第15話 夫婦のデート 後編

「は?あなたこそ、誰ですか?どうして、そんなに先輩とべったりくっついてるんですか?」

「いきなり、何?失礼でしょ?しかも、麗杜君とどんな関係よ!」

「はぁ?あなたには関係ないことですけど」

 何故か、智華さんと沙莉の間で火花が散っているように見えるのはなぜだろう。いや、こんな事を考えている場合ではないっ!

「ちょ!2人ともここ!お店!一旦外出て話そ」

 俺がそう言って2人を宥(なだ)めるとしゅんとして黙ってしまった。その間に俺は沙莉の分のお会計を済ませて、2人とともに外へ出た。

「す、すみません…でした…」

「ご、ごめんなさい…先輩…」

 全く、なんでこうなったんだろう。沙莉と智華さんは面識がないはずなのに…

「そう言えば、なんで2人はそんなにバチバチしてるの?」

「それは…ね」

「私達が恋のライバルだからです。」

「はひ?」

 (え?何?ど、どどどういう事!?) 

 斜め上の質問すぎて俺は意表を突かれ変な声が出てしまった。

「私、初めていいますけど先輩のこと始めて見たときから、好きでした」

「そ、それって…一目惚れってやつ?」

「はい、そうですね」

「でも、先輩に…お邪魔虫が着いていたなんて」

「誰がお邪魔虫よ!全く…」

 智華さんがこんなに声を荒げているのは初めて見たのだが…

「ちょっと!2人とも落ち着いて〜!」

 2人を制止するのは大変だ。しかも、沙莉に関しては俺が結婚しているとは気付かないだろう。というよりかは、普通高校生は結婚しないので気付くもクソもないが…。

「で、でも、麗杜君…!私は…」

 何かを言おうとした智華さんだったが、なんでもないと言い、黙ってしまった。

「いいですか?また後日話しましょう」

「うん、わかったよ」

 どうやら、後日2人で話し合うようだ。それがいいのだろうか?俺もよくはわからない。この日は沙莉とは別れて家路についた。

「……智華さん…」

「ん?どうしたの?」

「俺は女子のことはわからない。だけど…いや、どう言ったらわからないけど…」

「ううん、そんなことはいいよ。だけど、沙莉…?ちゃんと話をしないと今後、ダメだと思ったから…」

「そう…だったら、俺は止めない。連絡先は交換したの?」

「うん、一応…」

「いいよ、俺は2人がずっとギスギスしたままなのは嫌だから」

「ありがと、麗杜君。やっぱり優しいね」

 今後、智華さんと沙莉がどうなるかはわからない。だが、2人とも大切な人たちなので仲良くなってほしい。俺のこの願いは2人に届くのだろうか。俺は沈みゆく太陽にそう、心のなかで言った。

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