第6話 あとがき

──忘れること、覚えていること、それはどちらが“救い”なのか。


『三態の水』は、「水の三態(液体・気体・個体)」という自然現象を、

人の記憶や感情の在り方に重ねることで生まれた物語です。


液体は“流れ”、気体は“広がり”、個体は“留まる”。

この性質を、人間の記憶や喪失のプロセスに置き換えることで、

ひとつの小さな町が徐々に“現実からズレていく”様子を描きました。


主人公が追い求めたのは、消えた兄の姿ではなく、

**自分が見なかったふりをしていた“記憶そのもの”**だったのかもしれません。


そして、それを呼び戻したのは、“水”という媒体を通じて訴え続けていた声。

人は忘れる生き物ですが、同時に、

“忘れまいとする力”もまた、確かに存在していると信じています。


この物語が、皆さんにとっても、

“忘れられない”水の記憶の一雫になってくれたのなら、

これ以上の喜びはありません。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る