【BL】真夏の夜の植物園

ヴェガ猫

真夏の夜の植物園

「迎えに来たぞ、、カイト、、いないのか?」

 

 大学の広い敷地の一画にある植物研究施設。

 その研究所の横にかなり大きめの植物園が併設されている。巨大な熱帯植物を集めたガラス張りの温室もある。

 今夜は満月であり、先日夏至を過ぎたばかりだ、ちょうど大学の裏手にある山の端から、綺麗な円盤型の月が上がって来ているが、眺めてもさして涼しさは感じない、、


 今年はほとんど雨の降らない空梅雨の様相で、連日、各地で夏日や猛暑日が更新され続けて、とうとう今朝、異例の速さで全国的な梅雨明けが宣言された。

 

 暑さが厳しいために夜になっても昼間の気怠い暑熱が、この山間にある大学の構内でも、ドロリとあちこちに漂っている。

 

 満月でさえ、モヤモヤと揺らいでいるのを、うんざりとした心持ちで見ながら、

 自然の中には全ての人の理性を溶かす〈暴力〉があるなと、駐車場から温室に向かって早足で歩きながらユゥキは思う。

 特に、いま向かっている植物園の周辺は、草いきれが立ち昇っていて熱帯雨林のようだ……


 植物園のガラス張りの温室の扉の前には、池があり、盛りを迎えている熱帯睡蓮がムンとする湿気のなか、紅やレモン色の花をあげ甘い匂いを拡散している……


 近づいてくる大きな三角屋根の下では、曇りガラスで出来ている扉の入り口が僅かに開いていて、光がこぼれている。

 まだ中に人がいるという事だ。

 

 それはつまり、自分の恋人である「八尾カイト」がまた研究に夢中になっているのだろうと、「三井ユゥキ」は溜め息をついた。


 普段はのんびりとしているように見える恋人なのだが、学びに熱中すると何もかも忘れてしまう、、。食事も疎かになる始末なので、ユゥキに怒られる時がたまにある。


 〈ユゥキ〉とその親友で恋人でもある〈カイト〉、高校時代に恋人へと進展し、この春から、大学生となった2人。


 シェアルームでの生活リズムも整って来ている、心臓に問題がある恋人との生活が、今までより遥かに管理し易くもあるので、ユゥキは心底嬉しく思っている。

 だが、その本人がこの世を生きることに頓着しない面が多々あるために、部屋から外へ出したくなくなる、、のが目下の頭痛の種だ。

 

 (素晴らしいスキルなんだけど、オレの事は忘れないで欲しい、、) と、恋人としてユゥキは悩ましく思う。

 

 この植物園を維持管理するのは研究所の職員と研究室に入っている学生、院生たちだ。

 時々は一般にも公開されている、

 (けっこう、人気があるんだぞ、ユゥキ)

 

 憧れの教授の研究室に所属出来て、ご機嫌なカイトに自慢された。

「でも、植物たちへの世話が忙しくて、自分の食事も忘れてしまうのは心配で困るんだが……」とユゥキが言うと、

 (あ、うん、それはついうっかりしちゃうんだ、、ゴメン……)

 そんな会話を昨夜もしたばかりなのに、、と高校の時からのカイトの生き物への愛情の変わらなさに、尊敬と同時に困ったなーという感情も湧いてくる。

 

 今日は、自分も資料室に詰めていて遅くなったユゥキだが、連絡を入れたカイトが待ち合わせの駐車場に来なかったので、心配して恋人が常駐している、この園に探しに来たのだった。

 

温室の扉を開けて、声を掛ける。ムワッとした濃い大気が流れてきてユゥキを包み込む。

 

「迎えに来たぞ、、カイト、、いないのか?」

 返事は無い。

 何処にいるんだ?

 温室に併設されてる事務所、講師室を確認しても、また、いつも休憩時に腰掛けている、温室内の日当たりの良いベンチにも見当たらない、、。

 少し焦る。

 他へ行ったのか?と、青臭く蒸し蒸しする空気のなか、濃い緑を様々に呈して、遠慮なく生え競っている植物たちの間を抜けながら、視線を巡らす。

 

 真夏の熱気を逃がすために、幾つかのガラス窓が開放されていて、そこから蛾や羽虫も入り込んで、室内灯や、ユゥキにはわからない花の周りを飛んでいる。

 巨大な葉っぱをどかして奥を見る、

 すると、ガラス張りの園の奥、巨大なシダとガジュマルの生えている根元にカイトが座り込んでいた。

 

今朝着て行った白いシャツの背中を巨木にもたせかけて下を向いていて寝てるようにも見えるが、、

 異常が起こったのか?と慌てて走り寄る。

「カイト、カイトッ!」

 側にしゃがみ込んで、首の脈を見ると少し早い、そして、顔が微かに紅潮している。

 どうして、こんな端の場所に、居るんだ。

 透き通る肌が紅潮している、、。

 瞼がフッと動いた。

ふぁ、ユゥキ、、あれ、もう夕方?

トロンとした潤んだ瞳で、目覚めた恋人。

 いや、、まだ寝てるなこれ……

 ホッとして、溜め息を漏らすがまだ油断は出来ないと、ユゥキは頬に置いた手はそのままに、潤んだ瞳の奥を探る。

 意識は戻りつつあるようだが、何か、靄のように朧な感じがする……

 (何が起こってる?)

 

 注意しながらも、カイトに声を掛ける。

「もう夜になってるよ、、起きて、カイト。」

 

 熱中症か?と心配するが、体温は高くない、汗もそれほどでは無い、寝ていただけなのか?こんな場所で?

 疑問が多く湧くが、本人は眠そうにうつらうつらしてしまっている。


 起きてくれ、、カイト、、シミひとつない滑らかな肌の恋人の頬を撫でながらホッとしたのと同時に、とろけるような風情の恋人に、欲情が上がってくる。

「起きないとキスするぞ、、」

 言う前からキスをしながら、カイトの着ている白いシャツの上から指で刺激する。

「んっ、、あぁぁ、ユゥキ、、ィ、、」

胸の敏感な部分をクリクリとつままれて、よがる声を漏らして、でもまだ眠そうに長身痩躯で有りながらも筋肉質のユゥキの首に両手を掛けて甘えてくる。


 南洋の植物たちが放つ、重くネットリとした芳香が皮膚に張り付いてきて、表面の自我の下に眠っている、乱暴な本能を呼び覚ます、、。

 

 閉館時間はとっくに過ぎていて、最後の職員も院生もいないのは分かっている、鍵を管理しているのはカイトで、いつも此処で研究三昧なのは警備員も心得ていて、この後は誰も来ない、、

じっとりと汗をかくほどの暑さに、ユゥキも理性が飛びそうになってくる。

 誘ってるのか?、カイト、、。良いのかココで?

 聞くともなしに囁くと、

んんッ、、来て、、とカイトが耳元でトロリという。

 (半分眠ってるだろ、、)

 シダと絡み合って生えている3mはありそうなガジュマルに上半身を持たせかけているカイトを抱きしめる。

 (仕方ないな……)

 

 この悪戯とも思える〈見えない何か〉が仕掛けてきている感じ、、妖しい気配があるなと、柔らかいウェーブを持つ恋人の髪の毛をくるりと指に遊ばせながら、ユゥキは周囲の様子を気に巡らして注意する。

 

 けれども嫌な感じはしない。

 

 取り敢えず、立って、、カイト、そう言ってユゥキは立ち上がらせた恋人を、巨木によりかからせる。

 何か手に持っている、、仄かにピンクを帯びた蘭の蕾が幾つか付いている緑の茎、、、。

 蕾の周りがキラキラと光っていて、ゼリー状の蜜が出てる、花外蜜というやつか、、


 確か数日前に、シャーレに入ってるソレを研究室から持ち帰って来て、

「ユゥキ、ほら、甘いんだよ」と指についた透明なゼリー状のモノを舐めさせられた気がする、、


 その蕾から濃い匂いが流れてくる、、

「ほら、カイト、この蘭の蕾はどうするんだ?」

 蘭の茎を、恋人が持っている腕ごと持ち上げる、、すると、

「ん〜、」持った蕾をパクリと口にするカイト。


 あ、こら、口を開けさせて植物を取り出す、

 甘い、甘いよユゥキ、、チラリと残っていた半透明な蜜を舌に乗せてキスをねだって来た。

 いつものカイトとは違う、たまに人外からの要望を受け取ってしまう「器」として使われる時と似ている、、

 何かに仕掛けられたな、、とユゥキは警戒した。

 

これは、多分、植物達なのか?、、仕組まれて導かれたのか?

 オレたちが? どう言う理由で、、と困惑する。

 

ふと、熱帯の植物たちには、人をも動かすチカラがあると聞いたことがあるのを思い出す。

、、ヒトのような悪意は感じられない、、むしろ、なにか興味を持たれてる感覚すらある……

 

「これはこんなに、濃厚な薫りを出す種類の蘭である筈は無いんだけど、、調べてるのに不明なんだ、どうしてだろう?……」

 

 (と、数日前にもカイトが言ってたじゃないか、、まんまと花に誘われる虫のように、、堕とされたのか、オレ達、2人して、、)

 

 蘭の蜜は導く「媚薬」なのか?

 既に下半身には血が集まり、欲望に膨らんでズクンッと痛みを感じるまでになってる。


(、、また、今度は植物だなんて、、、変なのに、すり寄られて、、しょうがないなぁ……)

 

 カイトの〈依代よりしろ〉としての計り知れない能力に今更ながら驚く。

 まったく、、と苦笑しながら、トロリと舌を絡ませてカイトへの深いキスをする。

 そして、舌の上にまだ残っている、濃厚な甘さと香りの蜜を激しく吸い取っていく、、

 (いやらしいくらいの芳香と甘さ、、堪らないな……)


 んくっ、ユゥキ、ユゥ、、キ、、匂いが凄い、、甘い?

 うつつのままに、カイトが身体をもたせかけて尋ねてくる。

 背中から腰に手を添えて、しなやかな身体を思い切り抱きしめて応える。

「うん、甘いな、、お前はいつだってオレの甘露だ、、」

 笑いながら、もう一度深くキスをする。

「する?」

「あぁ、したいな、、見ろ、周囲から植物たちの薫りが誘って来てる、、」

風が吹いて無いのに、園内の、緑がざわめいた、、

 すぐ近くにある、水道で手洗いをして、手持ちのペットボトルに水を入れる。

 (ちゃんと飲むんだ)と言っても、カイトはうっとりと開いた唇からポタポタとこぼしてしまうので、(仕方ないなー)と何度も口移しで飲ませる……


 その間も、ユゥキはどこかに悪意が忍んでいる事は無いのか?と、あちこちに意識を飛ばして確認する、、

 

 結果、まぁ、悪い事にはならないだろうと、周囲に向かって強く意識を放散する……

 (ちゃんと見せてやるから、変なことはするなよ、、)

 そうして、カイトとの行為に耽溺していくことにした、、、


 巨木に身体を預け、ボウっとしているカイトの首筋にキスをしながら、耳朶をそっと齧る。

 甘い森のような体臭をいつもより強く感じる、、

 シャツの前を開放してやり、少し汗ばんだ桜色のボタンを舌で舐めてキュッと吸い上げる。

 

 んくぅッ、あ、いいッ……、

 オレの胸に手を当てているカイトの下腹部も膨らんで来てる、、

 ゆっくりとジッパーを外して、果実を剥くように、全て脱がしていく。

 白い肢体となったカイトの森のような薫りと、濃厚な花達、シダ、熱帯の芳香がないまぜになり、脳内の奥底がクラクラしそうになる。


 傷つかないように、脱いだ自分のシャツを背中に当ててやる。

 脇腹から胸の紅潮しかけてる乳首に向けて愛撫を重ねていく。

 ピンと乳首を指で跳ねさせての刺激はカイトの陰茎もピクピクと動かす。

 ん、あぁァァ……、、そこ、、気持ちい、い、、

 潤んだ瞳から快感に打ち震える涙が零れる……

 オレも自分のモノをズボンから出して、すでに濡れて硬くいきり立っている陰茎をカイトのモノに擦り付けて、上下に撫でるように動かしながら快楽を共有する、、いつもより熱くヌルヌルしてる……

 

「はぁぁ、カイト、凄く良いな、、、」

「ん、んくぅ、、そこ、擦られると、くる、、、、ァァ、」

 熱帯の夜の、やるせない甘い疼きが、2人の内部に染み込んでくる、、。

 

 カイトが、俺もしてあげる、、と言って、

 (いいよ、ソレは、)、と断るユゥキの言葉も聞かず、

 パクりと熱いユゥキのモノを口にして、愛撫してくる、、

 熱い舌でチロチロと先端を舐めて、見上げるその上目遣いが、どこかの異国で見知らぬ、でも愛しい誰かと交わっているかのような、激しいエロスを感じさせる、、

 

「、、凄くおいしい、、」

 膝をついているカイト自身も昂った陰茎からトロトロとした透明な蜜を地面に注いでる、、

 

 絡み合う2人の愛撫の交歓に、ひとではない感触の俯瞰する目を多く感じる、、独特な空気だな。

 (あっ、、やだッ、、もっと、ユゥキの、、欲しい、)

 と口を離す事に抵抗するカイトを、

「これ以上されると、出ちゃうからな、、今日は危ない、、」と抱き上げながらユゥキは、揺らぐ濃い大気から何か、求められてる気がした……

 

〈ここに2人のを、、落として行って、、欲しい、、欲しい……〉

 

 言葉では無い、風のように感じられる要求が脳内で言語に変換される、、


 (、、そう言う事、、か……)

 

「今度はオレを感じて、、カイト、、」

 白い肢体の脚の付け根から、ツツゥッと中心部に向かって舌を這わせて行く、、

 「……ハァァ、、んッ、、舌、熱くて、、気持ちい、、い、」

 ユゥキの愛撫が下腹部に来て、昂ってるカイトの陰茎をしゃぶり始めると、カイトは喘ぎながら、恋人の艶のある黒髪に指を絡めてくる……


 打ち震えるその様子に満足しながら、そのまま今度は後ろも同時に弄って行く。

 (昨日したばかりだから、柔らかいな、、まだ、)

 カイトを汚さないように、水場で洗って来た指をゆっくりと出し入れしながら、ユゥキは熱く蠢く中を確認していく、、。

 (、あ、んッ、ハァァ、両方はダメぇ、、)

「ダメじゃ無いよな、、良いって言ってくれ、カイト、、」

 前も後ろも止めないで、答える。後ろはいつもの場所をトントンと叩き始める……

 こくんと、返事がわりに頷く恋人が愛しく、全ての動きが激しくなる、、

 両方からの快感に、熱帯の巨木にもたれかかるカイトの身体が細かく揺れ動く。

 

「んんッ!、、っはぁ、、ユゥキ、ィ、、なんか今日、俺、変だよ、、熱くて、、」

「そうだな、後でよく調べよう、、でも、その前に、挿れたい、いいか?」

 

 カイトの片脚を、グッと持ち上げたユゥキが、互いに汗ばんだ素肌を合わせる。

 密着した滑らかなカイトの肌を感じながら、その充分に解れた後孔にヌルリと長くて熱い陰茎を押し付ける、、

「んんぐ、はぁ、ユゥキ、大好き……」

「、、オレもだ、、」

 一層、様々な植物たちの芳香が濃厚になる、(覗かれてる気分だ、、)

カイトを通じて、何か熱帯の植物たちと交わるかのような感覚、、、

 

「挿れるぞ、味わえ、お前たちも、、」

 小さく呟いてから、思い切り、カイトの中に深々と挿れる。

(、んぐッ!、あァァ、おっきいよぉ、ユゥキぃ、、凄い、、熱い、熱いよぉ、、!)

 

 いつもと違う快感にビクついて、恋人にしがみついてくるカイト。

 その激しくよがる声をキスで吸い取って、ユゥキは恋人の熱くなっている内部をユルユルと擦り始める。

 

 たしかに感覚が鋭敏になってる、、関わってる植物たちに感性を拡張されてる気分だ、、

 

 濃密な大気に誘われるように、激しくえぐればえぐるほど、中がもっと熱くヌルヌルと絡んでくる。

 ガジュマルとシダを背にした愛しい肉体に、ユゥキ自身を押し付けて、浮き上がらせるように、中を突き上げる、。


「あぁ、だめ! 奥、そんなにえぐっちゃ、、イキそう!」

「……今日は一緒にイこう、後ろ向いて、、」


 巨木に両手を置いてこちらに背中を見せ、受け入れようとしてくれるカイトに囁く、

 

(ここにオレたちのを落として欲しいって、、)

  (あ、うん、さっき、俺も聴こえた、、あっ、あぁーー!、)

 白い腰を両手で掴んでから、怒張して痛いほどの陰茎を再びヌルリと挿れる。

 そこから、ガジュマルの木肌にしがみついたカイトの奥をゆっくりと突いていく、、

 

 いつもより遅いリズムなのに、植物たちのためか、纏わりつく大気のように快感が早く登ってくる、、

「ふあっ、あァァ、、もうイキそう、」

「オレもだ、前、触るぞ」

 カイトの陰茎もトロトロとカウパー液を大量に垂らしている、それを片手で掴み込んで滑らかに強くしごいていく、、

 ヌチャヌチャ、、

 堪らない音が聞こえて来て、

 う、ぅッ、、あァァ〜、ユゥキ、、ユゥ、キィ、、!

 カイトが身悶えする、、

 

 そして、互いに汗ばんだ肌がぶつかり合う湿った音を響かせるだけとなり、、

 

 (オレの手に出して、、、)

 ユゥキが震えている恋人の熱い陰茎をギュッと強く握った途端に、カイトの全身に、痙攣が走る、、

 

「あぁ、いやぁ、イッ、、イクッ、、、!」カイトが木に歯を当てて、しがみつきながら喘ぐ、

 オレもイク、、!

 2人ほぼ同時に白い精を放つ。

 震えながらカイトの奥に熱い精を流し込む、陰茎から頭の先まで痺れるような快感に打ちのめされる、、、あぁ、、解放されて、全てが気持ちいい、、

 

 息切れしながらも、まだオレを呑み込んでいるカイトと、更に向こう側に密やかに佇む〈何か達〉も一緒にビクビクと真夏の幻のような快感とエロスを味わっているかのよう……


 2人とも全身が汗まみれになってるが、トロリとした快感の余剰は、まだゆるゆると互いの間を行き来している、、

 この真夏の夜の夢のような、妖しいエロスは、様々な要因が重なって、もたらされるもの何だろうなと、オレは次第に引いて行く快楽の引き潮に浸りながら、頭の隅で思ってた……

 

 あまりにも勿体無い快感に、、いまだ抜かずに、カイトの身体の痙攣とオレの陰茎の心地良い痙攣を惜しんでいると、、


 〈早く、早く、頂戴 〉

 誰かに急かされる感触がある……


 あぁ、、それが目的だったな、、。


 静かにカイトの中から抜き去り、コチラを向かせて立たせて、ゆっくりと流れ落ちて来るオレの精を、しゃがみ込んで手で受け止める。

 あァァ、恥ずかしい、、ユゥキ、、

 カイトの精も残っている手に溜めていくオレの耳元に囁く。

「いや、何も恥ずかしく無い、、恥ずかしがるお前が可愛いな、、」

 クスクス笑う。

 

 それから、2人分の精を、望むガジュマルの根元に落とす。

オレの指先からトロトロと、落ちる液を見てるカイトはようやくはっきり目覚めてきたらしい、、


 そうか、ここ数日、なんだか(欲しい、欲しいって聞こえてたの、この事だったのかも、、)

 水場で濡らして来たタオルで互いに身体を拭き合っている時に、カイトが話してくれる。


「凄く、蜜や花の匂いがまとわりついてた、、」

 (あと、美味しそうだったから、研究の為って言いながら、花外蜜を舐めまくってた、、、アレ、?駄目だった?)

「えッ?!、あぁー、成る程、、多分、そこからかも知れないなぁ?」

 苦笑しながら、カイトを着替えさせていく。


 (いや、でも、、地球にとっては、、植物達の方が主流だろう、、それに逆らえる人類などいない、、)

「望みを叶えてやったから、良いんじゃ無いか?、さぁ帰ろう、夕食もまだだし、、」

 

 あぁーー、そうだった。お腹空いてきた!

遅くなったから、いつものパスタ屋さんに行きたーいと、通常運転になってきたカイトを促して、戸締りをしてから、ガラス張りの温室のドアを閉じる。

灯も消されて今は静かに息づく、緑の物たちに

 (言っておかないと、)とユゥキは思う。

 ――――――――――――

温室から離れる瞬間に、クルリと振り向くと、中の黒々とした影たちに

 〈……もう、あんまりオレの恋人をイジってくれるなよ。〉

 頼むような、挑発するかのような呟きを放った。


 ――――――――――

 数日後、珍しく、カイトの研究所を見たいとやって来た、再従兄弟はとこのアキトが、歩いて観察していた途中、

 ガジュマルとシダの方を急に向き、その奥まった場所に走り寄った。

 そして、しげしげと眺めてから言い放つ。

 

「え?、、んんんっ?、なんかこの大きなガジュマルの周囲は、特に生々しく無いか?、エネルギーがすごいって言うか、、何だ?」


と言うのを2人で聞いた、カイトとユゥキ。

 

 カイトは焦って、

「う、ッ、そうだねー、謎だねー」と真っ赤になる。


 正反対に

 「さぁ、何故だろうな?」と全く意に介さないで、無表情で返すユゥキだった。


 

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【BL】真夏の夜の植物園 ヴェガ猫 @lila_rose

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