第9話

だらけきった禅は着替える宝華をボーっと見ながら一言。

『宝華は貧相な体つきだな』

「ほっといて!気にしてるんだから!」

「ん?誰と話してるの?」

「え?禅とだけど?」

『他の者に余の声は聞こえぬぞ』

女子生徒たちには宝華が独り言を言っているようにしか聞こえないようだ。



グラウンドに向かう。

今日は神様の加護をいただいてから初日なので、自分にどんな力があるのかという能力テスト。

すぐに力を発揮できる者いれば、時間が経ってからの者もいるし、身体系、頭脳系、戦闘系など分野ごとに得意不得意がある。

今日は体力テストだ。

「まずは100メートル走からだ。順番に走れ〜」「はーい」

普段は走るのが嫌いなクラスメイトも加護をいただいたことでやる気に満ちている。

「宝華はいいね、狐の神様だってわかりやすくて。初めまして禅様、私は羽衣石由良です。宝華とは友達です」

『キャン!(うむ、苦しゅうない)』

由良が禅に挨拶をするが、宝華以外には鳴き声しかわからない。

「私、走るの苦手だわ〜」

「由良は競争とか争いや勝負事は嫌いだもんね」

そのわりには成績も良く、運動神経も良い。

見た目も性格も良くて神は万物を与えすぎだと思うくらいに。

由良はどんな神様に加護を与えられたのだろうか?そう気になりつつ、由良が走る番になり、見守った。

ピストルの音と共に赤い髪をなびかせ優雅に走る由良。

「由良、凄い!」

「私もびっくり。なんだか羽根が生えて飛んでるようだったわ」

「羽根?鳥類?鳥類で走るのが得意ならダチョウってイメージ」

「どうなのかしらね」

由良とダチョウの神様なんて想像つかない、まだテストは始まったばかりで未知数だ。


宝華の番がやってきたが特に変わらず。

「狐って足早くないの?」

『ないな』




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