三章
第26話
最初の方に立候補した生徒たちはさすが自信があるようですぐに倒してしまった。
その後もわりと弱いアヤカシばかりなことと昨日の模擬戦の経験が役に立ったのか冷静に対処していった。
そして片霧の「色々」がわかる時がきた。
Aクラスの女子生徒が「ちょっと待って待って待ってー!!」と叫ぶ。
宝華たちは同じBクラスを応援していたので他のクラスは見ていなかったため、叫んでいたAクラスの子の結界をみるとそこにいたのはアヤカシでも悪魔でもない……。
「お婆さん!!」
人の良さそうな優しいお婆ちゃんの幽霊だった。
「幽霊だよな…アヤカシじゃない……」
「婆さんのアヤカシとか?」
応援していた生徒たちはざわめく。
「うあああっ!!やめろおお!これは俺にダメージがあああー!!」
今度はCクラスで泣き叫ぶような男子生徒の声。
男子生徒は先ほど結界に入ってビー玉を投げたばかり……ダメージを受けるような様子はなかったはずだが……。
よく見ると男子生徒の相手は小さい子猫だった。
「え?どっかから子猫が紛れこんだのかしら?」
「危ないから早く追いだしてやれよ」
「子猫くらいで情けないな」
と、呆れるCクラス。
「ふふっ。討伐相手を追いだしちゃ駄目だよ。交通事故で死んじゃって化猫になったんだ。Aクラスの方は自分の息子に殺されたのに、息子が心配で成仏できない幽霊だったかな〜?」
「武神隊は稀に霊相手にすることがある。稀だから隊員ですら知らない者もいるがな」
楽しそうに笑う片霧と冷静な董一。
お婆ちゃん幽霊は手を合わせ泣きながら『お許しくだせぇ…お許しくだせぇ…』と拝んでいる。
化猫の子猫は今にでも死んでしまいそうな、か細い声で『にゃーん……』と鳴いている。
「これは鬼畜の所業っ!」
「可哀想よっ!助けてあげて!」
普通にアヤカシと戦っている生徒は外野の叫びに気を取られてしまい、集中力が途切れて怪我し苦戦はじめた。
「幽霊の成仏させるには特殊な神様じゃないとできないからね。例えば宝華の姉の法子とかね。君の彼女、相変わらず元気かい?」
「ええ。この間は叫びながら枕を振り回して町内一周したようだがな」
董一はため息がこぼれつつも、少し優しい顔をしていた。
宝華や家族はまだ知らないが董一と宝華の姉の法子は恋人関係だ。
「まぁ、神様の加護の影響だから仕方ないね。あ、ギブアップしちゃった〜」
笑う片霧に後ろで控えていた担任教室たちは優秀な生徒にバツをつけなくてはならず、片霧の鬼畜っぷりに頭を抱えた。
「俺なら幽霊は当たりだな」
「どうしてよ?」
柊はドヤっていたので聞いてみた。
「ほらっ俺の加護に馬がいるだろ?馬は優しい動物だから友好的になれそうじゃん」
『使い手が優しくない時点で無意味だな』
「なんか言ったかクソギツネ!」
『余の声は聞こえぬはずなのに鋭いのぅ』
柊と禅はお互い睨み合った。
「…っと、次は俺行くわ。クソギツネに俺の実力見せてやる!」
柊は立候補しひときわ大きいビー玉を引く。
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