卒業した先輩を拾ったら幸せになった

在原銀雅

第1章

第1話 仲のいい先輩

…!どうして?君が!?」

「それはこっちのセリフですよ、先輩」

3月のある日、荒崎麗杜(あらさきれいと)がラブコメ展開になっているのかそれは数日前に遡る。


 3月上旬 俺の通う高校の卒業式があった。卒業式は3年生が新たな進路へ巣立っていく瞬間である。俺は在校生として先輩たちの門出を祝う。

 この3年生たちの中で特に俺がお世話になった先輩。 

(智華先輩とも会うのが今日で最後になんのかな?)

村上智華(むらかみちはな)先輩だ。同じ部活で2年間お世話になり、俺と先輩の2人しかいなかったのでそれなりに先輩との仲も良かった。


卒業式が終わり、先輩方は高校生活最後のLHR(ロングホームルーム)をしている最中だろう。俺は一緒に帰る友達がいないので先輩にお礼を伝えるために先輩たちが出てくるのを待っていた。

「あっ…!智華先輩…!」

俺は先輩がでてきたのを確認して先輩に声をかけた。

「やっほ、麗杜君」

「先輩、卒業おめでとうございます!」

「ありがとう…!これから部活に1人になるかもだけど頑張ってね」 

「はい…!頑張ります!…ところで先輩って進学でしたっけ?」 

「うん、そうそう県外の大学ね」

「一人暮らしっすよね?」

「うん、一人暮らしはちょっと不安だけど頑張るね」

そう言って、先輩は帰っていった。これから、先輩は一人暮らしのために準備をして引っ越す準備をするのだろう。

 先輩と話せなくなるのは寂しいがこれも運命だ。


 そうして、先輩の卒業式から数日が経った。その日は雨が降っていて急いで帰っている最中俺は河川敷で体育座りをしている智華先輩を見かけた。

「先輩?」

「…!れ、麗杜君っ!?どうしてここに?」

 俺に声をかけられると思わなかった先輩はとても驚いていた。

「それは俺のセリフですよ、先輩」

「そ、それは…」

先輩は言葉が詰まり、黙ってしまった。

「それより、ここにいると風邪引きますよ」

「早く、家に帰ったほうが…」

そう、言ったが先輩は遮るように

「それは、嫌だっ!!」

聞いたことない先輩の声に俺は驚いた。

「あっ、ごめんね…」

先輩はなんとも言えない悲しそうな顔をしていた。

「い、嫌じゃなければ俺の家に来ませんか?」

俺は先輩になにか事情があると思った俺は先輩を家に招待すること旨を伝えた。

「そ、それは嬉しいけどいいの?親御さんとかは大丈夫なの?」

「あ〜、そこは気にしないでください。今は2人とも海外で仕事してるので家にいないんですよね」

「そ、そうなの?麗杜君さえ良ければお願いします」

 先輩は迷わず、そう言って先輩を傘の中に入れ俺は家へ向かった。ほぼ、相合い傘なのだが今は気にしている場合ではない。

家に着いた、俺達は先に先輩にシャワーを浴びさせ、俺の服やらなんやらを置いといた。

(先輩、何があったんだろう…)

俺は先輩に何があったが気になったが先輩がシャワー出てくるまで待とう。

先輩はゆっくりと口を開き、ここに至るまでの経緯を教えてくれた。

「麗杜君、シャワーと服を貸してくれてありがとう」

「いえ、大丈夫ですよ」

俺は平然を装っていたが、内心では、心臓がバクバクしてとても落ち着いてはいられなかったが、そこは頑張って抑え込んだ。

「そ、それでなんで先輩は河川敷にいたんですか?」

俺はやっぱり気になって先輩に聞いた。

「…気になる?」

「は、はい、別に先輩が話すのが嫌だったら、話したくなかったら話さなくても」

「いや、君にははっきり伝えたい」

先輩はそう言って、事の顛末を伝えてくれた。

「私ね…実は、大学行くって言ったじゃん?」

「言ってましたね」

「うん、それでね、親に大学の合格を消されたの…」

先輩から聞かされたのは聞くに堪えない内容だった。



 

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