第3話 一緒に買い物

智華さんがうちに来て一夜が開けた。智華さんは終始申し訳なさそうだった。


 だが、俺も好きな人と一つ屋根の下で暮らすとなると眠れなかった。


 翌朝。俺が起きるとキッチンからいい匂いが漂ってきた。卵焼きのいい匂いと味噌汁の匂いが同時に俺の鼻腔に入ってきた。


(智華さん?)


 起きてリビングへ行くと案の定、智華さんが朝ごはんを作ってくれていた。


「おはようございます、智華さん。朝食は俺が作るつもりだったんですが」


「ううん、麗杜君の家に住まわせてもらってるのに何もしないのは申し訳ないから…だから、朝ご飯だけじゃなくて3食作らせて」


 そう、言ってくれているのでここは智華さんのご厚意に甘えよう。


「はい、よろしくお願いします。」


「はい、お願いされました!」


 智華さんははっきり言うと、 料理が盛り付けられたおさらをテーブルへと運んでいた。


「俺も手伝います」


「ありがとう」


 2人で料理を運び、運び終わったところで椅子に座り、一緒に「いただきます」と言って、食べ始めた。こうして考えると、家で久々に人と食べた気がする。


「味噌汁、美味しい…」


「ふふっ、良かった」


 智華さんが作った味噌汁は出汁が効いていて、具もわかめ、豆腐、長ネギと言ったザ・王道といった具が俺が一番好きな具で、卵焼きも卵がふんわりとしていて甘じょっく、甘すぎずしょっぱすぎないこの塩梅もこの味も俺の好みだ。


「美味いっす!智華さん!」


「良かった、私もね、君の味の好みがわからなかったし、アレルギーがあったらどうしようって思ってたけど麗杜君が気持ちよさそうに寝ているから起こせなかったんだよね」


「そうだったんですね、ありがとうございます。俺はアレルギーもないですし、嫌いなものもないので、智華さんが作るもので俺は満足ですよ」


「ありがとう、話変わるけど今日買いに行くんだよね、服とか私の日用品をね」


「そうですね、うちは母さんのもありますけど、背丈が違ったりするのできつかったりするので、買いましょう」


「えっと、ここから近くって行ったらエオンモールだよね」


 ここは、まぁまぁ田舎なのでやはりここはエオンモールしかないのだ。


「もう、そこしかないですよね」


「そうだね、行こっか」


 俺達は、食べ終わった食器を洗い、出かける準備をして鍵をかけ、家を出た。マンションから出ると、雲一つない晴天で気持ちのいい空模様だ。


「晴れてるね、それに暖かい」


「そうですね、春の陽気って和みますよね」


 こうした、他愛のない会話をしながら歩いた。


「そういえば、智華さん料理上手っすよね?」


 俺は気になる、疑問を彼女に聞いてみた。


「うん、昔から作ってたの」


「昔から?」


「そう、小学生の頃から作ってたから」


「そ、それって…」


「そう、親は帰ってこなかったの、今考えるとパチンコに行ったりしてたと思う。」


「も、もしかして、親に大学の内定を取り消されたのって…」


「私に稼がせて、そのお金でギャンブルをしようと企んでいるの」


 やっぱり、智華さんは家庭環境に問題があったようだ。こう聞くと、ネグレクトのような物もあったようだ。


「この問題…俺にも、関わらせてください。絶対、あなたを救います。」


 俺は、彼女を助けようと決めた。


「でも、まずは買い物をしましょう」


 智華さんを置き去りになってしまったが、買い物をするとしよう。


「あ、あの…麗杜君!?ちょっと置いてかないでよ〜!!」




数十分後




「こ、こんなに買って大丈夫なの?」


「いえ、気にしないでください。お金はたくさんあるので」


 十数万使ったが、端金にすぎない。


それと、智華さんの家庭事情を改善しなければ彼女は…どうなってしまうのだろうか

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