田舎の山道で出会った風の妖精・フェルと、とある家族が紡ぐ
日常の“ちいさな魔法”の物語。
いわゆる異世界ファンタジーではない。
でもこれは、“どこか現実に寄り添った”魔法の物語だ。
派手な展開はないけれど、静かな描写のなかに、家族ひとりひとりの息づかいが
自然に浮かび上がってくる。
特に印象的だったのは――
「長く生きていても、眠っているように時間を流すこともあるし、
誰かと出会って、何かを想って過ごす一年の方が、百年の眠りよりも深い」
というフェルの言葉。
どこか心の奥に引っかかって、静かな余韻を残す言葉である。
妖精といえば“妖精の国”アイルランドを思い出しますが、
この作品の「山道でふと出会う」という導入は、
森や木々の間から妖精が現れる――
そんなアイルランドの自然やイメージとも、どこか重なって見えました。
読み終えたあと、自分の日常にもこんな魔法があったらいいな、
出会いがあったらいいな、
と……、ふと“現実の中に何か”を探したくなる。
現実と幻想のあいだを、家族でそっと踏み越えていくような、
優しくて、どこか深い、心に残る作品でした。
※ちなみに途中からややコメディ調になりますが、それもまた良きですw
このレビューは、静かな導入~前半部分にフォーカスして書いています。