芥Ⅳ ー レッド エレファント編 ー
青山 翠雲
第1話:そりゃ、いかんぜぃよ!
それは、なんの前触れもなくやってきた。奇襲とはかく行うものぞ、と模範となる好例とも言えよう。一通の書簡が届いたのだ。
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Dear Leaders on Earth,
親愛なる地球首脳のみなさんへ
It's a Great Honor to send this letter to you all whom I would like to be in touch with more familiar from the feeling of AGAPE.
この書簡を今後、アガペーの気持ちからさらに親しく交流したいと思っているみなさん送れることは光栄であります。
We deceided to move forward with you, however, on the assumption only with more balanced and fair TRADE.
惑星“エーアデ”は地球と共に今後も前に進むことを決断しましたが、それも、より均衡のとれた、公正な貿易があればこそです。
Therefore, we have cocluded that we have to reconsider our TRADE RELATIONSHIP
with Earth.
われわれは地球との貿易関係について、見直す必要があるとの結論に至りました。
To our regret, the RELATIONSHIP between you and us is far away from EQUAL RELATIONSHIP.
惑星“エーアデ”と地球の関係は、残念ながら対等な関係からはほど遠い状況です。
Starting on today, we will charge Earth a Tariff of only 50% on any and all products sent into Our Planet "Erde". If for any reason you decide to raise your Tariffs, then the same number will be added onto 50% furthermore.
従って本日から、惑星“エーアデ”に送り込まれるあらゆる地球製品に50%の関税を課します。報復関税を課した場合には、その分だけさらに高い関税が適用いたします。
It would be Tought of Heartbreak also for us to interrupt our "Edelweiss Silk Road" with "Red River like Blood" between you and us.
我々としても、地球との間にせっかく確立した「気高き白きシルクロード」が「血のごとき赤き沢」に阻まれてしまうのは断腸の思いです。
It would go without saying that we would quickly be ready to make the table for Dialog and Negotiations with you if you could Extend a Helping Hand to us.
なお、地球サイドが我が惑星との対話に応じ、救いの手を差し伸べる気があるのであれば、対話に向けてのテーブルを迅速に用意する所存です。
GOD BLESS YOU!
神のご加護がありますように。
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この書簡がC5(Cosmo Culture Communication Countermeasure Center:宇宙文化交流対策センター)に送られてきた当初は、「さては、輸出した米が古古古米だとバレたか!?」「これは、貿易関税という名の戦争だ!」といろいろな憶測を生み、一時はコスモクリーナー タイプE購入により絶望的かと思われた巨額の宇宙債務返済が米の輸出によって漸く軌道に乗り出した矢先だっただけに地球サイドは右往左往した。
こちらも「血のごとき赤き沢」にしたくはないとの思いから、唯一の惑星“エーアデ”への輸出当事者国である日本が特命大臣として赤沢というものを派遣したが、惑星“エーアデ”の
そうなると、赤沢がダメなら、やはり、青山に行ってもらうほか選択肢はあるまいとのことで、4度目の渡航が決定してしまった。
青山翠雲氏もさすがにジェットコースターのように、持ち上げられたり、叩きのめされるように下げられ、糾弾&指弾の集中砲火にあったかと思ったところを漸く先のビッグ・ディールを起死回生の想いで成し遂げてきて、ほっと一息ついた矢先であったので、さすがに閉口した。
書簡文書をつぶさに見てみれば、内容もふざけた慇懃無礼な調子で貫かれており、またあの男とハードネゴシエーションをしなければならないと思うと、交渉前から疲れがドッと出て、愚痴ばかりが口をついて出た。
「あの野郎、また面倒くさいことを言ってきやがって!何がアガペー気持ちからだよ!そもそもアガペーって分かってのかよ!?アガペーの愛は、隣人愛として、無私無欲と他者への無条件の配慮を特徴とするものだろうがよ!言ったそばから、50%の関税ってなんだ、それ!条件出しまくりじゃねーか!そりゃ、
相当に荒れている。「1回300億コスモオイロの取引だから、それが関税入れたら450億コスモオイロじゃないかよ。せっかく、コンクラーベ・ネゴシエーションで惑星ガミタスの通商代表
青山翠雲氏も、現実逃避から前回の背水の陣で臨んだクレマ交渉は最初はひどく荷の重い任務と思われたが、あれはあれで今にして思えば「イイ交渉」だったので、しばし思い出に耽った。
再び書簡文書の文言に目を凝らす。「“救いの手を差し伸べる気があるのであれば、対話と交渉に向けてのテーブルを迅速に用意する所存”だと!これは何かあるな。。。」
気は乗らない惑星“エーアデ”への航海であったが、せっかく赴くのであれば、燃料の無駄にならないよう第4回目となる輸出分の米も搭載して行くことにした。
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