第2話

 少年シトの親からの評価は、ひたすらに。ただひたすらに『普通』『平凡』に尽きる。なにか秀でたところを挙げろ、と言われたら「うーん……」と数秒考え込んで「優しいところ」と、ありきたりな答えしか返ってこないほど。


 産んで育てた親がそれなのだが、本人もあながち間違っていない。というより、自分も秀でたところを聞かれたら、数十秒考え込んで「……健康」としか出てこない。実際、大病を患ったことはない。覚えている範囲では。


 勉強ができないわけではない。だが、思いっきりできるわけでもない。歴史上の人物は逆に学校の授業は全くできず、他の人間には理解できないようなことや考え方を持っていたとのことだが、それにも当てはまらない。普通に普通。理解も共感もできる。


 運動はどうか。それは人よりいいかもしれない。体の柔軟性や、握力は他の同年代よりもあるほう。重要なのは『あるほう』であって、まわりで一番というわけでもない。しかもわかりやすい足の速さなどよりも地味めなやつばかり。人生で今のところ活きている、と実感することもない。


 特技……ではないが、趣味のようなものはある。学校でも習うが、それ以上に集中して注力して学んでいるもの。


 それは『龍』について。


 周辺の国は全て、シンボルとして『龍』を祀る。古よりの信仰として、空と大地は『龍』によって守られている、というのがある。宗教とはまた微妙に違う。全ての人の心の拠り所、が近い。神や太陽と同格とされている。


 ゆえに初等教育から『龍学』というものがあり、はたして『龍』とはどんなものなのか。その地の人々にとっての『龍』とは。国ではなく、それぞれの市の『龍』もある。関係性。その他諸々。追求していく学問。大学ではより専門的に突き詰めていく。


 答えが出ないものももちろん多い。そもそもが『龍』は概念なのだから。大きな爪と牙、羽を生やして空を飛び、大地を揺らして走る。なんていうのは誰かが想像した生物であって、それがいつの間にか広まっただけ。ただ、わかりやすいのでシンボルはみな近い形。


 もちろん市によっては『恐龍』というところもある。つまり『龍』であればなんでもいい。結局のところ、崇拝するだけなのだから。もちろん子供は「空を飛べるやつがいい」と好みで隣の市を羨むこともある。

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