第28話

結界の中に入る。

『ぬ?なんだこの気配は……』

宝華は禅の呟きは聞こえず、ビー玉を投げる。

ビー玉が割れると10メートルはありそうな黒い鬼。

「ガアァァ…」と唸るような声。

「きゃああっ!」

『ふむ。こやつはオーガだな。オーガの体の色でランクがあってな、通常の緑は下の上で黒は中の下くらいか』

低級のアヤカシしか見たことない宝華は悲鳴をあげる中、禅は冷静に解説。

『"低級”のアヤカシとの模擬戦だったはず……片霧とかいう男…余を試すつもりだな。小賢しいのぅ……』

片霧の方に目を向けると「なにか問題でも?」と言いたげに笑っている。

『宝華、落ち着け。お前には余が付いておる』

「でも……」

『子キツネのままでは説得力はないな』

禅は人型に変わる。

オーガは吠えながら金棒を振り回し、禅に襲いかかる。

『知能はあるはずなんだが、かなりご立腹のようで周りが見えておらぬか……』

オーガの金棒を扇で軽く受け止める。

『余ははようパンケーキが食べたい。だから手加減はせぬぞ』

扇を広げ、左右に1回ずつ扇ぐとオーガは苦しそうに消滅。

『宝華、パンケーキを奮発してくれるな?』

「わ、わかった。お疲れ様」

禅は子キツネの姿に戻るとドヤりながらお腹をグゥ~と鳴らした。


「おや、やるね」

禅の戦いを眺めていた片霧と董一。

「狐は強いが、全くパートナーシップができてないな……」

「アヤカシだし必要ないよ〜。もっとヤバイの入れておけば良かった〜」

「これ以上のアヤカシだとビー玉ごときじゃすぐ出てしまう」

「残念。あ、先生〜宝華の評価は△でお願いしますね」

担任の諏田は内心ではわざと中級のアヤカシを仕込んだ片霧に文句を言いたかったが、片霧の笑顔に隠れた圧に圧倒され、大人しく言う通りの評価をつけた。


「大丈夫かよ!あんなでっかい低級もいるんだな!」

「禅によると中級だって」

「ええっ!」

「そんなのも混じってるのか!良かった〜当たらなくて〜〜」

宝華が結界から出ると柊と心配してくれたクラスメイト数名が駆け寄り、宝華もとい禅が戦った相手が中級だと知り、口をあんぐりし驚いていた。


「そろそろ終盤だな」

柊が自分のクラスメイトを見渡すとまだ模擬戦をしていない者があと10人もいない。

「あっ」

宝華は合田とすれ違う。

「どうした?」

「ううん。なんでもないよ……」

合田のことは言わない方がいいかと留まるも数分後には後悔した。








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