第10話 何気ない日常

始業式から数日が経った。俺は新しいクラスに馴染もうとしている。俺はそこまで人との会話が得意ではないため、クラスメイトたちと話さないと完全なコミュ障になってしまうかもしれないからだ。完全なコミュ障とは一体何だ?自分でもよくわからないが……


 それはさておき、智華さんも相変わらず俺のために尽くしてくれているが、自分の勉強のことを疎かにしていないかが心配だ。


 その日の夕食時


「智華さん、勉強してる?」


「ううん、まだしてないよ」


「時間がなければ、そこまで家事を全部やる必要はないよ、できる範囲で俺も家事を手伝うから」


「それじゃあ、少し甘えさせてもらうね」


「俺が手伝えるのは基本的に土日しかないけど、それだけでいいなら」


「うん、それだけでありがたいから」


 こういう風にゆっくり会話できるときは夕食時しかない。


 話していると、話は部活の話になった。


「まだ、部活って始まってないよね」


「うん、来週ぐらいからかな」


「新入生はどうなの?部活、入ってきそう?」


「う〜ん、どうだろう?まだ、わからないけど新入生は170人ぐらい入ってきたらしいけど」


「そうなんだ、じゃあ数人でも入って来ればそれでいいからね」


「うん、そうだね」


 俺が部長になり、部活は俺が主導となって引っ張っていかなければならない。文芸部だが、顧問の先生がいて智華さんがいたときは俺入れて2人だけだった。そうして、智華さんが卒業したので俺一人になった。だから、文芸部に誰か入ってくれないと廃部になってしまう。今、文芸部は大ピンチだ。


「高橋先生大丈夫かな?」


「大丈夫さ、俺が部員を入れてみせるっ!!」


翌日の昼休み


「先生っ!!」


「おっと、どうしましたか?そんなに急いで」


「文芸部希望の子って何人かいます?」


「ええ、一人いますよ」


 今話したのが、高橋先生だ。現代文の先生で眼鏡をかけ黒髪の短髪でいかにも真面目といった先生だ。それに、誰に対しても敬語というところも真面目と言ったところだろう。


「マジっすか!?」


「職員室で大きな声を出さないでください。」


「あ、はいすみません」


 おっと、失敬。思わず大きな声を出してしまった。


「ですが、この件に関しては俺も嬉しいですよ。村上さんが卒業して、荒崎君が一人になって廃部になってしまう危機を救ってくれた救世主なので」


「一度、その子に会ってきてもいいですか?」


「ええ、構いませんよ、挨拶は大切ですからね」


「では、その子の情報を教えてくれますか?」


「はい、こちらですね葉山沙莉はやまさりさん1年3組の子ですね」


「葉山…ですねわかりました、行ってきます」


「はい、行ってらしゃい荒崎君」


 高橋先生に言われて、職員室を後にし、俺はその足で1年生の教室に向かった。


「1年3組…ここだ」


「葉山さんはいるか?」


 俺が来たことで、何故か1年生の教室がどよめいていた。


「えっと…私に何か?」


「君が…文芸部に入部希望の葉山さんだね?」


 葉山沙莉。色白で顔立ちが整っており、スタイルも良く、もうすでに何人かに告白されているようだ。


「はい、そうですが…荒崎先輩ですね、どうもはじめまして知っているとは思いますが、葉山沙莉です。呼び方は別になんでもいいですよ」


「じゃあ、沙莉でいい?」


「いいですよ」


「それで、なんで文芸部に入ろうって思ったの?」


「それはですね、中学生の頃から私は小説を読むのが好きで、私もいつかは小説を書きたいと思い始めました。」


 これは…優秀な人材だ…!この人材を失ってはならない。


「沙莉…、君の熱意は受け取った。この部には君みたいな人材が必要だ。是非、俺から頼むよ」


「はい!ありがとうございます!先輩!」


 とりあえず、これで安心だ。文芸部は


廃部にならずに済んだ。これでこの部活は安泰だ。


「先輩、これからよろしくお願いします」


 こうして、部登録までは日にちは未だあるが俺に後輩ができた。

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