【解釈小説】Fairytale.
蓬葉 yomoginoha
第1話
11月9日
同窓会 行きます
グループトークに埋もれた短いメッセージ。
幼いころの淡い心が、揺れた。
久々の故郷。居酒屋をほぼ貸し切っての同窓会には、元陸上部メンバーが勢ぞろいして顔を出した。
男子も女子も、今となってはそう呼べないくらい大人になった。中学を卒業して以来十年近く会ってもいなかったのに、みんな再会を楽しんでいた。
「
「まあ、たまにね」
「相変わらずだなあ」
「でもロマンチックだよな。今は何の仕事してんの」
「普通に、銀行だよ」
「へえ。いいじゃん」
「星とは正反対だ」
僕は愛想笑いを浮かべる。別に彼らだって悪気があるわけではないだろう。でも、どこかに優越感が隠れている気がする。それは僕にとっては劣等感になる。
星を眺めるのが好きだ。
小学生のとき、貯金して買った天体望遠鏡。そのころは見方もわからなかったが、今は僕の心を支える道具になっている。見える星は変わらなくても、印象が変わる。人は同じでも表情が変わるのと一緒だ。
人づきあいがあまり得意ではない僕の語る相手は、星だった。でも、それは「片思い」にすぎない。星は誰にでも微笑んでいるのだから。
「もっと、飲めよー」
「ごめん、飲めないんだよ。今日中に帰らなきゃだから」
「なんだ。忙しいんだな」
「ごめん」
翌日も休みなのに。車で来たわけでもないのに、僕は嘘を吐いた。
そして、僕は彼女をみた。
彼女も同じように、この騒がしい、暗い海の中で、一人浮いている惑星だった。
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