鏡の意味を持つ幻影蠱惑の連鎖刃《れんさじん》――③

 先日討伐した【兎足うさぎあしを持つ仮面の雄羊ミューレノクサルム】から入手した幻獣アビシアン素材マテリアルについては、そのほとんどを【幻獣対策協会セイバーギルド】に引き渡した。


 クラリスさんの心遣いから、素材マテリアル全てを手元に置いておくこともできたが、それは無意味だったから。


 未確認新種の【幻獣アビシアン素材マテリアルは当然、精錬効果や素材マテリアルに合うはがね、そも精錬せいれんに使用するための加工方法も【未解明】であるため、多くを手元に置いておいても持て余すだけだ。皆で協力して素材マテリアルの特性を解明したほうが能率的のうりつてきである。


 そのため、ほとんどの素材マテリアルを引き渡したのだが――。


 ただ、ボクたちの手元に残ったのは、おそらく【仮面の雄羊ミューレノクサルム】の核部分といえる素材マテリアルだった。


 目新しい精錬せいれん効果が期待できる新素材。手元に残した以上、素材マテリアル特性の解明は急務きゅうむだった。ボクたちはクラリスさんもまじえながら、粉骨砕身ふんこつさいしんくした――――のだが、しかし。


 奮迅ふんじんすえに明らかになった特性は、解明した瞬間、モニカが思わず「なんじゃ、そりゃ!!」と仰向けにぶっ倒れながら叫んだ、そんな、期待とは裏腹の成果せいかであった。


 幻獣アビシアン素材マテリアルがもたらす特性は、そう、必ずしもプラスに働く力だとは限らない。


 マイナスにしか働かない素材マテリアルも相当数、存在する。【仮面の雄羊ミューレノクサルム】の核部位はその一つだった。


 このたびは、解明にこそ意味あれ、残念な結果に終わってしまったと、ボクたちはちょっとだけ気落ちしてしまった。


「――――兄貴アニキ、あの素材って、使えないかな……?」


 ――けれど、人の発想イマジネーション次第で、それらの確かなマイナスは、時としてプラスに転じることもある。


 ボクは今回のことで、それを知れた。


「――――どう、兄貴アニキ、創作意欲はきそう?」


 ――最高に。



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