主人公とヒロインがくっつかないせいで世界が滅びそう〜主人公がコミュ障陰キャ!?〜

トリサシ

第1話 世界滅亡……?

 ある日、俺は異世界に転生していた。


 俺が10歳になった時のこと、ふと気がつくと、俺の中には前世の記憶が存在していた。前からずっとそうであったかのように、違和感なく記憶が俺の中にあった。


 そこで俺は、あぁ、俺は転生したのか、となんとなく感覚で転生したことを理解していた。いったい何が原因で死んで、なぜ異世界に転生したのかはまったく覚えていないが、そこは俺に取ってどうでも良かった。


 なぜなら俺の思考はすぐに別のことに惹かれていたからだ。俺が転生したその世界は、生前に遊び尽くした、俺が一番好きだったゲームの世界であったからだ。


 『リンク・オブ・ソウル』


 それが俺のハマったゲームの名前だ。いくつもの学園が集まった学園都市を舞台に、ヒロインたちと悪の組織の企みを止めるという王道アクションRPG。


 自由度が高く、作り込まれた広大な学園都市、さらには多種多様のストーリーに、魅力的なヒロイン 。


 そのクオリティの高さはすぐに知れ渡り、発売してすぐ記録的な売り上げを叩き出し、大人気のゲームとなった。


 そして俺もそのゲームにどハマりし、何度も何度もプレイしては、主人公の活躍にドキドキし、その世界の美しさにワクワクし、紡がれる物語に涙を流し感動していた。


 残念ながら、ゲームには出てこないモブに転生することにはなったが、好きなゲームの世界に転生したのだ。もうそれは大興奮である。


 画面越しにしか見れなかったあの世界が、何度も駆け回った学園都市が目の前に広がっているのである。落ち着いてなんていられるわけがなかった。


 世界を冒険してみたい、この世の力の頂点をめざしたい。この世界を、ゲームを愛し、遊び尽くしたかったからこそできることが、目指せるいただきがあるはずだ。


 俺はそこを目指したい。ありとあらゆる手段を使って、この生を、二度目の人生をめいいっぱい謳歌しようではないか。この愛しい世界を。







 ……なんて思ってた時期がありました。


 あれから約二年ほどの時間が過ぎ、物語の舞台となる学園に入学していた。


 学園都市というだけあって、ここは何かを学び、強くなるには適した場所だ。世界から有望な若者が集まってくる場所、それがこの学園都市『アダマリアス』だ。


 そこに入学した俺は、偶然にも主人公と同じクラスに入ることになった。生徒の特に多いこの学園で同じクラスになれるとはとんでもない確率だ。


 入学当初は強くなることしか考えていなかったが、せっかく主人公たちと同じクラスになれたのだ。しばらくは主人公とヒロインの交流を見てみることにしようと思っていた。


 そして約3ヶ月の間、主人公たちを陰から見守っていた。そしてとあることに気づいてしまった。



 あれ、このままだと世界が滅ぶんじゃないか、と。



 もうすぐ、学園の行事の一つ、学外実戦訓練が行われる。そこで起きるのは、主人公最初の覚醒イベントだ。


 事件に巻き込まれ、ピンチになる主人公と、ヒロイン。二人は危機に陥るが、主人公らしく新たな力に目覚める。その力は絆の力。仲間の力を借り、自分のものとして昇華させる力。


 それまでは力がなく、良くも悪くも凡庸であった主人公が力を手に入れ、ヒロインを守り、敵と戦うという、絵に描いたような本物の主人公へと至る、作中屈指の名シーンだ。


 そしてこのストーリーのどこが世界滅亡に繋がるのか。問題はこの力の特性にあった。絆の力というだけあって、その対象とある程度仲が良く、信頼関係がなければいけない。


 さて、ここらで察した人もいるのではないだろうか。そう、世界が滅ぶ原因は……。


 主人公こいつがぼっちだからだ!


 おい!主人公!てめぇは主人公だろ!


 観察し始めた1ヶ月ぐらいは、やっぱ主人公は原作ゲームに出ないようなモブ

とは交流しないのかな?と、思って気にしなかった。


 2ヶ月も経てば起きるはずのイベントが起きてないことにも気づき、大丈夫かと心配はした。しかし、モブがそう易々と介入してはいけないと思い何もしないでおいた。


 そして3ヶ月後、世界滅亡の可能性に気づき焦っているところである。←今ココ


 ど う し て こ う な っ た !


 主人公リア充イケメン野郎が爆破しない代わりに、世界が爆破するってか?やかましいわ!


 正直にいってこんなぐだぐだ喚いている暇がない。何もしなければこのまま主人公は事件に巻き込まれて無事死亡。


 その後のストーリーは主人公なし。詰んでるようなものである。


 こっからストーリー通り、もしくはほぼ同じ状況にストーリーを戻すのは不可能に近いかもしれない。いや、もうだいぶ逸れているため無理だろう。


 それでもやれるだけやらなくてはならない。


 世界滅亡を止めるために!

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