3:働きたくないでござる


「嫌だぁ、嫌ぁ。でもやらないと今後ぬくぬくお家でお昼寝とかできなくなるぅ……。」



両親にお家に連行された翌日。誰もいない家の中で、ベットに寝転びながらそう呟く。


パパママの中では私と一番仲が良かった友達であるルール君、主人公である彼が無残にも死亡したことで私に精神的なダメージを受けたと考えてくれているみたいだけど……。私が困っているのはそっちではない。彼が死んだことではなく、死んだ時期があまりにも早いのが問題なのです。


……はぁ。マジでどうしよ。


主人公がおらず代わりを用意できない以上。シナリオというこの世界の未来を知っていて、各キャラの趣味嗜好や求めてる言葉行動、更には魔王や邪神の倒し方まで知っている私が動かなければ、今後の生活に影響が出てしまうでしょう。


上手くいけばどこかから誰かにバトンタッチできるかもしれませんが、というか出来るなら絶対にそうしますが……。それでも途中までは私自身が動かなければなりません。


なにせゲームのシナリオを考えればこの世界には主人公である彼でしか救えなかった悲劇ばかり。その悲劇を食い止めて仲間たちや多くの人間たちと絆を深めたからこそ世界は救われたのであり、真のラスボスである邪神を倒せるというお話なのです。彼の持っていたスキルである『天帝の加護』も絆を合わせて勝つみたいな描写されてましたし。



(……一応、彼無しでも何とかする方法はあるんです。というかゲーム内でその提示がされてましたし。)



マルチエンド故の別の可能性。その中で主人公を前面に出さずともクリアできる道筋が示されていましたが……。それでも彼の存在は必須でした。原作キャラたちの司令塔や結束を高める象徴として立ってたのがそのルートの彼です。『天帝の加護』を必要としない方法なのでまだ再現性がありますが……。


それを為すには、全く同じルートを辿ることが出来る『情報』を得ている者が動くしかありません。


つまり私です。


お昼寝には世界の存続が必須。故に今すぐにでも再現のため準備し始めた方が良いのは明白なのですが……。



「やだぁ。」



ほんと、本当に頑張らないといけないのが嫌。


なんで死ぬまで前世頑張った私が死んでも頑張らなきゃいけないの? ずっとお家でぬくぬくしてる私ってそんな罪? 誰にも迷惑かけてない上に、今後主人公の役に立つような動きする予定だったじゃん。関わり過ぎないようにはするつもりだったけど、善行は積む予定だったじゃん!


世界救う助けするんだよ? んで彼は世界救うつもりだったんだよ!


だったら何で主人公死んで! 私が働かなきゃいけないんですか!?


あぁぁぁぁ、でもやらないと未来の私がとても困る……。んで絶対『なんで昔の私は何もしなかったんだ!』って未来で後悔する……。私のぬくぬくゆっくりのんびりお昼寝生活が老衰じゃなくて、世界の破滅で終了しちゃう……。



「んぐぐぐぐぐ!!!!」



あぁぁぁぁ! なんかもうッ! ムカついてきました!


私! 何もしたくないのに! なんで私が働かないといけないんですか!? のんびりしたいのに! 出来ないだなんて! これも全部、勝手に死んだ主人公と世界征服しようとしてる魔王とその背後にいる邪神のせいです!!!


も、もうこうなったらこの怒り全部ぶつけて消し飛ばして、死ぬまでぬくぬくお布団生活させてもらいますからね……!!!!



「やってやりますよ……!」



顔を叩き気合を入れ、精神を切り替える。


ほんと嫌だけど、やらなくちゃ困るのは私だ。


それに、命の危険性はあれど前世みたいに私にノルマを課して来るようなクソはこの世界にはいない。しかも主人公が動き出し物語が始まるのは彼が15の頃。同い年の私が5歳なのを考えると、まだ10年の猶予がある。長期の準備期間と前世で苦しんだ人を殺しに来るノルマが無いのであれば、私でも何とかなるはず。


怠けずに……、は無理かもだけど、出来るだけ頑張って行動に移す。



「何をするにもまずはある程度の強さは必須。強く成らならなきゃ。」



終わればぬくぬくお布団が待っていると信じ、行うのは現状確認。


これまでは知る必要すらなかった自身をもっと深く知って、それに合わせた方針を定めて、動かないといけない。


故に唱えるのは、前世の言葉。



「『ステータス』……うん、表示された。この辺りの仕様は昔と変わってない。」



開かれるのは、私にしか見えない青色の板。よくあるステータス画面です。


この世界に転生した時から理解してたのですが、こっちの人たちが使う言語は日本語じゃありません。独自の言語を使用してコミュニケーションを確立しています。でも一切『日本語』が使えないわけではなくてですね? 理由は解んないのですが、特定の言葉を唱えることでこうやって自分の能力とかを見ることが出来るんですよ。



「まぁよくあるメニュー機能みたいなものかな。設定いじったりセーブしたりは出来ないけど、アイテム無限に保管できたりとか、自分の現状眺められたりとか。色々出来て便利。」



今世に生まれて意識がはっきりしてきた頃に発見してから、今まで特に必要なさそうだったから使わずにのんびりしてたけど……。これから待っていることを考えれば、使いこなさなきゃならないでしょう。とまぁそんなことを考えながら、自身の現状。ステータス画面をのぞき込みます。




[STATUS]

JOB : 村人

Level : 1

EXP : 0 / 10


HP : 2 / 2

MP : 3 / 3


ATK : 0 (Physical Power)

DEF : 0 (Damage Resistance)

M.ATK : 1 (Magic Power)

M.DEF : 0 (Magic Resistance)

SPD : 1 (Speed / Reaction)

LUK : 0 (Fate Influence)




「……うん、まぁオール0だった赤ん坊の頃よりはマシかな。」



いやぁ、流石モブの5歳。一応同年代の中では普通位の発育なのに雑魚でしかない。


初期主人公が全部5以上あった上にATK、物理攻撃力が8なのを考えると……、悲しくなってきますよねぇ。あ、ちなみにゲームにおける最初の敵、この村の近くに出てくるゴブリンとかスライムの攻撃力が3くらいで、最初のボス扱いされていた盗賊たちの値が5くらいになります。


攻撃力から防御力を差し引いた値がダメージになるので、このまま外に出れば何もできずに死にますね、はい。というか多分そこら辺にいる村人にぶん殴られても死にます。おもしろ。



「いや欠片も面白くないな。レベリングして強くならなきゃ……。」



普通なら雑魚すぎることに絶望し、諦めて残った時間を有意義に使うのかもしれませんが……。私は老衰で死ぬまでのんびりすると決めているのです。幸いなことに前世の記憶からこの世界で強くなる方法は幾つも知っています。それを利用していくほかありません。


とりあえず、今出来ること。当分の目標としては……。この付近。ゲーム的に最弱の魔物が出没するこの付近でのレベリングですかね。



「というかそれ以外できないですね、うん。」



もっといい狩場だったり、効率を上げるアイテムとかの所在を知ってはいるのですが、今の私の立場は幼女。お家のある村から長時間離れることは出来ません。勿論身一つで飛び出して行ってもいいのですが、この魔物溢れる世界では移動は死と隣り合わせ。目的地にたどり着く前に魔物に襲われてお陀仏でしょう。


ま、まぁそもそも“レベリング”って時点で敵の命を奪って経験値を得るわけですから、この能力値で戦わないといけないことに変わりないのですが……。



「とりあえず試したいことありますし、それやってから考えましょ。」



上手くいけばとりあえず『村人』のレベルは楽にカンストまで持って行けるでしょうし。



「あ、でも。今日はもうお日様がてっぺんまで上がってますし……。今から何かするにはちょっと遅いですね。うんうん。」



……まだ原作始まるまで10年もあるんですし、頑張るのは明日からにして遅くはないハズ。


というわけでお昼寝しましょそうしましょ。んじゃおやすみー。 



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