第3話

霧が出ている。

鬱蒼とした緑がより濃くなってきた頃車を降り、ブルーシートに包んだ荷物を下ろした。

助手席に座っているもう1人を呼び、運ぶのを手伝わせる。

生ぬるいような肌寒いような、どちらとも言えない空気がなんとも不快だ。


山をしばらく歩く。

会話は無い。相手も何も言わず靴の音、それと鳥の声だけが響く。

少し開けた場所に出る。荷物を下ろし、ブルーシートを剥がした。


死体。死んでから時間が経過し、固くなったそれは不気味としか言いようがない。

道具を車から持ってきていないことを思い出し、黙り込んでいる男に取りに行かせた。


男とは良い関係とは言い難い。

少なくとも自分に良い印象は微塵たりとも持ってはいないだろう。


男がシャベルを2本持ってきた。

地面に突き刺そうとするが、中々固く刺さらない。

誤算だった。


しばらく周りの地面で柔らかそうな所を探すがどこも土が固く掘れそうにない。

男に呼ばれ、行ってみると土が柔らかい場所があったようだ。

そこを掘り、土を外に運び出す。

しばらくすると、シャベルの先端に当たるものがあった。


それは、靴の底のようだった。

だが、掘り進める。徐々に全貌が明らかになる。

それは、死体だった。完全に白骨化したそれは、ボロボロになった服を身に纏い、静かに横たわっていた。


完全に骨となった死体を運び出す事は、抵抗感がありしなかった。

しゃがみ込んで穴の底にあるそれを眺める。

どうするか。どうせなら一緒に埋めてしまうか?

そう考えたところで、


グシャ。妙な音が聞こえた。


シャベルで殴られた。そう理解するのに3秒ほどの時間を要し、もう一発脳天に衝撃が走る。

横に転がり、立とうとするが体にうまく力が入らない。

遅れて頭を痛みが埋め尽くす。


痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


もはや何もわからなくなる。地面に這いくつばり、手足を動かすことすらできない。

何度も頭を殴られ、死へと一直線に向かう。

最後に見たのは花びらだった。白く、黒っぽい地面に落ちた花びらが目に焼き付いた。


そして頭から流れた血が目の中に入り、視界が真っ暗になった後。

グシャリ。意識は途切れた。

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