【恋愛】嘘でしか言えない本当の言葉、その誠実さについて

晋子(しんこ)@思想家・哲学者

見抜ける嘘に込められた愛、そして誠

恋愛において、誠実な男性が好まれるのは当然のことのように語られる。

「嘘をつかない人がいい」「誠実でいてほしい」

多くの女性がそう口にする。

だが、現実はどうだろうか?

誠実で、嘘がつけない不器用な男性ほど、恋愛の現場では見捨てられているように見える。


そして皮肉なことに、嘘が上手く、話術に長けた男性ほど「信用されている」ように映る。

しかし、それは本当に誠実だからではなく、“嘘がバレないから”に過ぎないのではないか?


嘘が上手い人は、いわば詐欺師と構造が同じだ。

本音を隠し、相手の望む言葉を提供し、信じさせる。

女性の「誠実な人が好き」という願望さえも利用して、自分を演出する。

そして、巧妙な嘘に騙された女性は、気づかぬまま傷つけられる。


一方で、嘘が下手な男性はどうか。

不自然な間、挙動不審な態度、わかりやすすぎる言い訳。

女性はその嘘にすぐ気づく。そして怒る。

「嘘をつくなんて最低」

「裏切られた」

そう言って、彼を見捨てる。


でも、ちょっと待ってほしい。


その嘘が“見抜けた”ということは、少なくとも「完全に騙されていた」わけではない。

むしろ、それは彼が嘘をつき慣れていない証拠なのではないか?

つまり、彼は普段は誠実で、だからこそ、たった一度の嘘すらうまくつけなかった。

それはある意味、“誠実さの証明”ではないのか?


そして、ここにあるのが恋愛に潜む最大のジレンマだ。


女性は「嘘をつかない男」が好きだ。

だが、「嘘をつかない男」の嘘は、簡単にバレる。

そのバレた嘘を「不誠実」として切り捨てるなら、残るのは「嘘がバレない男」=詐欺師タイプである。


つまり、「嘘がバレた男を切り捨てた女性」は、

自ら「嘘がバレない男」だけを手元に残すことになる。

それは本当に幸せな未来につながるだろうか?


逆説的だが、女性が本当に幸せになるには、

「見抜けるような嘘」をつくような男を、大切にするべきなのではないか?


嘘が下手な男は、不器用で、誠実で、優しすぎる。

だからこそ、小さな嘘をつくとすぐにバレてしまう。

「君の作った料理、美味しいよ」と無理して笑ったり、

「大丈夫」と言いながら、実は無理して会いに来たり、

そういう嘘をついてしまう。


その嘘に怒る女性は、正義感の強い人かもしれない。

しかし、そこで「本当は、彼なりに思ってくれていたんだ」と気づける女性こそが、

本物の愛を手に入れられるのではないか。


なぜなら、その嘘は“やさしさ”から来ているからだ。

“嫌われたくない”という思いから、口にしてしまった不器用な言葉なのだ。


人間は、完全に誠実ではいられない。

100%本音で生きることもできないし、相手にとって常に都合のいい存在にもなれない。


だからこそ、

「完璧な人を求める」のではなく、

「不完全さの中にある誠意」を見抜ける人間にならなければならない。


そして、男性にとっても同じことが言える。

「嘘を見抜かれても捨てられなかった経験」は、心に深く刻まれる。

「この人は、自分の不器用さを受け入れてくれた」と気づいた男性は、

その女性を一生大切にしようとする。


嘘をつかれたら、傷つくのは当然だ。

信じていたのに、と思ってしまうのも無理はない。

でも、それが「見抜ける程度の嘘」であったなら、

そこに込められた本当の気持ちを見逃さないでほしい。


それは「嘘をついた」というより、

「本音を言えなかった」というだけかもしれない。


そして、その「本音を言えなかった理由」が「あなたを傷つけたくなかったから」だとしたら、

それは立派な愛の証明ではないか?


人は、嘘の上手さではなく、嘘の“浅さ”で誠実さを見極めるべきだ。

見抜けない嘘ほど恐ろしいものはない。

だが、見抜ける嘘には、愛が詰まっていることもある。


だから、恋をするすべての女性に伝えたい。


あなたが今、見抜いたその嘘。

それは、彼の誠実さの証かもしれない。

捨てる前に、ほんの少しだけ、その人の不器用さを愛してみてはどうだろうか。


そして男性へ。


嘘がバレたら、謝るだけじゃなくて、

「本当は、こういう気持ちだったんだ」と、きちんと話してほしい。

そうすれば、あなたの嘘は“誠意ある不器用さ”として、

きっと彼女の心に届くだろう。


恋愛における誠実とは、

嘘をつかないことではない。


嘘がバレたあとでも、

関係を壊さず、正直な心で向き合えるかどうか――

それが本当の“誠実”なのだと思う。



以上

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