偶然じゃない気がした日
輝人
第1話 偶然なんかじゃないみたいな、日曜日
休日の昼過ぎ。
人混みを避けて、少し遅めの時間に電車に乗った。
車内はそこまで混んでなくて、ちょうど空いていた二人掛けの席に腰を下ろす。
すると、次の駅で乗ってきたのは――
「…え、輝人?」
「華乃…?」
驚いた顔のまま、華乃は俺の隣にちょこんと座った。
中学卒業して以来、華乃とは会っていなかった。それのせいか、華乃は大人ぽっくて、それでいてどこか無防備だった。
「なんか…偶然すぎて笑っちゃうね。」
「うん。でもちょっと、嬉しい。」
静かに発車する電車。
窓の外には、どこまでも続く午後の光。
沈黙も、今日は不思議と心地よかった。
しばらくして――
「…ねえ、ちょっとだけ…いい?」
そう言うと華乃は、俺の肩にもたれかかってきた。
一瞬、心臓が跳ねた。
でも、俺は動かずにそのまま受け止めた。
「なんか、こうやってると…落ち着く。」
そう呟いた声は、小さくて、震えていた。
俺も、何も言えなかった。ただ、嬉しかった。
そのまま数駅。
俺たちは肩を寄せ合って揺られていた。
そして――
ふと気づくと、華乃の指先が、俺の手にそっと触れていた。
驚いたその瞬間。
「…ぎゅっ。」
彼女の手が、俺の手をしっかり握ってきた。
目が合う。
「…ダメかな。」
「…ダメじゃない。」
その言葉で、また少しだけ距離が縮まった気がした。
たぶん偶然じゃない。
今日、俺たちは「一緒になる日」だったんだ。
そんなふうに思えるくらい、心が温かくなっていた。
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