32 マークを迎えよう
俺たちは銀の月亭に行き、マークの宿代を1か月分前払いする。
ただ、俺たちの部屋ではなく、別の部屋だ。俺たちの部屋は俺とハンナとギンガで一杯なのだ。
飯を食いながら俺はマークに言う。「お前を断った連中のリストを見せてみろ。」
マークは黙って渡す。25の商会名と人名が書かれている。
「マーク。こいつらは、お前が復讐する相手だ。」俺は言う。
「復讐?」マークが聞く。
「お前が立派な商人になった時、そいつらに対して、『俺を採らなかったあんたは見る目がなかったな。』と言ってやるためのリストだ。大事にしろよ。」
「わかりました。絶対に見返してやります。」
「俺は、お前を商人にしてやる。ただ、そのためにはお前が頑張ってスキルや能力を磨く必要がある。」
「はい。
俺はマークに50x50の表を渡す。
「これは掛け算の表だ。まずはこの表を10日で全部覚えろ。」
「…え?無理ですよ。」マークは絶望的な顔をして言う。
「初日で破門か?俺は、できることしか言わない。ちなみに、ハンナは覚えてるぞ。
ハンナ、44かける46は?」
「2024」ハンナが間髪を入れずに答える。
マークが表を確認して驚く。
「じゃあ、僕から聞きます。23かける48は?
「1104」
「…本当だ…」マークがつぶやく。
「ハンナにできるようなことができなければ商人なんてあきらめろ。やるんだよ。
ところで、お前のスキルについて教えてくれ。どういうスキルだ?」
「言ったとおり、『虫眼鏡』というスキルです。虫眼鏡を出して、小さいものを大きくして見ることができます。それだけです。10年に一回くらいしか出ないゴミスキルだそうです。」
「おいマーク。お前、自分のスキルをゴミなどと言うな。せっかくのスキルだ。鍛えて商人になるために活用しろ。」
「え、でもどうやって…?」
ハンナが横から口をはさむ。
「アレンの言うとおりにやれば大丈夫よ。私が保証する」
「ちなみに、ハンナのスキルは、ゴミと思われがちな『草取』だ。だが、今のハンナは1日に大銀貨2枚(二万円)くらいだって稼げるようになった。」
「すごい…」マークが言う。
俺はマークに言う。
「お前がやるのは、お前しかできない技を鍛え、他の人でもできることは、その速さや正確性を磨くことだ。」
「僕にしかできない技って何でしょうか。」マークが聞く。
「スキルを鍛えながら一緒に考えよう。」俺は言う。
「わ、私も手伝います!」ハンナも慌てて言う。
「マーク。虫眼鏡を出してみろ。」
マークは、無言で祈るような格好をした。すると、5センチくらいの黒ぶちの虫眼鏡が出てきた。
「これです。」マークは言う。 俺が手を伸ばすと、虫眼鏡は消えてしまった。
俺は言う。
「まずは、虫眼鏡を安定して長時間、複数出せるようにすることだ。大きいのと小さいのとか、小さく見える虫眼鏡とか、、いろいろ出せるように練習しろ。」
「小さく見えるのなんて必要?」マークが不思議そうに聞く。
「ああ。商人として仕入れに行きたいなら必要だよ。」俺は答える。
「よくわからないけど、何かわかった。練習する。」マークは答える。
そして俺は言う。
「さあ、これから毎日、寝る前に練習だ。だから同じ宿を取ったんだ。とりあえず
部屋に戻って、体を拭いておけ。こっちの準備が出来たら呼ぶから、それまで掛け算を暗記しながら虫眼鏡を出す訓練をしておけ。」
「わかりました。じゃあまた後で。」
マークは自分の部屋に戻る。ちなみに男4人の部屋だ。
俺たちも部屋に戻り、湯で体を拭く。ちなみにハンナには水魔法は使わせない。マナの温存のためだ。なお、ハンナの胸が従来より膨らんできている。肉も付き始めたようだ。
マークを俺たちの部屋に呼び、マナの訓練をすると告げる。
まずは3人で手を繋いでマナを動かす「ぐるぐる」だ。マークは戸惑っているが、とりあえずはなすがままに力を抜く。
こうやって俺とハンナがマークの中にマナを流すことにより、マナの動きがよくなっていくのだ。
そしてマナピンポンになる。俺はマークの上半身を脱がせ、俺も脱いで抱き合う。男などくっつきたくはないが、今日は仕方ない。
マナを打ち込み、マークに打ち返させる。 なかなかうまくいかないが、何とか2回打ち返した。最初はこんなものだろう。
「よし、次、ハンナ。」
「はい。」
ハンナはマークの前でも躊躇せず上半身の服を脱ぎ、俺と抱き合う。
マークが驚いたようにちらちらと見てくる。
それに構わず俺たちはマナピンポンを続ける。慣れたハンナは、もう20回くらいのラリーが可能になっている。こうなってくると、もう遊びみたいに面白い。
温泉卓球みたいなものだ。
「よし、今日はここまで。」俺はそう言ってハンナとのラリーを終わり二人とも服を着る。
「あとは寝る前にマナの絞りだしだ。マーク。寝る前にたくさん虫眼鏡を出して、マナを消耗しておけよ。消耗して倒れると、むしろその後のマナの保有可能量が増えるからむしろ歓迎だろう?」
「は、はい。」マークは神妙な顔をしている。
俺は、部屋に帰ろうとするマークにこっそり耳打ちする。
「マーク。10の段まで全部覚えたら、ハンナとマナピンポンさせてやるぞ。」
マークの目の色が変わった。
「え?本当?」」
「ああ。男に二言はない。50の段まで、覚えられたら10段ごとに、ハンナとマナピンポンだ。」
「頑張るよ!」マークの声は力強かった。
若い男の子のモチベを爆上がりさせるには、やっぱこれだね。
明日が楽しみだ。
マナを絞って寝ようと思ったら、ハンナが俺の前にやってきて、上半身を脱いだ。
前より膨らんだ胸が露出される。
「ハンナ、どうした?」
「マークとピンポンするのは協力するけど、その時は寝る前に私ともう一度マナピンポンしてほしい。アレンの感触を残して寝たいから。」
なかなか意地らしいこと言ってくれるな。
「ああ、協力してくれるんだから、いいぞ。でも今夜はマークとはしてないだろ。」
「リハーサル。」
ハンナはそう言って、俺のシャツのボタンを外してきた。
俺たちはマナピンポンをしてから、お互いのベッドで眠りについた。
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