第3話 美少女(娘)の謎【修正版】

「ねぇどこから来たの?」


「彼氏とかいる? いないなら今日一緒に昼食でも…」


「男子ちょっとうるさい! どいてよ!」


「ねえねえ連絡先交換しよ!」


「ふふふ♪」


 今日。突如転校してきた春真 恋。

 ホームルームが終わるとすぐに彼女の周りには人が集まってきて、彼女は質問責めにあっていた。


 中には下心満載なものもあったがまぁ俺には関係ないのでさほど興味もなく、頬杖をついてボッーっと眺めていた。


 だけどひとつだけ気になることがあった。

 

 転校生の名前である。


 春真(はるま)という苗字。世の中名前が似ていることなんて数えるほどあるし今回のも偶然だと思うが、


「……………」


 

 チラッと彼女に目をやる。彼女はずっと眩しい笑顔を浮かべて数々の質問に対応していた。

 そこで、偶然彼女と目が会う。するとなぜか彼女はすこし照れくさそうにそっぽを向いてしまった。


「え? なんで?」


 それは本心から出た疑問だった。

 女の子にいきなり顔を背けられるといくら俺でも心にくるものがある。


「はぁかわいいなぁ。こいちゃん」


「うわぁ!」


 突然後ろで下賤な声が響いた。

 反射的に後ろを振り向くと、そこには友人の快人が春真 恋を嫌らしい目で眺めていた。


「恋ちゃん可愛いなぁやっぱ! 親一もそう思うよな!」


「いやそう言われても……。まぁ確かにかわいいとは思うけどな。ロリコンにはぶっ刺さりそうな見た目だし」


「ふ~ん? つまりパパはロリコンって事? パパ、変態さんなんだね♪」


「え?」


 どこからともなく声が響いた。もちろん快人の声ではない。

 となるとじゃあ誰だという話になるが…。


「パパ、どうかした?」


「…………」


 いつのまにかさっきまで数々のクラスメイトの質問に対応していた転校生、春真恋が目の前にいた。


(ん? まて? こいつ、今なんかとんでもないこと言わなかったか?)


 あまりに自然に言われるものなので気づかなかった。


「おい親一ぃ……」


 俺はその低い声にビクッっと肩を震わせる。その瞬間、快人の手が俺の肩をガシッと掴んで鬼の形相で言った。


「パパだぁ? てめぇどういうことか説明してもらおうか」


「いや……、そんなこと言ったって……」


 俺もどういうことかわけがわからず混乱している。そらゃそうだ。

 考えてもみてほしい。いきなり転校してきた美少女が突然自分のことをパパとか呼んできたらどう思うだろうか。


 ……つまりはそういうことである。


「ちょっと快人くん。あんまりパパをいじめないでよ。パパをいじめるんなら快人くんでも恋許さないからね」


「え?」


 快人がそんな素っ頓狂な声を上げて恋の方を見る。快人は意外そうな様子で春真 恋に聞いた。


「恋ちゃん、俺のこと知ってるの?」


「もちろんだよ! だって恋の家に遊びに来てはいっつもパパとスマ◯ラとかエー◯ックスとかしてたもん! たまに恋とかママも混じってマ◯カとかもしてたよ!」


「お、おう? そうなんだな……」


 快人は少し困惑しながらも苦笑いを浮かべて相槌を返した後、俺のほうに向いて確認をとってくる。


「な、なぁ。俺お前んちにそんなしょっちゅう行ってたっけ? しかもお前に子供なんていたっけ?」


「いやお前一回もオレんち来たことないだろ。子供なんてもってのほかだ」


「そ、そうだよな…」


(なんならこいつ、俺の家なんて場所すら知らないはずだしな)


 快人は俺の言葉に納得したようで頷く。けれどそれから快人はしばし考えた後、「はっ! まさか!」っと顔を上げて声を張り上げる。


「まさか……、お前……、隠し子を作っていたなぁ?!」


「は??」


「言え! そうなんだろ! 白状しろ!」


「いや、なんでそうなる? そんなわけないだろ?」


「相手は誰だ! あの幼馴染ちゃん達のどっちかなんだろ! おい! どうなんだ! 言ってみろ!」


「ちょ! 落ち着けバカ! 声大きいって!」


 快人はいきなり暴走しだし、俺の肩をすごい勢いで揺さぶる。

 もはや俺の手に負えなくなってしまった。しかもこのバカの声が大きすぎるせいでかなり注目を集めてしまっている。


 どうしようか悩んでいるとそれまで黙っていた春真 恋が動き出した。


「快人くん?」


「ん? どしたん恋ちゃん」


 俺の肩を揺さぶる手を止めて恋の方へ向き直る快人。春真 恋の表情は変わらずニコニコしていたが、その表情の裏には何か「怒」が混じってる感覚がした。

 

 そんな恋が快人にハッキリ言ったわ、


「少しうるさいです。あまり……、パパを困らせないでクダサイネ?」



春真 恋が放った短い言葉。だがその声音は先程とはうって変わってかなりトーンが低く、冷ややかだった。

 快人はたちまち押し黙り、「あ、はい、すみません…」と震えながら力なく返事をするのだった。





2025年。10月 21日。

修正済み。









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