナミソウ
その日はいつもとその時まで変わらない日常だった。
いつものように登校して、授業があって……でもその日は違った。
図書委員会の仕事で本棚を整理していると、うっかり本棚の本を落としてしまった。
落とした本を拾おうとした時だった。君が本を拾ってくれた。
こんな地味で陰気な私なのに。誰からも心配なんてされた事なかったし、ましてや手伝ってくれる事なんて――。
「大丈夫かい?」
「は、はい。ありがとうございます」
「委員長として当然だよ」
あぁ、期待に胸を膨らませた私が馬鹿だった。
そうだよね。こんな女に気をかけるなんてありえないもんね。
そうして本を全て本棚に戻すし終えて帰宅した。
「はぁ……」
でも少しだけ心残りがある。
何故か助けてくれた事を忘れられない。
私の数少ない助けられたからかも知れないし、もしかしたら――いや、そんな訳ないよね。
明日ちゃんとお礼言よう。
そう思いながら眠りについた。
その日はあいにくの雪の日だった。
白銀の粉が宙に舞っている。
道路は白くなり、まるで別世界にいるような気分にさせてくれた。
教室に入り、佐久間に声をかけようとしたが佐久間君の周りには友達らしき人がいて声をかけられなかった。
その後何度も声をかけようとしたが無理だった。いつしか私はお礼を言う事から別のなにかの感情に変化していた。
それに比例するかのように佐久間君と会える残り時間も少なってきた。
卒業式のリハーサルが始まった。雪は止み、桜がつぼみをつけ始める季節になった。
このままこの気持ちをうち挙げないままお別れになるのかとなると少し焦りを感じた。
そして遂に二人きりになる時間が出来た。
「あ、あの……」
「なんだい?」
「この前は本を拾ってくれてありがとうございます」
言った。でもすっきりはしない。私の中のこの感情を伝えられてない。
「あ――」
遮るように
「先輩!わからないところがあるんですけど……」
またチャンスを逃してしまった。
私の中で何かが弾ける音がした。
私は佐久間君に胸が弾ける思いで告白した。
返事はOkだった。告白は成功した。でも佐久間君と過ごせる時間はもう……。
卒業式前日。私は楽しい学校生活を満喫した。佐久間君ともっと早く出会えていれば……。
帰りの時、教科書をカバンに詰める佐久間君を横目でちら見した後、早足で図書室を後にした。
真実しら言えず消えるなんて最低だよね。
一言だけ君に言いたかった。「ごめんね」と、。
その一言が言えなくて帰り支度の君を送る。
私はその日を最後に学校から姿を消した。
「私の中の佐久間君もお別れだね」
いつも見てくれた君へ 東井タカヒロ @touitakahiro
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